建築弁護士・豆蔵つれづれ

一級建築士・弁護士・豆蔵自身の3つの目線で、近頃の建物まわりネタを語ります。

ロンドン高層マンション火災の衝撃

2017年06月15日 | 建築物の安全

建築弁護士の豆蔵です。

昨晩は、ロンドンの高層マンション火災の映像に、衝撃を受けました。

完全に、四角い炎の塊のようでした。
住民の方々の安否も気になりますが、建物自体が非常に危険な状態にあると思われますので、消火救援での二次災害が生じないよう祈るばかりです。

専門家からは、外壁が燃えて上へ広がっているようだという指摘がありましたが、
確かに、写真を見ると、パネルのように細かく区切られた外壁材が完全に炭化し、めくれあがっている部分もあります。

2年ほど前に、ドバイの超高層マンションで火災が発生した時も、同じように外側から燃え広がったようでした。
当時のブログで、日本の規制では同じようなことは想定されないが、マンションの手すりパネルから火災が広がった例があり(広島基町住宅火災)、
バルコニーにウッドデッキなどの可燃物を置くのは自殺行為ではないかということを書きました。
 当時の豆蔵ブログ

さて、今回の報道でも、「日本の規制は厳しいので、同じような火災はない」ということが言われる(ている)と思います。
日本の規制が比較的厳しいのはそのとおりで、同じような燃え方をする可能性は低いと思います。
しかし、やはり規制には穴があり、また、古い既存不適格、違法建築が大量に存在している現状では、想定外の事態が起こり得ます。
つい最近にも、糸魚川の大火があり、10日以上燃え続けたアスクルの火災があったところです。
これらも、本当に驚きでした。

特に問題だと考えるのは、
建築時からの違反建築物:確認申請と異なる工事を行い、検査を受けていない。又は、検査後直ちに、違法な改造を行う。…昔はザラでした。
建築後の改修、用途変更:確認申請を経ずに行う工事では、法令遵守の意識が全くない(なかった)。
です。

あるべき防火区画がない、というような違反物件に遭遇することもしばしばです。
特に、後者については発注者も設計者も施工者も、罪の意識が全くない時代が長く続いてきました(現在も?)ので、問題は重大です。

また、最近気になっているのは、防火材料の認定問題です。
告示で定められているオーソドックスな材料以外の新しい材料は、大臣認定を経て、防火・耐火材料として使用できることになりますが、
この認定で、後に不適合が指摘されるケースは、結構あります。

試験をかなりギリギリの状態でクリアしているので、国の抜き打ちチェックで少し条件が変わるとアウトになってしまったり、
そもそも、試験自体で不正が発覚することもあります。

さらに、こうした材料が必要な時間を持ちこたえた後、どうなるのでしょうか?
冒頭のロンドン、糸魚川、アスクルのような初期消火に失敗した場合、長時間、激しい炎に晒されるわけですが、
耐力材は別として、非耐力材・内外装材、建具などの場合、規定の時間を超えた以降の性能がどの程度担保されているのか、気になります。
(この辺は勉強不足なので、後で調べます。)

なお、報道で、「スプリンクラーは付いていなかった」というコメントがありますが(追記:当時は設置義務がなく、現在はあるとのこと)、
日本でも、共同住宅の場合は特例として、スプリンクラーの免除を受けているものが多い(特に少し前より以前のもの)と思います。
念のため。
「火災報知器が作動しなかった」という点は、まさに対岸の火事とは言えない事項です。
防火扉・区画と一緒に、改めて点検いただきたい項目です。

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