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日本の山ができるまで 五億年の歴史から山の自然を読む

2021年07月10日 14時49分41秒 | 読書・地理地震


小泉武栄/著
出版年月 2020年1月

日本の山は多彩で、同じ風景の山は一つもない。これは日本の山が古くからの様々な年代の地質からなり、地質が異なると山容も植生も変わるからである。大陸から分離した後、日本列島では隆起が始まり、火山活動も盛んになった。本書は5億年の歴史を繙き、日本の山の地質・地形と自然ができるまでを俯瞰したユニークな試みである。山を愛する読者必読の一冊。

日本最古の鉱物、礫、岩石
日本列島の地質の生い立ち
日本の山地、山脈の形成
大陸のかけらの岩石でできた山々
五億年前の日本列島誕生のころの地質からなる山々
五億年前~三億年前の飛騨外縁帯などからなる山々
三億年前の石灰岩と変成岩―舞鶴帯、秋吉帯、三郡帯
二億年前~一億年前の付加体がつくる山々―美濃・丹波帯、秩父帯、足尾帯
手取層(礫岩層)にできた山々
一億年前~六〇〇〇万年前の領家帯と濃飛流紋岩からなる山々
一億年前の付加体・四万十帯からなる山々
四万十帯と同じころの地層や貫入した岩体からなる山々
北海道の山々の生い立ち
二〇〇〇万年前の地質からなる山々
一四〇〇万年前の火成活動でできた山々
一〇〇〇万年前以降の新しい地質でできた山や海岸
六〇〇万年前から三〇〇万年前の岩からなる山々
三〇〇万年前以降に活動した火山と隆起した山並み

光岳の名前の元になった光岩は石灰岩、
赤石岳の名前の元になった赤い岩は赤色チャート。
北岳などで見られる石灰岩や玄武岩。

付加体の考え方は、日本の地質学者;勘米良亀歳(かんめらかめとし)が提唱したもの。
地質学の革新に大きな貢献をした人物として特筆に価します。

プレートが集まると、超大陸ができます。
地球史においては6回の超大陸の形成が確認されている。
一番新しいのがパンゲア超大陸、その前がゴンドワナ超大陸。

早池峰山は古太平洋の海洋地殻が陸上に乗り上げたオフィオライトでできていると考えられており、5.1億年前という年代が出ている。

6億年前、南半球にアフリカ、南米、南極、インドが合体してロディニア超大陸

足尾帯の山;2億~1億年前の付加体・・・
足尾山地、帝釈山地、越後山脈の北部、飯豊山地、朝日山地、八溝山地、筑波山

日本列島がロシアの沿海州から離れて現在の位置に落ち着いた頃;1,500万年前、日本列島が移動した後の東北地方の日本海側は南北に延びる凹み、;半地溝帯ができました。
当時、東北日本では陸地は北上高地と阿武隈高地、飯豊高地くらいしかなく、秋田県や新潟県辺りは深さ1,000mを超える海の底だった。

飛騨山脈の隆起が300万前~140万年前、
赤石山脈の隆起が200万年前、
木曽山脈の隆起は50万年前

プレートの沈み込みに伴って地下100km付近と、170km付近の2箇所でマグマができるため、かつての鳥海火山帯と那須火山帯は意味がある。

早池峰山;1,917mはアポイ岳や尾瀬の至仏山、四国の東赤石山などと並び、日本有数の橄欖岩(蛇紋岩)岩体からなる。
橄欖岩は、岩石の中でもかなり特殊な火成岩の仲間。
火成岩の名前としては、安山岩、玄武岩、流紋岩、花崗岩。
火成岩の種類は珪酸の含有量の多さで決まっている。
珪酸とは白い色をした石英を代表とする鉱物。
珪酸が70%以上を占めるのは流紋岩と花崗岩で、岩全体が白く見える。
珪酸分が減少するにつれて岩石名はデイサイト、安山岩、玄武岩と変化する。
そして白い鉱物に代わって、角閃石、輝石などといった有色鉱物が増えるため、岩石は次第に黒味を増す。安山岩は灰色、富士山や伊豆大島で見られる玄武岩はほとんど真っ黒に見える。

橄欖岩は地下のマントルを構成していた物質がそのまま出てきたもので、珪酸の含有率は45%以下と少なく、黄緑色の橄欖石や黒い輝石といった有色鉱物が70%以上を占める。
また橄欖岩はマグネシウムの含有率が30~45%に達し、鉄、クロム、ニッケル、コバルトを含む。しかしカルシウムやリン、カリウムが乏しいという特色がある。

橄欖岩が地中を通過中に蛇紋岩化作用を受け、
鉱物中に水を取り込んで変質したものが蛇紋岩。


早池峰山は地質に特色があるばかりでなく、エーデルワイスの仲間であるハヤチネウスユキソウをはじめ、カトウハコベやナンブイヌナズナなど蛇紋岩植物の宝庫でもある。

早池峰山の橄欖岩はもともと古太平洋の海洋底の一部だったので、5.8~5.2億年前という極めて古い年代を示す。

登山口の小田越付近から山頂部を見上げると、低い方は森林に覆われているが、その先は、急に突コツとした橄欖岩の岩山に変化する。
森林限界を越えると、直径2,3mもある大きな黄褐色の岩の塊が見える。
これが橄欖岩の岩塊で、この斜面を岩塊斜面と呼んでいる。

2万年前の最終氷期のピークにあたる寒冷期には、北上高地は永久凍土のできるような寒冷な気候下にあり、橄欖岩の硬い岩盤が凍結破砕作用によって岩盤が大きく割れ、大きな岩塊を作った。岩塊は永久凍土の上をゆっくり滑ることによって現在の位置まで移動し、落ち着いた。

森林限界の低下の原因は、植物にとって有害な成分を含む橄欖岩の岩塊斜面にあると考えられており、森林限界は気候的に推定される高度より700mも低下している。
このため高山帯の領域が広がり、普通の山よりはるかに低い標高で高山植物に出合うことができる。

小田越からの登山道は最初、6~8mのオオヒラビソやコメツガの森をたどる。
ときどき真っ白な大理石の塊に出合う。
地質図によれば、この地質は小田越層という古生代石灰紀:3億5,890万年前~2億9,890万年前の地層で、砂岩や大理石はその地層が割れてできたもの。

1,396m付近で突然、大きな岩塊が累々と堆積した岩塊斜面に移行する。
移行部には高さ2mくらいの段差ができていて、そこにダケカンバが生えている。

早池峰山の植生は5合目で大きく変化する。
「ハイマツの海」

急な斜面には雪崩が頻発するため、丸いミノでえぐったような、特有の地形;アバランチシュートができることがある。

シナノバクテリアは、生物の進化の歴史の中で初めて光合成の能力を獲得した。
20数億年前、シナノバクテリアは光合成をさかんに行い、副産物として酸素の大量発生をもたらせた。酸素は上空に拡散していってオゾン層をつくり、紫外線を吸収するようになり、それが後に生物が陸上に進出することを可能にした。つまりシナノバクテリアは地球環境を大きく変化させた生物である。

飯豊山地は2,000m前後の山々からなる小型の山脈。
一部には足尾帯の岩石が出るが、ほぼ全体が花崗岩でできている。
亜高山針葉樹林を欠く典型的な山として知られており、三国岳付近では、氷期の氷河で形成されたツルツルに磨かれた岩盤を観察することができる。

飯豊山の偽高山帯の草原
:本来なら亜高山針葉樹林になるべき標高が草原や笹原で覆われている

手取層は、日本列島がまだ大陸の一部だったころに大陸に存在した、大きな湖に堆積した礫岩層。主に福井県と石川県に分布し、山としては白山と黒部五郎岳、荒島岳。

手取層は1億6,000万年前から1億2,000万年前の中生代のジュラ紀から白亜紀にかけて、ロシアの沿海州辺りにあった浅い海か大きな湖に堆積した地層。
恐竜の化石が出る。福井県の勝山ジオパーク。

ハクサンコザクラ
サクハンシャジン
イブキトラノオ
ハクサンフクロ
ハクサンイチゲ
ハクサンチドリ
ハクサンシャクナゲ
ハクサンボウフウ・・・ハクサンの名を冠した10数種。

白山の火山活動は40万年前に始まったとされ、14~15万年前には標高3,000mを超えて、日本の最高峰だったと推定されている。
5万年前からは現在の新白山火山が活動を始めたが、4,400~4,500年前には山体の東半分が崩壊し、標高は大きく低下した。その後も断続的に溶岩の噴出や水蒸気爆発が起こり、ピークがいくつもある現在の山頂部の地形を形成した。

白山に発する手取川は荒れ川で、流域の人々は水害に苦しめられていた。
1934年;昭和9年の手取川大水害。
高さ16m、周囲52m「百万貫岩」;4,800トン

手取層礫岩でできた山には、黒部五郎岳;2,840mと北ノ俣岳;2,661mがある。

荒島岳;1,523mは福井県東部の大野盆地に東側にそびえる独立峰。
1,200万年前に存在したカルデラ火山が、九頭竜(くずりゅう)川の浸食を受けて削られ、残った部分が現在の山体を構成している。
荒島岳の麓には湧水群で有名な大野市がある。
この町は能郷白山;1,617mに源流をもつ真名川がつくった扇状地の上に広がる。
地表から2~3mくらい下に地下水面がある。
「○○清水」には絶命危惧種のイトヨが生息している。

三波川帯の変成岩
濃飛流紋岩
領家帯の花崗岩からなる高山;木曽駒ケ岳2,956m:千畳敷カール

濃ヶ池カール;地形学者・大関久五郎によって日本で初めて指摘されたU字谷
伊勢滝

薬師岳は半独立峰。
6,000万年前に噴出した濃飛流紋岩でできている。

三陸海岸・浄土ヶ浜
5,200万年前に貫入してきた流紋岩がつくる景勝地。

1億年前の付加体・四万十帯からなる山々
南アルプス・北岳
キタダケソウ
キタダケカニツリ
キタダケケイチゴツナギ
キタダケデンダ
ハハコヨモギ
キタダケヨモギ

「草すべり」はわが国でも有数のみごとなお花畑で、
イブキトラノオ
ミヤマキンポウゲ
シナノキンバイ
ハクサンイチゲ
クルマユリ
クロユリ
ウサギギク
ミヤマハナシノブ

小太郎尾根に出ると明瞭な二重山稜の地形が目につく。
北岳山頂部付近ではチャートが広く現れる。
三角形に尖り、遠くからでも目立つ山。
「八本歯のコル」付近は北岳を代表する植物がもっとも集中して見られるところ。
「石灰岩植物」

仙丈ヶ岳山頂東側の藪沢の源頭(水源地)にできたカールとモレーン(氷河堆積物でできた土手状の地形)、とくにモレーンはゆるい円弧状に延びており、日本で一番美しいモレーン。

五葉山;1,351mは白亜紀の花崗岩からなる。
三陸海岸では一番高く、リアス海岸を展望できる。
山頂付近にはハイマツ、コケモモ、ガンコウランなどの高山植物が成育。

白亜紀の1億1,000万年前ごろ、北上高地は大陸東岸の浅海となり、そこに宮古層群という名前の地層が堆積した。この地層からはアンモナイト、三角貝、六放サンゴなど多数の化石が産出し、日本の白亜紀を代表する地層となっている。
岩泉町の茂師からはモシリュウと名づけられた恐竜の化石が発見され、日本での恐竜化石の皮切りとなった。

幌尻岳には七ツ沼カールがあって、美しく神秘的な風景。
すぐそばには戸蔦別(とったべつ)岳;1,959mは橄欖岩からなる。

佐渡島の南端に位置する小木海岸
枕状溶岩やピクライト質玄武岩



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