日々想うこと

毎日の生活の中のちょっとした出来事や感じたことを気ままに書いています。

小さいおばけ

2005-11-03 | 本棚
子供の頃、1、2ヶ月に一度、家族そろって外食に出かけるのが楽しみだった。
両親と弟と私と。たいてい日曜日だったと思う。
この日は、朝から何かそわそわした気持ちになる。
午後になってよそ行きの洋服を着て、母も鏡の前でおしゃれをする。
父は出張の度に母にアクセサリーやバックなどのお土産を買ってきたもので、
そうしたものを母は身に着けて出かける。

電車に乗って街に出て、みんなで手をつないで歩いたりした。
よく行くレストランがいくつかあったように思うが、
中でもよく覚えているのは「ミュンヘン」というドイツ料理のレストランだ。

少し陽が落ちてから入るその店は、入り口に小さな噴水のようなものがあって、
水の流れる音を聞きながら店内に入る。
子供にとっては、照明もすこし暗くて、少しばかりおとなの世界に入っていくようだった。
店内は広く、中ほどに緩やかなカーブの階段があって2階へと続いていた。
階段の踊り場の壁には古風なヨーロッパの鎧や兜や剣などがかけられていたが、
誰もいない夜中には、あれらが音を立てることもあるのではないかと思わせるようでもあった。

どっしりとした重厚な木のテーブルに付いて、父はジョッキでビールを飲む。
私たち子供は床に届きかねる足をぶらぶらさせてみながら、
料理が出てくるのを待ったものだった。


「小さいおばけ」は、母が買ってくれたプロイスラーの2冊目の本だったと思う。
最初の本は「小さい水の精」だ。

小さいおばけはオイレンシュタイン城に住んでいる。
その城は博物館になっていて昔の鎧や兜や大砲や槍などが飾られている。
その様子を私はレストラン「ミュンヘン」の鎧などから想像していたのではないかしら。

小さいおばけは、好奇心が強くて昼間の世界を覗きたくてたまらない。
そして太陽の光に当たって真っ黒なおばけになってしまう。
いろいろな場所で騒動を引き起こし、最後には子供たちの助けを得て、
無事夜のまっしろなおばけに戻ることができる。

このプロイスラーの本をずっと大切にしている。
どこに引っ越す時にも持っていく。
ときどき開いてみることもある。
ただ棚にそっとあるだけで、安心するのである。

小さいおばけ

徳間書店

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