建築弁護士・豆蔵つれづれ

一級建築士・弁護士・豆蔵自身の3つの目線で、近頃の建物まわりネタを語ります。

「宮脇檀のドローイング展」雑感

2017年07月26日 | 見たもの雑感

建築弁護士の豆蔵です。
またまた、見たもの雑感が続きます。

 ←クリックで拡大

千駄ケ谷・キラー通りのJIA・建築家協会にて、先週末まで
「宮脇檀 手が考える 建築家・宮脇檀のドローイング展」が行われておりました。

(割と)若くして亡くなられたのは19年前。もうそんなになったんですね。

宮脇さんの作品は個人住宅が中心でしたので、残念ながら現物を体感したものはないのですが、
手書きの数々の図面、フリーハンドのスケッチを見ていて、非常に懐かしくなりました。
建築学科に入ったばかりのころ、カッコいいなと思って、プランニングも表現も、かなり真似をした(しようとした)記憶があります。
また、昭和っぽい(?)部分も、今、改めて良いなと思いました。

JIAのホールという小ぶりの会場でしたが、開催者側も、集まった方々からも、宮脇さんの作品やドローイングへの溢れる愛が感じられました。 

 

さて、東京国立近代美術館(竹橋)でも、「日本の家 1945年以降の建築と暮らし」展が開催中です(10月29日まで)。

住宅建築の展覧会としては、3年前の夏に、埼玉県立近代美術館「戦後日本住宅伝説ー挑発する家・内省する家」がありましたが、
今回のは、ローマ→ロンドンと巡回した逆輸入のようです。

行かねば!

建築家にはなれなかったけど、相変わらず、建築巡りは楽しいです。


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山崎、夏の建築まつり。番外編

2017年07月20日 | 見たもの雑感

建築弁護士の豆蔵です。
今回は、前回の建築まつりの番外編、サントリー山崎醸造所と京都迎賓館の雑感です。

「山崎」といえばサントリー、というくらい有名なウイスキー「山崎」を作っているのが、サントリー山崎醸造所。
30分の試飲が付いた有料の工場内ツアーは、とても予約が取りづらいらしく、今回は無料の展示室・試飲会場を目指しました(これも要予約)。

 ←全景(クリックして拡大)

1杯2~300円で、ブレンドする前の個性あるウイスキーたちを試飲できます。
色とりどりの味わいは楽しいのですが、なんだかんだ完成品が一番おいしかったです。さすが、プロのブレンドですね。
白州や知多、響との飲み比べも楽しい。

豆蔵的・注目ポイントは、敷地の奥にある水源と神社、そして、さらにその奥にひっそり隠れている名神高速の「天王山トンネル」。

 ←木々の間に…。

砂防ダムの上、木々の間の緑色の「チューブ」が見えますか?
グーグルマップによれば、どうもこれはトンネル(下りの左ルート)のチューブの外側らしい。
騒音は全く聞こえませんが、天王山トンネルが確かに天王山を貫いているということの目撃情報です。

仮に、わずかとはいえ、ここに高速道路があったら、静謐な環境も雰囲気もブチ壊しです。
走行する側にとっても、トンネル内の気圧の変動を避けるためには、チューブでトンネルを連続させる必要があるのかもしれません。
ちょっと意外な光景でした。


さて、山崎からは離れますが、もう一つの建築まつり番外編は、京都迎賓館。

広大な京都御所の敷地内、東北側にあります。
明治時代から続く赤坂の迎賓館と比べ、歴史は浅く、築10年ちょっと。設計は、意外にも(?)日建設計でした。

一般公開が始まったのは割と最近のようで、事前予約もありますが、当日も対応可能のようです。
但し、国賓の来日など非公開の日もありますので、要チェック。→内閣府

建築は、端正ですが、想像より非常にあっさりしていました。

 ←錦鯉が泳ぎ舟遊びをするための池

使っている材料、例えば樹齢数百年の屋久杉や幅広の欅などはすごいですが、メンテナンスや環境面での制約があるようです。
例えば、錦鯉が泳ぐ池の水質を変えないために、屋根は銅板ではなくステンレスであったり。
空間設定も、会議や警備などの機能を重視せざるを得ないという風ではあります。

 ←会議に用いるので、和室もスケールアウト。

一方、建具・造作、家具、床や壁の緞通、飾られている工芸品などは、日本代表を集めた感がすごいです。

 ←建具の切金細工

二つの大広間(洋間)の壁はいずれも織物で、一方が龍村美術織物、もう一方が川島織物という京都の(日本の)「織り」の二大巨頭。

 ←こちらは川島織物、これも巨大です。

先ほどの巨大な和室も、漆塗りの座卓や座椅子、欄間など、繊細なもの尽くしとなっております。

今回はガイドツアーでしたが、自由見学枠もあるそうなので、別の季節にゆっくりと再訪してみたいと思います。


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山崎、夏の建築まつり。

2017年07月18日 | 見たもの雑感

建築弁護士の豆蔵です。

「山崎」は、京都府と大阪府の境目にある、天下分け目の「天王山」のふもとの町です。現在の住所としては、京都府になります。
サントリーの山崎醸造所、安藤忠雄が増築を手掛けた大山崎山荘美術館(こちらはアサヒビール所有)で有名ですが、
古くから淀川の水運の要所、灯明に用いるエゴマ油の生産地として栄えていた町だというのは、今回、妙喜庵の和尚さんから教えていただいた話です。

余談ですが、かつて、サントリーのCMを見て、山崎醸造所がものすごい山奥(秘境)であると思い込んでいたところ、後にJRの駅前で発見し、非常に衝撃を受けました。
ただ、鉄道の開通の方が、工場の場所決めより後なんですね(朝ドラの「マッサン」に出てきました)。
1500年頃から続く妙喜庵などは、駅前にお寺があるのではなく、お寺の庭先に近代になって鉄道が通った、というのが正しいようです。

さて、今回、山崎で訪問したのは、利休さんの残した唯一の現存と言われる国宝の茶室「待庵」と、
日本初の環境共生・実験住宅シリーズの集大成、昭和3年築、藤井厚二作の自邸「聴竹居」です。

その1 待庵(妙喜庵)

秀吉が明智光秀を討つ天王山の合戦の際に、千利休が秀吉を慰労する為に作ったといわれる茶室です。
元々、建っていた場所ではないそうですが、一度、解体されて、江戸初期に現在の妙喜庵に再築されたとのこと。
屋内での映画のセットや実物大模型は体験したことがありますが、実物は初めてです。

 ←間取り図・拝観案内より引用(クリックして拡大)。

茶室は2畳、軒は低く、客は「にじり口」から出入りする等、茶室のイメージの典型例ともいえますが、それは我々が、利休が創った「茶」しか知らないからです。
当時は、さぞ、革新的(非常識)だったかと。
中の土壁は、粗く墨のような色をしています。その上、黒一色の「樂」茶碗が用いられたかもしれません。
小さな窓から差し込む外光、周囲の木々や抹茶の色との、強い対比がうかがえます。
また、入隅を丸くしたディテールや天井の組み合わせ、床や棚のしつらいなど、建築的にも美しく、楽しい。

凡人の豆蔵でも、先人たちの評を頼りに、そこに「宇宙」の広がりを想像することができました。

見学には、1か月以上前に「往復はがき」で申し込む必要がありますが、静かに、丁寧な説明を伺いながら、色々な発見を楽しむことができます。


その2 聴竹居(藤井厚二自邸)

こちらは、山崎の小高い山の中腹に位置し、周りを紅葉などの木々に囲まれた、昭和初期の住宅です。

アールデコ調デザインの面白さを期待して行ったところ、この住宅の価値はそれだけではない!
環境共生住宅の原点であり、風を通し夏を涼しく過ごすための、数々の仕掛けがあるというのです。

 ←入口部分。左手に庭、眼下に淀川の景観が広がっています。

ちなみに、見学時の京都市内の気温は、35℃。
邸内には20人ほどの見学者がいましたが、風が抜けて、ひんやりと気持ちいい。

とても面白かったのは、住宅の近代化を目指した京大教授・藤井厚二の数々の実験の話。
山崎の山を一つ買占め、沢山の住宅を設計し、造らせ、自らも何棟も造っては住み替え、最後の集大成が聴竹居。
斜面の中腹から地中管で床下に空気を送り込み、天井裏には開閉可能な通気口を設けるなど、究極のエコ住宅と思いきや、
オール電化で巨大なコンプレッサーを備えた電気冷蔵庫や電気鍋、4か所給湯の電気ボイラーを装備し、電気代が月に20万(現在に換算)。

すっかり凝り性・頑固な建築家というイメージになってしまいました。

もちろん、家具や照明のデザイン、材料の選び方、ディテールも徹底しています。
大工と材料(を吟味する目)がよいので、90年経った今でも、建具や家具・照明に至るまで、全く「狂い」が生じていないらしい。
驚くべきことです。

藤井厚二が竹中工務店のOBとのことで、昨年から竹中工務店が所有していますが、ガイドをしてくれたのは、近隣のボランティアガイドの方々。
非常に分かりやすく、面白い説明でした(お屋敷町ですから、皆さんのご自宅もすごいです)。

こちらの見学も、予約制です。ネットで予約ができますが、曜日に限りがあり、早めに予約した方がよさそうです。

今回の日程は、三連休かつ祇園祭と重なっており、かなり早い時期からの事前予約が必要でした。
醸造所見学やランチまでの一連を手配してくれた友人に感謝です。

さて、今回の建築まつりの番外編には、サントリー山崎醸造所と、山崎ではありませんが「京都迎賓館」があります。
長くなりましたので、次の機会に。


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安全をどこまで機械に委ねるか? ~住宅編

2017年07月13日 | 小ネタ

建築弁護士の豆蔵です。

AIやIoTについて、もはや見聞きしない日はない、という状況になってきましたね。
(IoT・物をつなぐの先にAI・人口知能の利用があるという前提で、一緒に話をしています。)

昨日の朝刊よれば、某ドイツ車の自動運転は、いよいよ「レベル3」という「緊急時以外はお任せ」という水準まで実用化が進んだとのこと。

余談ですが、自動運転の実現には、車の技術的な課題以上に、社会的な理解や合意、法制度の整備にハードルがあると言われていますね。
ドイツの場合、中央分離帯のある高速道路を60km/h以下で走行する場合に限り、レベル3の自動運転が認められると紹介されていました。
もっとも、そうした具体的なルールがある国はまだ少なく、日本でも具体的なルール作りには入っていません。

私見ですが、
発生可能性が低くても、発生した場合に、許容できない被害が予想される場合、そのリスクを取るべきではない。と思います。
したがって、自動運転に任せる方が、人間よりも確実に安全である。という客観的な事実が必要となります。

加えて、自分や親族や大事な人が自動運転車に轢かれた場合の心理的影響をも、考慮しなければなりません。
(世の中的は、こっちの方が重大かも)

コンピューター等の機械に「安全」を委ねることについて、社会はもっと真剣に議論すべきだし、事業者は覚悟を持って進めてほしいと、
常々思う今日この頃。

 

話が脱線し過ぎましたが、ここから建築(住宅)の話です。

今般、国交省が、IoT住宅の実現へ向けた事業の補助を始めました。→リンク

事前の国交省の事前懇談会は、推進が目的ですので、従来のIT住宅の課題や新しいアイデアなど、前向きな議論が中心です。
特に、医療や介護分野における、期待・注目度が非常に高いのもよく分かります。
(自立した高齢者のサポートにおけるITの壁は、思った以上に高く、簡単には進まなさそうですが。)

一方、課題の中心として認識されているのは、個人情報保護の問題ですが、それ以上に個人的に気になってならないのが、標記の安全の問題です。

「建築では、安全性の問題はないのでは?」
いえいえ。自分の身と財産を守る防犯と防災は、住宅の最も原始的な機能ですし、IoT・AIの守備範囲に入っていますよ。

IoT・AIを駆使した住宅が、ウィルスやサイバー攻撃を受けたら?
泥棒は入り放題。家一軒焼くことも可能で、今後の展開次第では、人を殺すことも可能になると思います。

特に、住宅業界における普及の課題として、事業者の裾野がめちゃくちゃ広いこと。
普及しにくい、という心配よりはむしろ逆で、安易に普及してしまった場合の危険を心配しています。
元々、ITに関する人的資源が十分ではない中で、太陽光のようなブームなど来てしまった日には、必要な知見や危機意識が充分でないまま進む可能性が高い。

先の懇談会でも情報セキュリティの専門家が指摘してくれましたが、「つなぐ」ということに対する覚悟が必要。
作る側もですが、もちろん、作ってもらう消費者の側もです。

こんな問題、まだまだ先の話だと思っても、住宅が家電と並べて売られている時代ですからね。あっという間かもしれませんよ。


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