関西活性化をテーマにした議論で、「都市格」という言葉をよく耳にする。「人格」になぞらえたもので、精神性をも含めた地域特性と言えようか。実はこの言葉、大阪と大変縁が深い。初めて使ったとされるのが、大阪府の第19代知事、中川望なのだ。
1925(大正14)年の講演で「人格に欠くところあれば決して人として尊きものにあらず」と述べ、商工業都市として成功をおさめた大阪に求められているのは「都市格の向上」だと力説した。
中川は、人格は「知識・道徳・趣味・信仰(信念)」から成ると考え、都市格を高めるためにもこの四つの要素が必要とした。具体的には、まず教育の充実。そして、子どもには伸び伸びと遊べる場所を提供し、「立派な正しい遊戯」を教えることで自然に道徳的な行いや考えを身につけさせる。成人やお年寄りには質の高い文化・娯楽施設を提供することなどを挙げた。
中川と二人三脚で大阪の舵(かじ)取り役を務め、名市長とうたわれた関一は「大阪は住み心地よき都市にする」と言っている。市民の生活レベルで分かりやすく言い換えたものと理解していいだろう。
2人の言葉から、「子どもが笑う大阪」をキャッチフレーズとする橋下徹知事の言葉を思い出してしまった。ただし、文化芸術施設については違う考えのようだし、何より、まちづくりの理念や中川のような品格は、まだ感じられない。
もっとも、政治家としては大ベテランの永田町のリーダーたちも同じようなものだから、ひとり橋下知事に求めるのも酷というべきか。
毎日新聞 2008年3月22日 大阪朝刊