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なかなか勝てない馬がいる。今日もその馬が走る。
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まなざしは、ゴールの先を見つめている。

岩石と文明 25の岩石に秘められた地球の歴史 上

2021年07月25日 13時17分51秒 | 読書・地理地震


どんな岩石にも物語があり、地球の歴史を読み解く貴重な証拠に満ちている。岩石や地質現象が秘めている魅力的な歴史的・文化的背景、それらが人間の地球に対する考え方や暮らしをどう変えたのかを、地質学の謎解きに魅入られ翻弄された人びとの逸話をまじえ、主な岩石・有名な露頭・重要な地質現象に焦点をあてて解説する

火山灰―火の神ウルカヌスの怒り‐古代都市ポンペイの悲劇
自然銅―アイスマンと銅の島‐銅をめぐる古代の争奪戦
錫鉱石―ランズ・エンドの錫と青銅器時代
傾斜不整合―「始まりは痕跡を残さず」‐地質年代の途方もなく膨大な長さ
火成岩の岩脈―地球の巨大な熱機関‐マグマの起源
石炭―燃える石と産業革命
ジュラシックワールド―世界を変えた地質図‐ウィリアム・スミスとイギリスの地層
放射性ウラン―岩石が時を刻む‐アーサー・ホームズと地球の年齢
コンドライト隕石―宇宙からのメッセージ‐太陽系の起源
鉄隕石―他の惑星の核
月の石―グリーンチーズか斜長岩か?‐月の起源
ジルコン―初期海洋と初期生命?ひと粒の砂に秘められた証拠
ストロマトライト―シアノバクテリアと最古の生命
縞状鉄鉱層―鉄鉱石でできた山‐地球の初期大気
タービダイト―ケーブル切断の謎が明らかにした海底地すべり堆積物
ダイアミクタイト―熱帯の氷床とスノーボール・アース

1944年のベスビオス火山の噴火
そのときにはイタリア侵攻に参戦した連合軍のB25爆撃機も巻き添えになっている。

紀元79年の大噴火ののち、ポンペイとヘルクラネウムは地図から抹消されてしまった。
紀元203年と472年にベスビオス火山は大規模な噴火を起こしている。

この70年間、ベスビオス火山は比較的静穏を保っている。
しかしこれまでの噴火の歴史をみると、ベスビオス火山が地上で最も活発で危険な火山のひとつであることは明らかである。にもかかわらず、なお100万人が山腹で、麓には300万人が暮らしている。もし紀元79年のような噴火が起きたら、破滅的な大惨事が起こることは疑いない。

「エッツィのアイスマン」
ミイラ化した古代人は5,300年前に生きていた人間。
アイスマンの持ち物の中で最も貴重なものは純度99.7%の銅製の刃がついた斧。
一方、彼の頭髪からは多量のヒ素が検出されており、彼は銅の精錬に携わっていたと思われる。

キプロス島は「銅の島」
「Cu」

ブラックスモーカーは鉄、亜鉛、鉛、マンガンやその他の金属の硫化物を自然に濃縮する。

銅とまぜられた錫;5~20%の錫と残りが銅は、当時どんな金属よりも硬く、しかも銅や錫よりも成型が簡単だった。その青銅という合金をつくるのに錫が欠かせなかったので、古代世界では錫は計り知れないほど重要だった。この最初の合金は、人々を青銅器時代へと導いた。

ナポレオンが考案した錫の缶詰
1700年代から1800年代、錫は青銅器製の武具ではなく、鉢、カップ、皿、調理用具、を製造するために大きな需要があった。
しかし最大の需要は、空気を遮断した容器に食品を密封するのに必要不可欠だった「錫の缶」や「錫の薄膜」(錫箔)での使用にあった。現に錫は戦争の方法を変え、1700年代から1800年代の巨大帝国の出現を可能にしたといわれている。
錫缶は陸軍や海軍の長い航海や作戦行動中の食料供給を可能にした。
十分な食料を入手することはつねに戦略上の課題で、実際に錫缶はナポレオン・ボナパルトの要請で考案された。ナポレオンの有名な言葉に「腹が減っては戦ができぬ」というものがある。

錫は簡単に溶け、鋳型にはめ、加工するのが容易な金属だったし、腐食しなかったので、多くの他の道具や製品に使われた。アルミ箔が普及する前は錫箔が容器を密封するために使われる主要なタイプだったし、錫箔は電気製品にも使われていた。

ペルーとボリビアで巨大な錫鉱脈が見つかり、20世紀の大半にわたってこれらの地域を錫王国にした。やがて、大きな埋蔵量をもった錫鉱床が中国、オーストラリア、マレーシアなどで発見された。巨大錫鉱床がコンゴで発見された。

錫の採掘はつねに危険で、汚く、辛い作業だった。
港内作業員は短命だった。

ほぼ2000年もの間、地球の起源と歴史についての指針として、聖書の文字通りの解釈にほとんどの学者たちは従っていた。1700年代の半ば以降でも、博物学者たちは、地球は完全無欠かつ永遠不変の存在で、しかもその年齢はわずか2,000~3,000年でしかないと思っていた。
キリスト教の教理によると、地球は完璧であり、未来永劫にわたって変化しない存在であるはずである。

1700年代後半、学者たちは岩石、地層、化石の個々については多くのことをすでに知っていた。しかしまだ地質学には普遍的な理論はなかった。その障害のひとつは、創世記についてのアッシャーとライトフットの解釈に従って、地球はわずか6,000年前に誕生したという考えがなおも広く支持されているところにあった。

「火山は迷信を信じる人々を畏怖させるために、また彼らを迷信信仰と熱愛に陥れるために生まれたのではない。火山とはいわば地下にあるかまどの排煙孔なのである」
ハットン

ライエル「地球は巨大な熱機関だ」

薪のように燃える黒い石ーー石炭
紀元前4,000年、中国では早くも人々が地面から石炭を掘り出していた。

マルコ・ポーロは1271年から1295年にかけて中国で歴史に残る旅行をして、中国人が「薪のように燃える黒い石」をどのように使っているかの話を国へ持ち帰った。石炭が豊富に採れたので、人々が週に3回温かい風呂に入ることができるのを見てマルコ・ポーロは驚いている。

産業革命はイギリスで発展したので、最初に大規模な石炭開発に着手したのはイギリスだった。
1800年には、世界の石炭の83%がイギリスで採掘されていた。
最盛期の1947年には、イギリスの石炭産業では、イギリス全土の多くの炭田で75万人の炭鉱労働者が働いていた。
「炭鉱のカナリア」
炭素肺
ドイツのルール渓谷に炭田があり、近くから産する鉄鉱石と組み合わさって、ルール地方を重工業地帯にした。

石炭は産業革命を推進し、現在の世界を形成した燃料だ。
また石炭は地球の炭素の多くを地下に貯蔵した資源でもあった。

1896年、フランスのアンリ・ベクレルは放射能を発見し、1903年にはキュリー夫妻がラジウムのような放射性物質の熱が発生することを明らかにした。

ウランー鉛年代測定法

アーサー・ホームズは1950年には、現在われわれの推定値である46億年という年代値を得ていた。彼は「地質年代学の父」「地質年代スケールの父」として知られるようになった。
また彼は、1915年にドイツの気象学者アルフレッド・ウェゲナーによって提案されたが、なお議論が多い大陸移動説を全面的に取り入れた。この仮説は当時のほとんどの地質学者によって完全に否定されていたが、しかしホームズは証拠を見ていたーーアフリカと南アフリカの岩石が一致するのだ。

アエンデ隕石
メテオ・クレーター
キャニオン・ディアブロ隕石
史上最大のナミビアのホバ隕石
ケープ・ヨーク隕石
アーニギト隕石
アグパリリク隕石
ウィタメット隕石

キャニオン・ディアブロ隕石が45億4,000万年±500万年前のもので、それまでに年代が測定された最も古い物質mつまり地球の核の年代も45億年だということをパターソンは明らかにした。

デボン紀(4億年前)では地球の自転はかなり速くて、一回の公転運動の間(1年)に400回も自転(400日)しっていたのだった。6億年前、一日の長さは24時間でなくわずか21時間で、1年は430日だった。そして1億5,000年前、1年は380日だったのだ。

これは何を意味しているのだろうか?
地球は徐々に減速しているので、現在からおよそ200億年後のある日、地球は潮汐力で固定されて、地球の片側だけが月に面し、もう一方側からは月が見られなくなるだろう。
地球ーー月システム全体のエネルギーも減少し、そのため双方はゆっくりと離れていく。
月の衝突破片が最初に宇宙空間に飛び散ったとき、月は現在のわずか10分の1の距離しか地球から離れておらず、それ以後、ゆっくりと遠ざかりつつある。
5億年前、三葉虫が海底を這いまわっていた頃、月はもっと近くにあり、上空で大きく見えていたことだろう。その距離での潮汐力は非常に強力だったので、大きな潮汐力による本当の波が、地球上を伝播していたことだろう。
・・・ただし、それは何十億年も将来のことで、おそらく太陽がその前に爆発を起こし、内惑星(地球よりも太陽に近い水星と金星)を一掃してしまうだろうから、実際には起こらないだろう。

ダイヤモンドは商業的な価値は高いが、ジルコンは科学的な情報量がはるかに大きく、そのためジルコンはダイヤモンドよりも科学的には貴重なものになっている。
ジルコンは地質学者にとってはたいへん価値が大きい鉱物なのだ。
ジルコンはとくに冷却の最終過程にある花崗岩質マグマから、たいへん硬く、耐久性のある鉱物として形成される。

ジルコンはウランー鉛年代測定法または鉛ー鉛年代測定法、そしてフィッション・トラック法による年代測定に広く用いられる。

アカスタ片麻岩

スペリオル湖の鉄
は、アメリカの鉄鋼が無数の自動車やその他の機械とともに、大型建築、造船に使えることを意味した。

2014年、オーストラリアは4億3,000万トンの鉄鉱石を生産したが、そのほとんどはハマスレー地域の鉱山で採掘されたものだった。オーストラリアの鉄鉱山には240億トンの鉄鉱石が埋蔵されていると推定する地質学者もいる。
鉄に対する中国の最近の膨大な需要はオーストラリアの鉱山で生産できる量を超えている。

縞状鉄鋼層
が形成されたときの太古の海が無酸素状態であったに違いないことを証明している。

酸素が利用できるようになると、地球はたちまち劇的な変動の時代に突入した。
無酸素状態で生息してきた生物にとって、酸素のような活性が大きい分子の出現は死を意味したので、大酸素イベントは別名「酸素による大虐殺イベント」とも呼ばれている。

現在では、このような貧酸素状態に適応するバクテリアや菌類は、酸素に乏しく、水の動きが停滞した湖や黒海のような海の底で生息しなくてはならない。しかし23億年よりも前には、これらの生物が地球に君臨していたのだ。大気が酸素に富むようになると、彼らにとってそれはまさしく大量虐殺で、富酸素状態で生存できる菌類に地球を明け渡すことになった。

そこで厳しい疑問が持ち上がる。
地球の大気はどこで酸素を獲得したのだろうか?
答えは明快だ。それは光合成だ。
最初は藍藻類またはシアノバクテリアの光合成による酸素で、最終的には真核生物である本当の「藻類」が進化したときの酸素だ。

大きな謎は、シアノバクテリアの化石は35~38億年前に遡って知られているのに対して、大酸素イベントが23~19億年前に始まったという点だ。



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