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恐竜軍団の復活!?

2007年02月10日 | '06-07 シーズン
(写真は左からカルデロン、バルニャーニ、ガルバホサ、コランジェロGM)

ここ数年、アトランティック・ディビジョンが“リーグ最弱地区”と呼ばれるようになって久しい。
それでも昨季までは、キッドとカーターを擁するネッツが辛うじてプレーオフチームの面子を保っていたが、今シーズンはそれも崩れ、開幕月の11月は何と全チーム負け越しという悲惨な結果に終わった。
その後ネッツが12月半ばに一度5割復帰を果たすも、リチャード・ジェファーソンの戦線離脱もあって再び借金生活へと逆戻り。
そんな総崩れに近い状況に陥ったアトランティック・ディビジョンは、Atlanticとスペルが似てることから、“タイタニック(Titanic)”・ディビジョン=「沈みかけの地区」というありがたくないニックネームで呼ばれるようになってしまった。

このまま勝ち越すチームが出てこなければ、「負け越しでもディビジョン優勝?」「負け越しでもプレーオフシード獲得?」という、システムの整合性すら根本から揺るがすような事態を招くことも現実味を帯びてきた。
しかし、そこに1つのチームが何の前触れもなく浮上してきた。
トロント・ラプターズである。
数年前カーターが見放したこのカナダの弱小チームが、くしくも彼の新チームを追い越して上がってきたのだ。

現在26勝23敗のラプターズは、23勝27敗のネッツに3.5ゲーム差をつけてディビジョン首位。
イースタン・カンファレンス全体でも、首位から4.5ゲーム差の5位タイという好位置につけている。

だがその道のりは決して平坦ではなかった。
開幕直後の10試合でわずか2勝しかできず、ドン底のスタートを切る。
ただそれは致し方ない部分が大きかった。
ロースター15人のうち、昨季から残った選手はわずかに6人。(うちポップ・ソウはプレシーズンマッチで首を骨折し長期欠場したため実質5人)
9人もの選手が新顔で、しかもそのうち4人は新人という布陣。
ただでさえ新しい選手が多いとケミストリーができるまで時間がかかるというのに、ヨーロッパ出身の新人が多くコミュニケーションさえままならないという状態であった。

12月に入り、ようやくチームが形になってきたかなと思った矢先、今度は大黒柱のクリス・ボッシュが戦線離脱。
まだチームワークさえ不完全な上にエースまで失うという緊急事態に、若いチームは空中分解する危険もあった。
しかしこの危機をチーム全体で何とか補い、ボッシュが欠場した12試合を6勝6敗の五分で乗り切ることに成功。
この踏ん張りが後々につながってくる。

1月になってボッシュが復帰を果たすと、不在の間に深まったチームのコンビネーションとエースの力がうまく融合し、チームは快進撃を始める。
1月5日から13勝4敗という目を見張る好成績で突っ走った結果、チーム成績はついに5割を超え、ディビジョン首位に躍り出たのだった。

ボッシュ以外の注目選手を挙げると、まずはTJ・フォードとホセ・カルデロンのPGコンビ。
フォードは183cmと小柄な体が災いし、これまで大きなケガによる長期欠場などで苦しんだ。
この夏チャーリー・ヴィラヌエバとのトレードが成立した際は、「ビッグマンを小さなガードと交換すべきではない」というNBAの格言みたいな歴史的評価もあり、ブライアン・コランジェロ新GMを批判する声も上がった。

しかしフォードは、その疑いの声を結果で払拭する。
先発した38試合で平均15.2点、7.7アシストという好成績を残し、特にボッシュの抜けた12月には月間平均17.3点、8.9アシストをマークし、チームの中心となって支えた。
課題と言われたアウトサイドシュートも進歩の跡を見せ、相手ディフェンスもそのスピードあるペネトレイトだけを警戒すればいいというわけにはいかなくなった。

フォードとコンビを組むカルデロンも、バックアップだからといってナメてはいけない。
フォードが欠場した時にはその穴をしっかり埋め、先発出場した11試合では13.3点、8.8アシストというフォードと遜色ない数字を残している。
共にスピードに乗った切れ味鋭いドライブインを持ち、そこからのキラーパスを得意とする2人の司令塔は、テンポの速い攻撃バスケを目指す今季のラプターズのゲームプランを根底で支える重要な存在だ。

そしてもう一つの注目はやはり、謎のドラフトNo.1ピック、アンドレア・バルニャーニだろう。
開幕当初こそ戸惑いが見られたが、徐々にNBAバスケットに慣れるにつれ、本来の高い能力を発揮し始めた。
213cm、113kgの巨体を感じさせないぐらい軽やかな動きで、アリウープを決めれば、3ポイントも沈める。

イタリアで“マジシャン”と呼ばれていた頭脳的なプレーも光り、一度試合中に自分の股の間から後ろ向きでアリウープパスを出したこともある。
しかもワンバウンドさせた跳ね返りがちょうどダンクできる高さになるように調節された芸術的なパスだった。
これを7フッターがノールックで出すんだから・・・。
結局このプレーは相手がファールで止めたため、アリウープは完成しなかったが、パスを受けたボッシュは「信じられない」といった驚きの表情を浮かべ、思わず笑っていた。

これまでなかなか結果を残せずにいたカナダの新興チームは、コランジェロGMの就任で確実に生まれ変わりつつある。
コランジェロは、ヨーロッパNo.1GMと呼ばれたマウリシオ・ジェラルディーニを自身の右腕として招いてヨーロッパ市場との太いパイプを作り、スペイン、スロベニア、イタリア、セネガルら6人の外国人プレーヤーを抱える“多国籍軍”を作り上げた。
サンズをリーグのエリートチームに仕立て上げたその手腕で、コランジェロは今ラプターズをイーストのエリートチームへと変貌させている。

<おまけ>
バルニャーニの股下ノールック・バウンズ・アリウープパス映像
http://youtube.com/watch?v=s7dey9BTPOA


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