建築弁護士・豆蔵つれづれ

一級建築士・弁護士・豆蔵自身の3つの目線で、近頃の建物まわりネタを語ります。

液状化の事業者責任が否定された判決

2014年10月13日 | 裁判
ケンチクベンゴシの豆蔵です。

東日本大震災後、建築や造成に関しても様々な裁判が行われているところですが、
その中でもとりわけ注目を集めていた浦安の液状化裁判で、先週、最初の判決が出ました。
(東京地裁平成26年10月8日判決)

住民側の請求棄却という結論です。

本件をかいつまんで説明すると、
今から20年以上前、昭和56年頃に木造3階建のタウンハウス(基準法的には長屋)を建築して分譲した三井不動産が、
住民(所有者)ら36人から総額8億以上の損害賠償請求訴訟を提起されたという事件です。
訴訟提起は、震災から1年弱経過した後の平成24年2月。

そもそも、三井不動産は昭和30年代の埋め立て自体にも関与している会社ですが、
この点は、本件では問題にされていないようですね(?)。

本件の裁判所の判断で注目すべきは、現時点では複数の報道からの分析になりますが、
不法行為における判断において、
本件地震の特殊性(揺れの長さ、被害の甚大さ)、
建築当時や本件地震発生前における一般的な住宅(小規模建築物)の液状化対策がべた基礎であること、
などを認定した上で、
本件地震による液状化被害の予見可能性を否定したことです。

まあ、少し乱暴ですが、カンタンに言ってしまうと、
戸建てレベルの建物については、べた基礎にしておけば大丈夫と言われており、その通りの対策はしていたが、
予想しないような特殊な地震が来て、その結果として重篤な液状化が発生してしまったのだから、
不法行為責任を負わない、
ということらしい。

一般に、建築事業者の過失は、建築当時の技術的知見(通常レベル)に照らし判断する、
ということになりますが、
この判決によれば、少なくとも、昭和56年頃の技術レベルから事業者の予見可能性は否定され、
さらに、本件地震が起きる以前であれば、予見可能性が否定される可能性がある、ということになりそうです。

中・大規模建築物の世界で設計をしている人には、なんとなく腑に落ちないかもしれません。
液状化の検討や対策は、中・大規模建築物の世界では当然ですからね。
豆蔵もかつてはそうでしたが、かなりのレベルの研究者などにお話しをうかがって、
中・大規模と小規模では大きな違いがあるのだと知りました。

本件裁判以外にも、三井不動産を相手取った同種の裁判が複数提起されているほか、
他の開発・建築事業者に対する裁判も多数行われているとみられます。

本件裁判は、不法行為の除斥期間(権利主張できなくなる期間)20年を経過した事案だったにもかかわらず、
単に除斥期間で棄却せずに諸々の判断を残していますので、
他の裁判への影響や、他の裁判との整合性なども、今後、非常に注目されるところです。
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