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伸び悩むキャブズの課題

2007年02月08日 | '06-07 シーズン

西高東低の気圧配置がますます顕著になってきている今季のNBA。
本命不在のドングリの背比べ状態になっているイーストは、ヒートがシャックのケガで出遅れ、ピストンズもベンの穴が埋まらず迫力不足・・・。
ということは、ついにリーグの宝ルブロン・ジェームズ率いるキャブズが、新時代の担い手として主役に躍り出る時が来たかと思われた。

ルブロン入団後のキャブズの軌跡を追ってみると、
●2002-03シーズン 17勝65敗(.207)…ルブロン入団前
●2003-04シーズン 35勝47敗(.427)…ルブロン1年目
●2004-05シーズン 42勝40敗(.512)…ルブロン2年目
●2005-06シーズン 50勝32敗(.610)…ルブロン3年目
と毎年着実に上昇カーブを描き、今季は一気に55~60勝ラインも現実的な目標となってきていた。

しかし今季ここまでの成績は、27勝21敗(.563)と昨季を下回る勝率に伸び悩んでいる。
特に序盤は22勝12敗(.647)と順調なスタートを切ったのだが、その後は5勝9敗とここにきて一気に負けが込んできてしまった。
主力に大きなケガが発生したわけでもなく(ラリー・ヒューズは既に復帰済み)、表面的には何の問題もないように見えるのだが・・・。

キャブズが抱える一番の課題は、実はオフェンスにある。
ルブロン、ヒューズを始め、ジドルナス・イルガウスカスやドリュー・グッデン、ドニエル・マーシャルやデイモン・ジョーンズなど、得点力の高い選手はいっぱいいるのに、いったいどこに問題があるというのか?

簡単に言えば、最大の問題はルブロン1人に負担をかけすぎていること。
リーグ全体の潮流がサンズやウィザーズのようなラン&ガン方式に移行しつつある現代NBAだが、キャブズはハーフコート形式を固守している。
これはディフェンスを重視するマイク・ブラウンHCが、ゲーム全体のテンポを下げてディフェンシブな展開を作りたいがためにそうしている。

この戦法自体はいいのだが、オフェンスに転じた時に策がなさすぎる。
トップ・オブ・ザ・キー(ゴール真正面の3ポイントライン付近)の位置でルブロンにボールを渡し、そこから彼の1on1で全てを解決しようとしている。
自らドライブするも、周りにパスをさばくも、シュートを放つも、ルブロンに全てお任せというオフェンスなのだ。

もちろん彼の能力はNBA屈指なわけだから、軽く30点ぐらい取ることはできるし、チームメイトの得点を演出することもできる。
しかしボールの動きが少なく、バリエーションも限られるために、相手ディフェンスにとって的が絞りやすくなってしまう。
‘楽な点の取り方’ができず、‘難しいシュート’が多くなる。
よく難易度の高いシュートを決めるルブロンのハイライト映像を見るが、それは‘スゴイ’のと同時に‘かわいそう’な状況でもあるのだ。

チーム全体でパスを回し、マークを分散させるスタイルのチームの方が、断然楽に点を取ることができる。
例えば、FG成功率上位の3チーム、サンズ(.498)、ジャズ(.478)、レイカーズ(.470)らはいずれも全員でパスをよく回すチームだ。
キャブズはというと、.441で下から5番目とかなり非効率的なオフェンスであることが数字からもわかる。

ではどうすればいいのか?

方法の一つは、毎回スローダウンさせたオフェンスをするのではなく、ラン&ガンとハーフコートを両方うまく使い分けること。
今のキャブズには、適するタイプの異なる選手が混在している。
ランニングオフェンスに適したタイプ(ヒューズ、グッデン、バレジャオ、ダニエル・ギブソンetc.)とハーフコートに適したタイプ(イルガウスカス、スノウ、マーシャル、ジョーンズetc.)の2タイプである。

例えばハーフコートをしたい場合は、ルブロンとイルガウスカスを中心にマーシャルやジョーンズといった3ポイントシューターを周囲に配置する。
攻撃をクリエイトする能力に長ける2人の2menゲームを軸にしながら、ポストからのキックアウトパスで3ポイントという体勢も作ることができる。
そしてランニングゲームをする時にはイルガウスカスを外し、走れるグッデンとバレジャオを入れて、ヒューズとルブロンで速攻をリードする。
こうすれば、それぞれの選手の長所をより引き出すことができ、かつ攻撃のバリエーションも豊かにすることができる。

もう一つの方法は、攻撃を指揮できる司令塔タイプのPGを獲得すること。
スノウ、ジョーンズ、ギブソンのPG陣では皆この役目が果たせない。
そのため、ルブロンが司令塔兼フィニッシャーの1人2役を、1試合を通じて担う羽目になってしまっている。
たまにならそれでもいいのだが、やはり最高の武器であるルブロンはもっとフィニッシャーとして使った方がチームにとってもプラスが多い。
全てをルブロンに頼り切るオフェンスから脱却し、ルブロンを囮にしながらうまく周りにも得点を分散させられるような司令塔が必要だ。

いずれにしても、現在のキャブズはオフェンスが単純すぎる。
最高のタレントであるルブロンの力を、最大限に生かすオフェンスシステムを構築しなければ、エリートチームへと脱皮することはできない。
イーストの覇権を握れるくらいの厚い選手層は既に備えている。
後は攻撃のバラエティと最後のワンピースを加えるだけだ。


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2 コメント

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うん (apple)
2007-02-10 01:51:43
相変わらず視点がいいですね。
#23のマスターもCavsは好きになれないとよくぼやいています。強いけどいいチームではないと。
ラリーブラウンとか名将をHCに就くといいですね。
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そうですね (manu)
2007-02-10 04:05:46
マイク・ブラウンっていう人は、元々ディフェンシブなコーチなんですね。
だから守備面は細かく指導するんですけど、攻撃はあまりよくわからないから、ルブロンにおんぶにだっこでほったらかし状態。
今季は特にルブロンも世界バスケの疲れもあるし、今までは若さでカバーできた部分もだんだん無理が出てきます。
ゲームを見ててもオフェンスに動きがないので、単発っていう印象が否めません。
こないだルブロンが何試合が欠場した時に、意外とボールが回ってオフェンスが機能してたんで、それをヒントにもう一度システムを再構築して欲しいものです。
でないとプレーオフを勝ち上がるのはまた来年になってしまいます。
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