建築弁護士・豆蔵つれづれ

一級建築士・弁護士・豆蔵自身の3つの目線で、近頃の建物まわりネタを語ります。

大阪府北部地震

2018年06月18日 | 建築物の安全

建築弁護士の豆蔵です。

今日の朝、大阪府北部を震源とする大きな地震がありました。
被災された皆さま方に、お見舞い申し上げます。

大阪駅からほど近い「茶屋町」の計測地点でも、震度6弱が観測されたとのことです。
私ゴトですが、兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)の際、大阪市内は震度5強で、茶屋町の隣町の豆蔵自宅もひどく揺れ、非常に怖い思いをしました。
それよりも大きく、かつ、同様の断層からの直下型ですので、その衝撃を想像して身がすくみました。

小学校のブロック塀倒壊事故の映像は、衝撃的でした。
ブロック塀の倒壊は、40年前の昭和53年宮城県沖地震以降、広く知られるようになった問題ですが、
まだこのようなものがあるのか、しかも公共の建物(しかも小学校)に…という驚きと腹立たしさが、率直なところです。

塀は建築基準法違反だったとのことです。
映像によれば、コンクリートのプールの床レベル上にブロック塀が積まれているようで、崩落部分のブロックは8段(1.6m)です(高さについては追記参照)。
控え壁が見当たりませんので、塀の高さをブロック部分のみと仮定しても、原則としてアウトです。
また、道路からの高さが優に3m以上あることは、被害をより深刻にしました。

(追記)高さ制限2.2mに違反しているという報道があり、特定行政庁である高槻市の判断であればそうなのだと思いますが、
今回のようなケースでのブロック塀の高さの算定方法は、明確ではないと思っています。

学校は、建築基準法上の特定建築物として定期報告が義務付けられています。
(追記)点検の対象に塀という項目があったが、見過ごされてきたという報道がありました。

それ以外にも、少なからず危険性が指摘されていたのでは?と思わせる内容のものです。
事実関係は、次第に明らかになってくるでしょう。

古いブロック塀や大谷石積みの倒壊・崩壊は、地震時の危険の典型例ですが、看板や設備機器等の落下も恐ろしいです。
今回の地震でも、落下物の写真があちこちからアップされていますね。

地震がきっかけといえども、塀や擁壁、外壁や設備機器等が安全性を欠いていた場合、所有者は、土地工作物責任を負います。
「知らなかった」では済まされない責任です。

「今まで事故がなかったから大丈夫」という人が多過ぎる。
裁判所や相手方の弁護士さんにも、よく言われます。
事故が起きなかったのは、偶然に過ぎないのに。怒りを禁じ得ないですね。


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重層長屋の新しい規制について

2018年06月15日 | 法制度

建築弁護士の豆蔵です。
すっかり更新が滞っており、すみません。

最近の東京都の建築ニュースで気になったところ、重層長屋の新しい規制についてです。

現在、東京都のHPにて、「東京都安全条例に基づく長屋に係る建築基準等についての見直しの考え方(案)」というものに対するご意見募集が掲載されています。

東京都報道発表

長屋と共同住宅の違いは、建築物の部分(外ではない)に共用部分があるかどうかです。
現代版の長屋、特に重層長屋といわれる別の住戸が2階以上縦に積みあがるタイプのもの(⇔縦に積まないのがテラスハウス)は、実質的に、使用状況が共同住宅と変わりません。
ところが、長屋は、特殊建築物の規制を受けません。
防火・避難に関する制限が緩く、旗竿地(接道条件が悪い敷地の一種)であっても建てられる、目いっぱい容積・戸数を詰め込める、という特徴があります。
例えば、投資物件としては、非常に効率が良いのです。

都心の密集かつ狭小地には大規模重層長屋が続々と誕生し、近隣や確認申請をめぐるトラブル(最高裁平成211217日判決・新宿たぬきの森事件、確認の取消)も少なくありません。
個人的には、建築物の制限=私権の制限は過度であるべきではない、と考えていますが、
この種の開発については、市民の一人として、また、建築に関わる一人として、ストレートに胸が痛むというのが正直なところです。

旗竿地における大規模長屋の規制は、既に平成24年より世田谷区で始まっていますが、敷地が300㎡未満や戸数14戸までは対象にならないなど、多くが規制にかかりません。
今回の安全条例改正(予定)も、同様に、中大規模なものの規制に止まります。
現在予定されている建築基準法改正によって、接道の規制を条例で上乗せできるようになりますが(例えば、3階建以上、行き止まり道路に接する150㎡超の長屋など)、規制の網をすり抜ける物件はまだまだ減らないのでしょう。

ご意見募集に寄せられた都民の声、きちんと聞いて欲しいですね。


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