建築弁護士・豆蔵つれづれ

一級建築士・弁護士・豆蔵自身の3つの目線で、近頃の建物まわりネタを語ります。

先人たちの挑戦に感服致しました。

2014年08月31日 | 小ネタ
ケンチクベンゴシの豆蔵です。

8月ももう終わり。ということで、
本日まで開催中だった、埼玉県立近代美術館「戦後日本住宅伝説ー挑発する家・内省する家」を
見てきました。
丹下から安藤忠雄まで、昭和の時代を作ってきた実験的な住宅建築の系譜を、
実物大の写真や図面で紹介するという、非常に興味深い展覧会でした。

清家さんなど非常に端正かつミニマムなモダニズムがある一方で、
毛綱、石山など、万人を拒絶するかのごとき住宅も数多く。
各住宅にそれぞれ、図面、模型、写真、映像が豊富に用意されていたので、
特に、前々から今一つ良さが理解できないと思っていたもの(苦笑)を、重点的に体感してみました。
原寸大の写真は、なかなか説得力があります。

解体されて消滅してしまった建物も多い中で、50年以上経過して、今なお現役の住宅もあり、
例えば、外苑のワタリウムの向いにあるお馴染み塔の家など。
建物の寿命って何だろうな、
こうして世代を超えて受け継がれるものってすごいな、と思いました。
また、古いものを建築基準法や耐震診断で画一的に評価しては絶対にいけないな、と改めて感じました。

もちろん法律は守らなければなりませんし、
依頼者に対しては、法的リスクを回避する方向でアドバイスするのが、豆蔵の仕事なのですが。

歴史や愛着を大切にした着地点を模索するお手伝いをしたいものです。

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速報:ガイドライン適用第1号が出たそうです。

2014年08月25日 | 法制度
先日、お伝えした「建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」ですが、昨今、
岩手県で、ERIがガイドラインを適用して検査を行い、法適合が確認された実例が出たとのことです。

動き出しましたね。

取り急ぎ。

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広島上空にて、宅地の安全性について考える。

2014年08月25日 | 法制度
ケンチクベンゴシの豆蔵です。

先週、京都のゲリラ豪雨の話をしたら、今週はさらにゲリラ豪雨が猛威を振るいました。
広島の土石流、時間100mmもの雨が真夜中に2~3時間も降り続くなどというのは、もちろん想定の範囲外なのですが、
最近は想定の範囲外のことだらけで、対応が追いつきません。

土石流の翌朝、広島の上空からは、大量の茶色い土砂が青い瀬戸内海に注ぐ様が見えました。


今回のような大雨や山裾の地域については、また別に考えなければならないでしょうが、
一般の宅地でも、ちょっとしたゲリラ豪雨でも危ないのではないか?と思われるような造成や擁壁が、巷にはあふれています。
例えば、隣の宅地を支えている擁壁の水抜き穴なんて、気にしたことあります?
水抜き穴が機能していないと、大雨時に想定以上の土圧がかかり、崩壊の危険が増してしまいます。

建物の安全性には気を遣うのに、安全性の確認できないガケや擁壁があまりに無頓着な気がするのです。
作る側も住む側も。
特に、既存のもの、確認申請の対象とならない高さ2m以下は、野放しに近いといってもいい。

建物敷地の安全性(建築基準法19条)に関しては、多くの都道府県で、一般の地域(宅造規制区域等の指定のない地域)についても、いわゆる「がけ条例」を定められており、
がけ又は安全性の確認できない擁壁から一定の距離の範囲内については、建築に制限が生じます。
一応は、がけ上の建物ががけに荷重をかけるのを避け、また、
がけ上もがけ下も、仮にがけが崩れた場合に建物の最低限の安全性が保てるような距離・構造にしなければならないこと
に、なっています。
建物を建てる側は、少なくとも、その点を守って建築をしなければ、法的責任を問われ得ます。

一方、その点さえ守っていれば安全かというと、もちろんそんなことはありません。

傾斜地に住む人には、自分の土地のリスクについて、もっと認識してほしいです。
そして、危険を下げる対処をしてください。
何かあってからでは、裁判を起こしても元の生活には戻れませんから。

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時間50mm超えのゲリラ豪雨多発。GLに注意!

2014年08月17日 | 小ネタ
ケンチクベンゴシの豆蔵です。

短い盆休み、京都で時間100mmに近い雨に遭遇して来ました。
大文字焼き目当ての観光客を直撃です。

かつて雨水排水の降雨量の基準といえば、地域にもよりますが1時間当たり50mmで見ているところが多かったと思います。
開発許可手続等で義務付けられる「雨水流出抑制」について、時間50mmで計算したり、雨どいやドレーンの設置についても、時間50mmと10分降水量の最大をチェックして決めた記憶があります。

ところが、最近のゲリラ豪雨は、時間50mmを軽々と超えています。
新しく建てる建物については、雨水排水量を大目に見込まないと、瑕疵を問われる可能性も否定できません。

また、気を付けなければならないのは、GL、つまり建物の敷地のレベルです。

裁判や相談で、GLの設定が低すぎるとか、間違って建ててしまったというケースが、散見されます。
是正は不可能ですから、道路からのレベル差の設定を甘くみると、大変なことになります。
判決において高い損害の評価をされているものはあまり見受けられませんが、実害が出て対応を余儀なくされるという実例はあります。
被害の程度によっては、瑕疵担保期間が経過しても、不法行為責任を問われるかもしれません。

洪水の経験のある地域は、特に要注意ですね。
ゲリラ豪雨で浸水の頻度が増えていますので、かつてのように「不可抗力」では逃げられない可能性があります。

洪水履歴は、お施主さんや役所から地域の情報を聞くほか、付近の建物を観察すると分かることがあります。
現地を見に行ったら、他の近所の建物はどれも、入口でかなりの段差やスロープを付けていることが判明した、などということもありました。
(設計者の過失を認める要素になります。)

しかし、京都というのはすごいです。
鴨川が濁流になり、五条通が川になっても、送り火が雨天中止というのは絶対にあり得ない、と。
そりゃそうですね。
お盆に帰って来た人が戻れなくなるのは、困りますからね。

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「余計なお世話」は減らしたい。

2014年08月13日 | 小ネタ
ケンチクベンゴシの豆蔵です。

昨日の日経朝刊に、
「中古住宅、購入しやすく リフォーム融資優遇」という記事が出ていました。
来年度から、住宅金融支援機構の「フラット35」の対象に、中古住宅を購入した際のリフォーム費用も含めるという話です。

昨今のリノベ流行りで、「リフォーム済」ではない中古住宅の販売も増えてきたように思います。
この「リフォーム済」、建築やインテリアに興味があって、自分で好きなようにしたい!という購入者にとっては、全く「余計なお世話」だと思っていました。
このような「余計なお世話」が当たり前だったのには、売る時の見栄えの問題や、販売と工事の主体の違いからくる購入者の煩わしさなど、色々と理由がありますが、
リフォーム費用を別に借りる必要があったことも大きな理由と聞いています。

総務省が先月29日、住宅・土地統計調査を発表して以来、特に空き家率があちこちで話題になっていますね。
住宅の高齢化も、国民的課題です。

ところで。

お盆明けの8月19日(火)17時より、セミナーをさせていただくことになっています。
かの、新宿パークハイアットビル(丹下さんのビル、都庁の南側です)の巨大なインテリアショップ・ショールームの集合体(総面積なんと13000㎡!)、
リビング・デザイン・センターOZONEの、プロフェッショナル・セミナーです。
「耐震化の法律読本」を軸に、「地震・耐震化の法的トラブル回避術」という話をさせていただきます。

OZONEセミナー案内

住宅関係者の方が多いそうなので、地震の話もしますが、リフォームの話もしようと考えています。
要申込(有料)ですが、できるだけ「実」のある話にしたいと思います。

お洒落なインテリアショップ、ショールーム巡りを満喫し、ついでにセミナーも覗き、帰りにビールというのも、夏の一日の過ごし方として悪くないですよ。
興味のある方はアクセスしてみてください。

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京都の町家の活かし方

2014年08月09日 | 法制度
今週はお盆休みという人も多いことでしょう。
豆蔵も、ちょっくら京都に行く予定です。

京都では、色々美味しいものを食べる予定ですが、最近は、古い町家を改装した飲食店がメチャクチャ増えています。
嬉しいことですが、以前ほどの希少価値が無くなりました。

一方、今、大流行の兆しを見せているのは、町家の宿です。
お洒落なゲストハウスと、一棟貸。
一棟貸は、貸別荘のようなもので、チェックイン・アウトの時だけスタッフが来て、あとは放置です。
お気軽に町家の雰囲気が満喫できるので、なかなか楽しいです。

これらの町家は、基本形を変えず、古い材料を使うなどして、古いものの良さ残していますが、実際には、ほぼスケルトンに近い状態から作り直し、現代の居住性に近付けています。
そうすると、
100㎡以上の用途変更(住宅→旅館)は確認申請による既存遡求(緩和条項あり)、さらに、
大規模の修繕に該当する場合、100㎡未満では確認申請は不要なものの、原則は既存遡求…ということになりそうです。

何をヤボなことを言ってるのか、と言われそうですが。

実際に、関西方面からは、昔ながらの長屋の切り離しやスケルトン改修に関する問い合わせも多いのですが、法律の建前と、一般的に行われている工事や運用がかなりかけ離れています。
なので、
ご近所さんとトラブルになった場合に、そうしたところがリスクになるとお答えしています。

京都の町家に話を戻すと、
京都市の場合、古い建物の改修の建前と現実のギャップを埋めるような条例が制定されており、歴史的建造物については、建築基準法3条1項3号により、建築審査会の同意を経て、建築基準法の適用を除外することができます。
まあ、実際にはまだ事例が少ないそうですが。
さらに、京都市では、改修Q&A的なガイド「京町家できること集」というものを出しており、これは増改築に関するかなり細かい問題まで整理されていて、改修全般で参考になりそうです。


京都市 京町家できること集

ちなみに、京都市以外の地域については、構造改革特区の認定を受けて、
「伝統的建造物を利用した旅館営業事業:
伝統的建造物の風情を活かして旅館営業を行う場合には、玄関帳場等の設置義務等の構造設備備基準を緩和し、伝統的建造物としての特性を維持したまま、旅館として営業することを可能とする。」
という特例措置を受けるなどしているようです。

なるほど。調べてみると、なかなか面白いですね。
今度泊まる町家はどんなんかな?

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本当に「検査済み証がなくても 増改築しやすく」か?

2014年08月03日 | 法制度
今日も暑かったです。
銀座の新橋側の端から日本橋まで歩きましたが、再開発中のビルがあちこち目につきました。
しかし、再開発前に何があったのか思い出せない場所が多く、古いものも大事にしたい豆蔵としては、ちょっと悲しくなりました(自らの記憶の衰えも嘆くべき点)。

さてと。
最初のネタなので、少々、硬いところから入ります。

豆蔵的にもかなりニーズの多い改修ネタです。
先月の頭に国交省から出た「建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」について。

この手のガイドライン、結構しばしば出ているという印象です。
でも、ある領域について何の手がかりもないときは、過去に出されたガイドラインの類を参考にすることも多く、我々の仕事的には無視できない。

このガイドラインを、日経アーキテクチャーは、冒頭のキャッチーなタイトルで記事にしています。
が、これについては、ちょっとどうかな(言い過ぎ)?
このガイドラインに沿った「調査報告書」に
何らかの法的効力…例えば検査済証に代わるもの等が認められる訳ではなく、
「建築基準法の枠組みの中で活用されること」が推奨されているに過ぎない点は、誤解のないように。

現在、既存不適格建築物の増改築については、
確認申請に際し、既存建築物が建築当時(増改築当時)の法令に適合していることを示す資料の提出を求めています。
(平成21年9月1日付国住指第2153号の技術的助言。「既存不適格調書」として既存の図面、工事履歴、現況調査等)
国交省は、この既存の現況調査を、ガイドラインに沿ってやったらいいよ、と言っているのです。

ガイドライン7頁より調査フロー図

「既存不適格建築物であるのか、違反建築物であるのかの判断が難し」いことには何ら変わりないように思うのですが、
それでも、「主事判断」のブラックボックス中にある増改築の手続きに、少しでも手がかりができるのは、喜ぶべきなのでしょう。

「主事判断」の根拠と問題点については、また別の機会に分析したいと思います。

(8/8追記)
方向性としては、指定確認検査機関に共通ルールに従った調査をさせ、各行政庁・主事がその調査を用いた確認申請を認めるといった形になることが、期待されています。
豆蔵的には、調査者の責任範囲として「図書および現地調査可能な範囲においてその責任を負う」と明記されているのが、注目です。

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自己紹介のつづき

2014年08月03日 | はじめに
自己紹介ついでに貼っておきます。

企画・構想から苦節?1年で、本年3月に発刊になった本です。
(建築技術様、ありがとうございました!!)

本を創るのって難しいなあ…としみじみ思いましたし、完成度としてはまだまだですが、他には無いオリジナルのものになりました。
もし仮に機会があれば、次はもっと分かり易く面白いものにしたいと思います。

耐震化の法律読本: 法的リスクを回避するためのQ&A 80
匠総合法律事務所
建築技術


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予告通知。

2014年08月03日 | はじめに
ケンチクベンゴシの豆蔵です。

建築士ですが、弁護士をしています。
建築と法律の間のニッチな世界が、豆蔵の主な活動領域です。

久々にブログを復活させることにしました。
テーマは、最新の建築周辺領域の小ネタと雑感です。
週1(毎週末更新)が目標で、それで書ける範囲の更新ということで、しばらくやってみます。

守秘義務の関係上、具体的な事件については触れられませんが、
裁判所がああ言った、国交省がこう言った、けど、豆蔵はこう思う。という具合に、
備忘録みたいにブログに形跡を残しつつ、
建築や法律の世界の方々とちょびっと世界を共有できたらいいなあ、と思っております。

皆様よろしくお願いいたします。

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