建築弁護士・豆蔵つれづれ

一級建築士・弁護士・豆蔵自身の3つの目線で、近頃の建物まわりネタを語ります。

ウッドデッキを敷きたいところだけれど…。

2015年02月23日 | 建築物の安全
ケンチクベンゴシの豆蔵です。

事故ネタが続きますね。
ドバイの超高層マンションの燃え方は、なかなかショッキングでした。
自分があんなところに住んでいたら…と思うと、恐ろしいです。
まあ、豆蔵は絶対に高層階には住まないと思いますけど。
臆病なので。

映像で見る限り、出火階から上にかけて、外部ではかなり燃え広がっているようでした。
中がどこまで燃えたかは分かりませんが。

今の建基法や消防法によれば、あのような燃え広がり方はしないはずです。
防火区画(マンションの場合は住戸か100㎡ごと)が設定されていて、
上下階の窓同士からも延焼しないよう、窓の間に
900㎜以上の不燃材の壁、またはバルコニー・庇などが設置されることになっているからです。

しかし、「日本の法律によれば、そんなことは起きない」という言葉は、常に疑っています。
例えば、カリフォルニアの地震の時にそう思ったけれど、阪神大震災の高速道路倒壊で裏切られましたからね。

日本の火災の歴史でも、外部からの延焼で大災害になった事案があります。
広島基町住宅火災
バルコニー手すりに可燃物であるアクリル板が使われていて、それを伝って火災は上階へ広がったという話です。
建物自体は、確か昭和50年頃の、集合住宅の歴史!って感じの建物で、当時は今より規制が緩かったようです。
現在は、不燃材に改修されたそうです。

炎というのは、舐めるように上に上がっていくので、
室内に燃えやすいものがあるなど火炎が大きくなった際には、バルコニーなど乗り越えていくんですよね。
なので、バルコニーに可燃物を置いておくことは、自分の部屋に炎を招き入れることになる。
マンションのモデルルームなどで、ウッドデッキにバーベキューテーブルなどというしつらえを良く見ますが、
火災時には自殺行為かもしれません(防炎性能にもいろいろあると思いますが)。

豆蔵も、ウッドデッキを敷きたいと思っていたのですが、今回のを見て、やはりやめようと思いました。

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今度は看板落下事故との一報です。

2015年02月16日 | 建築物の安全
ケンチクベンゴシの豆蔵です。

今日は、強風で看板が落下して人が死傷した…というニュースの第一報が入ってきました。
詳細はまだ分かりません。

風速は25m/秒程度だったということですが、そのくらいの強風は珍しくありません。
今日の東京も、夕方当たりからずいぶん強い北風が吹いていました。
ということは、
風のせい、ということで不可抗力→免責ということにはならないでしょう。

以前、何度か建物に看板を設置したことがあります。

厳密には、看板=サインは施主側の直接の発注工事で施工されることも多く、
建物の設計者が行うのは取り合い部分の調整だけで、看板自体は看板屋さんの設計→施工でした。

厳密な安全基準はありません。
カンと経験の世界、という印象だったのですが、どうなのでしょうか?

何よりも問題なのは、設置後の管理がほとんど行われていないということです。
付けたらつけっぱなし。

さて、事故の責任を問われるのは、まずは建物の所有者、ということになります。
民法717条の工作物責任ですね。
当初の設置や管理などで所有者以外の原因がある場合は、二次的に所有者から責任を問う関係になります。

風もさることながら、地震の時は特に心配です。
この辺は、東京オリンピックを機会に、本気で規制の対象としても良いと思うのですが、どうでしょう?

追伸
事故を受けて、早速(火)に、国交省から各地の自治体に対し、調査のお達しが出ました。
一昨年の脱法ハウス(現在では「違法ハウス」)やエレベーター等の事故の場合の調査と同じような感じです。

沿道や高層建物という対象のくくりで、定期点検の対象にならない規模の建物についても対象となるようです。
期限は4月10日ですが、対象がかなり多いので間に合うのでしょうか?

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エレベーターは苦手です。

2015年02月08日 | 建築物の安全
ケンチクベンゴシの豆蔵です。

豆蔵が苦手なものに、エレベーターがあります。
日常的に乗っては居ますが、
実は常に、閉じ込められたらどうしよう…と思っています。

最近行った銀座の有名なレトロビルのエレベーターは、
階数表示がアナログの針だったりしてかなり趣はあるのですが、
扉を開けるのが手動で、しかも重くて、なかなか怖かったです(映画みたい)。
ヨーロッパの古いビルのホテルなどは、手動ドアは当たり前ですけどね。
扉が分厚くて、なんとなく冷蔵庫に入るような感じがします。

以前、京都の病院の改修工事の現場にいた時に、
現場事務所で使用していた古いマンションのエレベーターの扉が開かなくなり、
別の階の方が閉じ込められて大騒ぎをしたことがありました。

時々、死亡事故も起きていますが、
実は近所の某店舗のエレベーターでも、少し前に事故がありました。
トラブルは結構身近なところにあるのです。

エレベーター・エスカレーターは国交省が所管で、
違法なエレベーター・エスカレータを通報する窓口が設けられています。
人が乗る乗り物で、しかも、高いところに上るものなのだから、
安全性には相当に気を付けてほしいところですが(当然、確認申請の対象です)、
国交省の調査によれば、
世の中には、違法に設置されたものや、メンテがされていないものがたくさん放置されているようです。
特に、費用の問題からか、民間の生産施設などではその傾向が顕著だとか。
雇用者の安全配慮義務違反も甚だしいです。

ところで、数年前に、
お台場のビッグサイトで起きたイベントでのエスカレーター逆走事故がありました。
体格のいいマニアの方々が殺到したことによる乗り過ぎが原因ではないかと言われていましたが、
事故報告書によれば、ボルトの締め付け不良が原因という結論になったようです。

まあ、殺到したことによって被害は拡大しているのは間違いないですから、
乗る方も気を付けねばなりませんね。

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転落事故の責任や如何?

2015年02月01日 | 建築物の安全
ケンチクベンゴシの豆蔵です。

昨年末、歌舞伎町の雑居ビルのトイレから女性が転落して死亡するという事故がありました。
トイレの中に、入口とは別のもう一つの扉があり、そこから転落したというなかなか衝撃的な内容であり、
ご記憶の方も多いと思います。

原因は何か?
誰がどのような責任を問われるのか?
死亡事故ですので、損害賠償の民事責任(不法行為)はもちろん、
業務上過失致死の可能性も考えられるような話です。

なお、この事件については、
建築基準法に関し豆蔵が某ワイドショーよりコメントを求められるという事態にも発展しましたが、
パネルで相当に出来の悪い写真を用いて紹介されたとの各所からの報告がありましたので、
豆蔵自身は見ることなく封印しております。

さて、この建物自体が建築基準法違反か?というと、違反ではありません。
屋上などの手すりについては高さ1.1m以上という規定がありますが、
建具について、どの位置、どの高さに設置するというのは、法律では決まっていないからです。

なお、住宅に関しては、性能基準的なもので高さが規定されていますので、
何もない外側に向かって突然ドアが開くということはありません。

ニュース等の文脈より、多くの人は、
トイレの個室から出る際に、誤って反対側の別の扉を開けたのだろう。
そのようなところに紛らわしい扉がついているのは、ケシカラン、
というように感じたようですが、
実際には、
扉は、通常、人が出入りするような扉とは異なる形状をしており、かつ、落下防止バーもあったようですので、
少なくとも多少の酔っ払い程度では間違えるということはないと思います。
(扉の下端が床から30cm上がりで、かつ、扉は両開きだったそうです。)

但し、そのような不特定多数が立ち入る場所で、そのような危険な扉の鍵が、
サムターンという誰でも開けられるものだったということは、かなり異常な話です。
また、ビルの性質上、かなり酔った人をも基準とすると、事故は予見可能だったという感じがします。

当時の設計を行った設計事務所の話なども出ていましたが、
こうした事故で事後的に設計者の不法行為責任や業務上過失致死の刑事責任を問われる例もあります。
設計から10年以上が経過していますが、
不法行為は行為時から20年までですし、刑事責任は行為時ではなく結果発生時が時効の起算点と言われています。

ただ、その扉は各階に付いているけれども、その場所は必ずしもトイレではないらしい。
最初の設計者は、その扉をトイレの中に付けた訳ではない可能性もあるようです。

続報が入ってきませんが、同種の事件が再び起きることのないよう、
ビルの所有者・管理会社などはきちんと点検・改善をお願いします。

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