NBA INS 'N' OUTS

かんたん解説 NBAなんでもとーく

ミラクルショット第2弾

2007年03月31日 | '06-07 シーズン

「No!!! Not possible!! Not possible!!」
実況アナウンサーはこう絶叫を繰り返した。
「ありえない」
確かにその言葉がピッタリだ。

ラプターズにとって、アウェイのワシントンで行われたウィザーズ戦。
ウィザーズの3点リードで、試合時間残り3.8秒。
逆サイドのエンドラインからエースのボッシュを目がけて放たれたロングパスは、3ポイントライン付近でディフェンスにカットされてしまう。
万事休す・・・・

しかし次の瞬間、ボールをスティールしたウィザーズのマイケル・ラフィンは、勝利を確信して上空高くボールを投げ上げた。
だが思ったよりも高く上がらず、落ちてきたボールはラプターズのモーリス・ピーターソンの手に。
でももうほとんど時間はない。
ピーターソンはボールをつかむやいなや、3ポイントラインのはるか後方から、左手1本で無理やりロングシュートを放った。
大きく弧を描いたボールは見事ネットに吸い込まれた。

ピーターソンがボールをつかんだ時点で、残り時間はわずかに1秒。
そしてショットを放ったのは0.2秒であった。

何よりショットが決まった瞬間、ウィザーズの面々がみんな呆然と立ち尽くしていた姿が何とも印象的だ。
時間切れだと審判に抗議するでもなく、何やってんだとラフィンを責めるわけでもなく、ただただ目の前で起きたことが何だったのか理解できずに、その場に立ち尽くしていた。

試合は同点に持ち込んだラプターズがオーバータイムも制し、大逆転勝利を収めた。

試合後のピーターソンのコメント。
「ラフィンがボールを投げ上げたのを見て、まだチャンスはあると思ったんだ。そしてボールは俺のところに落ちてきた。素早くショットクロックを見たら、残り1秒ぐらいだった。だからとにかくボールを投げたんだ。ありがたいことに、それが入ってくれた。俺たちにもう一度チャンスを、勝つチャンスをくれたんだ。」

逆に凡ミスをしてしまったラフィンの言い訳はこうだ。
「ボールを空中に投げたのは、自然なリアクションだったんだ。そうすればタイムアップになると思った。そしたら、結果的に思ったよりも時間が残っていた。それと(投げ上げた時)ボールがうまくつかめなかったんだ。手のひらで投げてしまった。」

なるほど・・・・
そういえば、去年のプレーオフだったか、キャブズのエリック・スノウが同じようなシチュエーションでボールをつかんで、誰もいないバックコートに向かってコロコロコロってボールを転がしてたっけ。
一瞬何してんだろう?と思ったけど、確かに時間を稼ぐ方法としてはアリなのかもしれない。

ただ今回の場合、予想よりも高く投げられなかった。
それがたまたま、3ポイントが得意でクラッチシューターでもあるピーターソンの手に渡った。
そして、ギリギリショットを放つ時間 ~それがたった1秒でも~ が残っていた。
この3つの条件のうち、どれか一つでも欠けていたら、この奇跡のショットは生まれなかっただろう。

そうやって考えていくと、やっぱりNBAっておもしろいなあと改めて実感する。
僕は全てのプレーの中で、ブザービーターが一番好きだ。
テクニック、精神力、そして運。
様々な要因が重なってこそ始めて生み出されるスーパープレー。
それがブザービーターだと思う。

なかなか起こらなさそうなブザービーターだが、それが結構珍しくないのがNBAという世界だ。
「ただの偶然だろう」「たまたま入ったラッキーショットだろう」
確かにそうかもしれない。
でも実力がなければ、その偶然さえも引き起こすことはできない。
“運も実力のうち”とはそういう意味だ。
そしてそれが結構頻繁に起こるからこそ、NBAはレベルが高いのだと思う。

★ピーターソンの同点ブザービーター映像はこちらでチェック!

<あとがき>
実はこの試合のヒーローになったピーターソンは、ブザービーターを決めることになる最後のワンプレーの前に、初めてこの試合のコートに立ちました。時間にして4.4秒しか出場せずに、この試合で最も重要なプレーを決めたことになります。その後オーバータイムでも最後の47秒間しか出場せず、全試合トータル53分のうちで、出場時間はわずか1分にも満たないということに。それでも結果を残したピーターソンを褒めるべきなのですが、HCはどういうつもりで采配を振るっているのやら・・・・


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6 コメント

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多国籍軍 ()
2007-04-03 00:47:34
私、ボッシュとT.J.フォードは前々から好きだったのですが、今期になってガルバホサとバルニャーニという2人の外国人選手の加入があり、なんだかとっても楽しいチームになりそうだと注目してたんですよ。このラプターズは。

それでもケミストリーが確立されるには1~2年必要かなぁと思ってたんですが、私の予想より数倍早い段階でチームとしてまとまってきました。
今日プレーオフ出場も決まりましたし、嬉しい限りです☆

この試合はBSで放送されていたので、結果を知っていた私はブザービーターの瞬間をおさめるため録画。
好きなんですよぉ、アタシも(笑)

ピーターソンの放ったシュートがネットをくぐった瞬間、入ることはわかっていたのに飛び上がってしまった私。結果を先に見てしまっていたことをおもいっきり後悔しました(笑)知らなかったらもっと感動できたのに・・・

こんな試合を見たら、今年のプレーオフ、ラプターズにちょっぴり期待したくなりました☆
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同感です。 (manu)
2007-04-03 03:14:19
いやあ、ラプターズに注目してたなんてお目が高い!
僕もNBAにユーロオールスターチームを作ろうとしてる試みが斬新で、強くなって欲しいなあという願望優先で見てましたが、予想より大幅に早く結果が出てきましたね。

バルニャーニも見るたびにドンドンうまくなっていて、1年目のノビツキーよりも堂々としたプレーをしています。
今のサンズを作り上げたコランジェロGMの“目利き”はやはり正確だなあと、改めて感心しています。

先月段階ですが、そんなラプターズについて一度取り上げていたので、もし読んでいなかったらチェックしてください。
<恐竜軍団の復活!?>
http://blog.goo.ne.jp/manumania/e/da211516f115c9e0ee23ea41f8594721
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Unknown ()
2007-04-03 09:25:51
manuさんの書かれる文章はやっぱり素敵ですねぇ☆
これを機に今までの記事もいろいろ読ませていただきましたが、どれもすごく面白かったです。
特にKGの話、締め方にヤられました(笑)カッコ良すぎます。

ちょっと話が飛んでしまうんですがすみません(笑)
ネッツの#7ボスジャン・ナックバーって選手、ご存じですか?
ジノビリっぽいんですよ!特にダンクなんかそっくりで驚かされました。

もしご存じなければ、是非ハイライトとかでチェック入れてみてください☆


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あざーす! (manu)
2007-04-03 20:42:02
バックナンバー読んでいただいてあざーす。

KGはホントに性格がよくて人間性がカッコイイんです。
だから勝てないのが本当に不憫で、思わず感情が入ってしまいました(笑)

ナックバー知ってますよ。最近調子イイですね。
せっかくなんで次のブログに登場させてみました。
そちらもチェックしてみて下さいね。
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モーピー (オーク)
2007-04-04 19:22:10
ラフィンの言い訳?も分かりますね。無心で投げたのとラプターズの選手が寄ってきたから窮屈そうでしたね。(映像ありがとうございます。)結果的に負けてしまったんですね、試合後のラフィンが心配です。。

モーピー・・・元気そうですね、ずっとラプターズで頑張ってるんですかぁ。

私もブザービーター大好きです><
この前たまたま観たウィザーズvsニックス、はっ!?またウィザーズ・・・・
久しぶりに観たニックスの試合でフランシスのブザービーター逆転勝利!NBAの魅力を再確認できました。
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確かに (manu)
2007-04-05 00:24:23
心配ですね、ラフィンは。
1週間ぐらい「パン買って来い」とか言われてるでしょうねぇ・・・

モーピーはいつの間にかラプターズの最古参プレイヤーになってしまいました(驚)
確か今季で契約が切れるので、どうなるのか。
前回FAになった時は制限付きだったので、一度ホーネッツと契約した後に連れ戻されてました。

フランシスのブザビありましたね。
その時もウィザーズが被害に遭ってました。
先行き不安が漂ってますね、ウィザーズは・・・
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