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加藤直樹「九月、東京の路上で」

2020-04-20 | 政治・社会
 先日買った本を読み終えた.加藤直樹・著『九月、東京の路上で』.

 1923年関東大震災のさなか,現地の軍隊および警察と,流言を信じた民衆によって,在京朝鮮人らがどのような目に遭わされたかを,当時の文献・証言を引きながら,事件一つ一つの経緯にまで掘り下げて備に記録した膨大な資料集.その描写は,地図や跡地の写真を駆使し,被害者と加害者たちの職業から個人名,生い立ち,そのとき何を叫んでどのような行動に出たのかに及んでおり,まるで現場で目撃するようなリアルさだ.あまりに凄惨な内容に,休み休みに読まないと滅入ってくる.また,一連の虐殺・リンチは,非常時の過剰な防衛意識によって偶然に起こったハプニングでは決してなく,韓国併合の折から脈々と培われてきた朝鮮人への差別感情と,「三一独立運動」を始めとする彼らの抵抗姿勢への恐怖や憎悪が,一挙に噴き出した格好で人々を突き動かしたことを強調する.その間,大衆を煽情する役割を演じたマスメディアへの追及も,もちろん忘れていない.以後,東京は,私たちの国は,毎年9月1日になると臆面もなく形ばかりの「防災」のポーズを取り,過去の犯罪に目を瞑ったまま来てしまっていること,それのみならず,為政者やレイシスト団体によるヘイトスピーチの類いは後を絶たないのであり,来たるべき次の悲劇を静かな語調で警告して,大著は結ばれる.とりわけ,迫害される側から発せられた「日本人は豹変するから怖い」との訴えは,ただでさえ何を考えているのか分からない不気味なこの国の群衆のなかの,間違いなく一員である身にとって,憂鬱に響く言葉である.


加藤直樹: 九月、東京の路上で 1923年関東大震災 ジェノサイドの残響
ころから,2014,
ISBN 978-4-907239-05-3
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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2022-01-19 19:28:19
不気味なこの国の群衆ってヘイトスピーチで差別だよな。
壬午軍乱も差別感情からきた日本人虐殺だったのかな。
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