建築弁護士・豆蔵つれづれ

一級建築士・弁護士・豆蔵自身の3つの目線で、近頃の建物まわりネタを語ります。

結果=責任ではない。

2014年09月07日 | 建築物の安全
ケンチクベンゴシの豆蔵です。

職業柄、建物の安全性について取り扱う機会が非常に多いのですが、この安全性の評価というのが、なかなか難しいところです。

ちなみに、平成19年&23年の最高裁判決の規範では、
「建物としての基本的な安全性」を欠く場合に設計者・監理者・施工者が責任を負う可能性があるとしています。
そこで、
「基本的な安全性」とはなんじゃい?!
という話になるのですが、
建築当時の「建築基準法」を物差しとしつつ、構造体以外の非構造体に関しても、部材の落下など危険性を考慮しているという感じです。

ここで、ポイントとなるのは、
設計者・監理者・施工者の責任に関しては、「建築当時」が基準となること。
引渡しとともに手が離れますので、そこから先に発生した問題は建築主の責任、ということになります。

このように、責任の根拠となる瑕疵の有無の判断が「建築当時」となることから、
ベンゴシ的には、過去の法令をさかのぼるという作業が非常に重要となり、
毎年新しい基準法を購入しつつ、古いものは手元に残しておく必要がある、ということになります。
施行令レベルまでは、ネットなどでも調べられるようになりましたが、告示・通達となると、意外と大変なのだ。

地震の問題などでは、
結果が生じたことをもって、過去の建築の責任を問うという「後出しじゃんけん的」な訴えも多い。
気持ちは分かりますが、法的責任というのはそういうものではないのですよ。

ところで、こうした話をしたきっかけは、ここのところ
「震度5で倒壊の恐れがあるとされた耐震偽装物件は、東日本大震災で1件も倒壊していない」
というどなたかの発言(ブログ)が、あちこちで話題になっていたからです。

発言の趣旨としては、当時のマスコミの魔女狩り的な対応を非難するものだと理解しておりますが、
仮に本筋ではない例え話だとしても、上記発言は見過ごすことはできない。

結果として「倒壊していない」からといって、当時の評価は誤っていたことにはならない、という点と、
震度と建物が受けるダメージが必ずしも一致しないという技術的な基本事項を無視している点で、
弁護士と建築技術者の仕事の両方を否定された気がするのです。

後者の「震度と損傷」の点は、裁判でもしばしば問題になるところで、個人的には非常に興味深いのですが、裁判所など法律家には容易に理解しがたいようです。
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