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なかなか勝てない馬がいる。今日もその馬が走る。
がんばれ、と声が出る。
まなざしは、ゴールの先を見つめている。

山頂の憩い  深田久弥/著

2021年07月02日 10時54分23秒 | 深田久弥


日本は名山に事欠かない。日本の山は、森林あり、渓谷あり、高原あり、火山あり、褶曲山脈あり、秩父古成層あり、石灰岩あり―その千差万別の美しさと品格、古い歴史で、山好きの心を魅了する。名著『日本百名山』以降も山登りを続けた著者が選んだ、さらなる日本の名山二十余を収録する。脱稿からわずか三日後、忽然と茅ヶ岳で逝った著者の、最後の自選山岳紀行エッセイ集

『日本百名山』その後
京丸山
黒姫山
日野山と木ノ芽峠
知床半島
鳳来寺山
弥彦山
秋の北アルプス
奥鬼怒
二上山〔ほか〕

春風駘蕩;しゅんぷうたいとう;といった日だった。

鮭は普通の大きさで一尾2,500円、それが一日に3,000尾も獲れることがある。
しめて750万円、だからこたえられねえ大バクチですよ、
と知床鍋をつつきながら語る。
しかし費用も大きい。
網や漁夫代などくるめて2、3000万はかかる。
その網がシケで流されると大損になる。

しかし11月の寒波が大漁をもたらすことがある。
その代わりシケの危険も大きい。
が、シケがなければ大漁はない。
その二律背反が大バクチなのだろう。

しかし、国後島のはるか北に、純白の三角錐が潔く屹立しているのを見つけた時、私は思わず息をついた。おお、チャチャヌプリ、あれがチャチャヌプリでなくて何であろう。
標高1,827m、戦前から私の憧れていた山であった。羅臼岳

ニペソツは、高く、鋭く、そして気品があった。
峨々たる岩峰をつらね、その中央に一際高くピラミッドが立っている。
豪壮で優美、天下の名峰たるに恥じない。

広大な雨竜沼湿原を行きつくして、南暑寒岳の登りになる。
急なのか、ゆるいのか、なんだか要領の得ない長い登りであった。

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