明治、大正、昭和の文学者48人が遺した山にかかわるエッセー、紀行文、詩歌を集めたアンソロジー。文学を取り巻く時代背景と、登山の移り変わりの中で、作家たちは山をどのように見て、歩き、魅了されたか。文芸作品としてはもちろん、それぞれの山岳観や自然観照、登山史的背景、そして、自然を舞台とした文芸鑑賞への手引書としても興味は尽きない。
富士山(抄)落合貞三郎訳(小泉/八雲)
穂高岳(幸田/露伴)
山水小記(抄)(田山/花袋)
登山は冒険なり(河東/碧梧桐)
信州数日(抄)(伊藤/左千夫)
富士登山(高浜/虚子)
武甲山に登る(河井/酔茗)
女子霧ヶ峰登山記(島木/赤彦)
烏帽子岳の頂上(窪田/空穂)
高きへ憧れる心(与謝野/晶子)〔ほか〕
結城哀草果(あいそうくわ)
鳥海山西の裾野に干草刈る庄内娘(おばこ)の覆面あはれ
鳥海山は海のなかまで裾をひきさはるものなくそびえたまへる
安達太良連峰
鉄山(くろがねやま)の頂に押してくる雲に赤き蜻蛉らみだれつつとぶ
鬼面の尾根越し難くゐる雲が会津の湖(うみ)を恋ふといはなくに
安達太良の嶺にのぼりし月読はわが窓めぐり夜すがら照るも
朝日連峰
寒江山(かんこうざん)をのしゆきし雲が以東嶽中俣の崖を走るときのま
目下(まなした)に四方(よも)