建築弁護士・豆蔵つれづれ

一級建築士・弁護士・豆蔵自身の3つの目線で、近頃の建物まわりネタを語ります。

マタハラ判決を絵に描いた餅にしないでほしい。

2014年10月26日 | 裁判
ケンチクベンゴシの豆蔵です。

何かを変えようとする場合に、形や呼び名から入るのはよくあることですが、
なんでも愛称を付けるというのは、どうなんでしょうか?
女性技術者を増やしたい建設業連合会は、「りけじょ(理系女)」や「どぼじょ(土木女)」に対抗して、
建築女の愛称「けんせつ小町」というのを決めたらしいです(苦笑)。

このビミョーな呼び名を付けるくらいなら、
「大和たてしこ(女子)」と「大和タテル(男子)」で良いのではないかと、
仲間内で妙な盛り上がりをしていた今週ですが、
一方、働く女性にとって注目すべき最高裁判決がありました。

妊娠後の降格が認められるには、「事業主の適切な説明と本人の十分な理解が必要」とし、
判決の事案では「不十分な説明しかなく、本人は復帰の可否が分からないまま渋々受け入れたにとどまる」として、
雇用者側が主張した本人の同意を否定したとのこと。
地裁・高裁が認めていた雇用側の広い裁量を否定した判決と評価されているようです。

判決自体は画期的で、問題提起としては素晴らしいと思うのですが、
実際の職場に当てはめると、なかなか根深い、難しい問題がありそうです。


建築の世界は、昔から「男の世界」などとか言われていますが、
現場以外の設計などの領域では、女性技術者も数多く働いています。
現場の女性も、数はそう多くありませんが、昔ほど特別なことではなくなってきました。

女性も、仕事だけしている分には、男女に大きな違いがあるとは思えないのですが、
(少なくとも、豆蔵はそう思っていました)
月60時間、現場などでは100時間を超える超過勤務が当たり前の状況で(今は違うんですかね?)、
妊娠・出産・子育、さらには介護などをこなしていくのは、本人も、そして周りも大変であることは間違いありません。

結局は、女性だけでなく、
男性も含めた全ての労働条件、労働環境の向上がなければ、単に絵に描いた餅だなあ、と思ったわけです。


このような問題は、建設産業に限った話ではないですね。
こっち世界もそうだと思うんですが、ま、この辺で。

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太陽光発電にやってきた急な「曲がり角」。

2014年10月20日 | 小ネタ
ケンチクベンゴシの豆蔵です。

太陽光発電の普及・拡大が、今、揺らいでいます。
2年前から始まった電力の固定買取制度の不備とそれによる歪みが、早くも露呈した形です。

買取枠だけ確保して発電を開始できないブローカーの暗躍や、電力会社の接続保留などのトラブルは、
以前から問題視されていましたが、
先月末から、買取の新規契約を中断するという発表が各電力会社から相次いでなされ、いよいよ曲がり角に来た感じです。
経産省も、制度の見直しを急ぐとのこと。

今のところ、一般家庭への影響は限定的ですが、今後の設置に関する買取価格の大幅下落は必至でしょう。
太陽光バブルがはじける、といったところでしょうか。

そもそも、
太陽光で発電した電力は突出した高価格で買取られ、発電枠を確保すればボロ儲けという状況、
そして、その分は電気料金の上乗せで一般家庭にツケが回されるという制度自体が、
かなりおかしな話でした。

太陽光バブルによる乱開発は、新たな環境破壊を生じさせています。
山の上手が丸坊主にされ、土石流が心配だという相談もありました。
他にも、風力発電も、低周波騒音が問題になっています。
エコカーだって、環境負荷にバッテリーの廃棄が考慮されているのか、疑問アリです。


太陽光問題について本気で相談がある人は、ウチに太陽光ベンゴシ?がいますので、聞いてください。

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液状化の事業者責任が否定された判決

2014年10月13日 | 裁判
ケンチクベンゴシの豆蔵です。

東日本大震災後、建築や造成に関しても様々な裁判が行われているところですが、
その中でもとりわけ注目を集めていた浦安の液状化裁判で、先週、最初の判決が出ました。
(東京地裁平成26年10月8日判決)

住民側の請求棄却という結論です。

本件をかいつまんで説明すると、
今から20年以上前、昭和56年頃に木造3階建のタウンハウス(基準法的には長屋)を建築して分譲した三井不動産が、
住民(所有者)ら36人から総額8億以上の損害賠償請求訴訟を提起されたという事件です。
訴訟提起は、震災から1年弱経過した後の平成24年2月。

そもそも、三井不動産は昭和30年代の埋め立て自体にも関与している会社ですが、
この点は、本件では問題にされていないようですね(?)。

本件の裁判所の判断で注目すべきは、現時点では複数の報道からの分析になりますが、
不法行為における判断において、
本件地震の特殊性(揺れの長さ、被害の甚大さ)、
建築当時や本件地震発生前における一般的な住宅(小規模建築物)の液状化対策がべた基礎であること、
などを認定した上で、
本件地震による液状化被害の予見可能性を否定したことです。

まあ、少し乱暴ですが、カンタンに言ってしまうと、
戸建てレベルの建物については、べた基礎にしておけば大丈夫と言われており、その通りの対策はしていたが、
予想しないような特殊な地震が来て、その結果として重篤な液状化が発生してしまったのだから、
不法行為責任を負わない、
ということらしい。

一般に、建築事業者の過失は、建築当時の技術的知見(通常レベル)に照らし判断する、
ということになりますが、
この判決によれば、少なくとも、昭和56年頃の技術レベルから事業者の予見可能性は否定され、
さらに、本件地震が起きる以前であれば、予見可能性が否定される可能性がある、ということになりそうです。

中・大規模建築物の世界で設計をしている人には、なんとなく腑に落ちないかもしれません。
液状化の検討や対策は、中・大規模建築物の世界では当然ですからね。
豆蔵もかつてはそうでしたが、かなりのレベルの研究者などにお話しをうかがって、
中・大規模と小規模では大きな違いがあるのだと知りました。

本件裁判以外にも、三井不動産を相手取った同種の裁判が複数提起されているほか、
他の開発・建築事業者に対する裁判も多数行われているとみられます。

本件裁判は、不法行為の除斥期間(権利主張できなくなる期間)20年を経過した事案だったにもかかわらず、
単に除斥期間で棄却せずに諸々の判断を残していますので、
他の裁判への影響や、他の裁判との整合性なども、今後、非常に注目されるところです。

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マニアックな建築×法律の議論が楽しい。

2014年10月05日 | 小ネタ
ケンチクベンゴシの豆蔵です。

今週は、事務所でいろいろな企画があり、体力的になかなかヘビーでした。
全力で通常業務のカバーをしなければならないところですが、台風襲撃で、明日の朝の通勤電車はどうなることか…?

事務所企画の一つは、主に顧問先に向けたコンプライアンス系のセミナーでしたが、
その中で、普段、ウチの大阪事務所にいる土木の技術士兼ベンゴシと、昨今の建築的ニュースをネタに、檀上で議論をしました。

例えば、先週のネタであるマンションの杭未達問題や、一連の施工中の不具合事案、昨今の維持管理の問題など。
事前準備をする時間もあまりなかったので、かなりフリーな感じです。

技術士兼ベンゴシもゼネコン出身で、施工に明るいコンクリートの専門家。
その上、普段からセミナーも多数こなしているだけに、情報も整理されている。
「これってどないなってんねん?」
というストレートな疑問に答えてくれる。また、
「これ、おかしない?」(やや関西弁)
という豆蔵の意見にも、耳を貸してくれるのです。

法的責任が生じるためには、
不具合の具体的内容だけでなく、その内容が裁判所にどのように評価され得るものか?といった点が重要。
例えば、
基準法違反があるとして、それが、どの程度の問題(構造上の危険性など)なのか?

また、
その不具合がどのような原因で発生したと考えられ、誰がどのような注意義務を怠ったのか?
例えば、
その不具合が、設計の指示なのか、施工の単純ミスか、両者の連携が悪かったのか?

さらには、
きっと内実はこういうことだろうけど、裁判所にはこの主張は理解され難いのではないか?

等々。

そういうことを考えるのがベンゴシの仕事であり、自分の事件以外でも、日常的にそんなことを考えたりするのですが、
というか、
むしろ自分の事件以外の方が、利害関係がないだけに、自由に、色々思いを巡らすことが多いのですが、
そういった生のアイデアを軽くぶつけて、即座に帰ってくる相手というのは、そうそう居るものではなく。

ということに改めて気づかされた、豆蔵にとってはなかなか楽しい事務所企画でありました。

調停委員などをされている技術者の先生と裁判を離れた場所でお話しするのも、同じような理由で結構楽しい。
仕事ではなく、楽しいだけなら、なおいいのですが。

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