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「閉鎖病棟」現役精神科医が精神医療あり方を患者の視点から暖かく描く。

2008-03-05 19:49:12 | 読書感想文
傑作だと思いました。

私自身がベッドで拘束されていた日々や
その直前の経験が蘇りましたが、
暖かく救いのある結末と
小説の中で最期に登場した
若い女性の精神科医の患者を信じ、守る姿勢、
(彼女は小説の中では患者をひとりの人間として
みるはじめての医師でした)
そして現実の世界の主治医である五十嵐先生の
顔が頭に浮かび
「私はもう大丈夫」
と、戻ってきました。

この本は心を病んだことのない方にも
大きな感動を与える傑作だと思いますが、
同時に、
一度でも心の病になった人間にとっては
特別な作品となることでしょう。

それがなぜ特別であるのかは、
おそらく読んでいただくのが一番だと思います。

また、この小説の中には、
発達が遅れたまま成人した方々も
登場されますが、
そうした方への作者の暖かい目が
心に浸みると同時に、
そのような暖かさを持たず、
何かが遅れていること、
劣っていることを、
蔑み、足手まといだと馬鹿にする人が
まだまだたくさんいるという現実を
つきつけられます。


内容(「BOOK」データベースより)
とある精神科病棟。重い過去を引きずり、
家族や世間から疎まれ遠ざけられながらも、
明るく生きようとする患者たち。
その日常を破ったのは、ある殺人事件だった…。
彼を犯行へと駆り立てたものは何か?その理由を知る者たちは―。
現役精神科医の作者が、病院の内部を患者の視点から描く。
淡々としつつ優しさに溢れる語り口、
感涙を誘う結末が絶賛を浴びた。
山本周五郎賞受賞作。

閉鎖病棟 (新潮文庫)
帚木 蓬生
新潮社

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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
「閉鎖病棟」良かったです! (BZK)
2008-03-23 18:51:57
 読み始めた当初、描写されるどこに「閉鎖病棟」があるのだろうかと思いました。
 多少なりとも「閉鎖病棟」の実際を知っていたつもりの者にとっては…。

 しかし、読み終えて初めて分かったのです。
 本当の「閉鎖病棟」は実はこの社会にあり、私たちの心の中にあることを。

 しかし、作者は本当に素晴らしいですネ。どうしようもないと思われる人に対しても、優しいまなざしを忘れていません。

 作品中にも登場する知的障害者の人について。
 読み書きや計算ができなくても、美しいものをきれいだと感じ取るすばらしい力を持っているいる人はたくさんいます。

 私たちが目指す社会はどんなものだろう?それを考えさせられる作品でした。
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