N ’ DA ”

なかなか勝てない馬がいる。今日もその馬が走る。
がんばれ、と声が出る。
まなざしは、ゴールの先を見つめている。

百名山以外の名山50  深田久弥/著

2021年07月09日 13時05分51秒 | 読書・登山


まだまだ素敵な山がある。「ただ私はそれらの山を眺めただけで、実際に登っていないという不公平な理由で除外したことは、それらの山に対して甚だ申しわけない」と名著『日本百名山』の後記に書きつけた深田久弥が贈る、北はニペソツ山から南は桜島山におよぶ50の名峰紀行。

礼文岳
ピヤシリ山
音更山と石狩岳
ニペソツ山
暑寒別岳
芦別岳
ニセコアンヌプリ
チセヌプリ
駒ケ岳
大千軒岳〔ほか〕


ニペソツ山;2,013m
ニペソツ、ウペペサンケと並んだ山に前から心を惹かれていた。
まずアイヌの名前がいい。
北海道では2,000mを越える山は数えるほどしかない。
その高さもいい。
『日本百名山』を出した時、私はまだこの山を見ていなかった。
ニペソツには申し訳なかったが、その中に入れなかった。
実に立派な山であることを、登ってみて初めて知った。

私たちは郊外の「鈴欄公園」へ行った。
その小高い丘から、広々とした十勝平野の彼方に見えるはずの日高山脈が、残念ながら雲に隠れていた。

奇麗な三角錐のラッコ岳というのが、妙に私の印象に残っていた。

十勝川は、音更(おとふけ)川、札内川、士幌川の3つの支流を容れている。

音更川を堰きとめて作った青い湖水の糠平(ぬかびら)湖。
湖畔には糠平温泉がある。
帯広からの士幌線が十勝三股まで延びている。
(上士幌町鉄道資料館)

流れるガスぼ間に隠見するニペソツは、高く、そして気品があった。
峨々たる岩峰をつらね、その中央にひときわ高く主峰のピラミッドが立っている。
豪壮で優美、天下の明峰たるに恥じない。


辛い登りを慰めてくれたのは、そのあたりでしきりに出没するナキウサギであった。
ネズミを大きくした形で耳の長いこの小動物を、私はヒマラヤの4,000mの高地で見たことがある。雪男はこれを餌食にしていると伝えられる。
チチチと鳴きながら、岩の間の穴から顔を出す。
チョコチョコ走ってすぐ穴に隠れる。

小天狗を過ぎて、前天狗と呼ぶガラガラの岩山の斜面では、シマリスの遊んでいるのを見た。


今回の舞台は、北海道東大雪の主峰104座目ニペソツ山。
石狩岳に続き二日連続の登山に挑む田中。
残雪で不明瞭な道を登っていくと、巨大なピラミッドのような険しい岩峰が田中の眼前にそびえていた。

芦別岳;1,726m
北海道の山はたいていなだらかな稜線を持つ鷹揚な山容である中に、芦別岳はこごしい岩根をもって知られている。北海道の谷川岳とも言われ、道内のロック・クライマーを集めている。

行手に芦別岳が鋭い岩の穂を現した時には、思わず歓声をあげた。
それはピラミッドと言うにはもっと細く、犬歯のような鋭さで立っていた。

読者登録

読者登録