5回にわたった景福宮打令シリーズも今回が最後です。今日は全体の歌詞を見てみます。
漢語については漢字に直しましたが、漢字だけを見ても、なんとなく意味が分かるかもしれませんね。一応、私なりの大胆な意訳をつけてみたので、御参考下さい。
ほかの民謡同様、景福宮打令にも多くのバージョンがあり、それぞれ歌詞や順番が少しつづ違います。あと、我々が歌っているのは、全体の一部の部分。全体を歌うと10分ぐらいかかるかも.....
私が調べた中で最も長いものは25番(!)まで歌詞がありましたが、ここでは10番までということで。
1. 남문(南門)을 열고 파루(罷漏)를 치니 계명산천(鷄鳴山川)이 밝아 온다
南大門を開いて、時の鐘をつけば、にわとりが鳴いて山河が明るくなってくる。
2. 을축 사월 갑자일(乙丑四月甲子日)에 경복궁(景福宮) 이룩일세
1865年4月吉日に景福宮が建てられる。
3. 도편수[都遍手]의 거동(挙動)을 봐라 먹통을 들고서 갈팡질팡 한다
棟梁の様子を見よ。墨つぼ片手に大忙しだ。
4. 단산봉황(丹山鳳凰)이 죽실(竹實)을 물고 벽오동(碧梧桐)속으로 넘나든다
丹山の鳳凰が竹の実を加え、青桐の中に飛んでいく。(注:鳳凰は滅多なことでは実らない竹の実のみを食べ、アオギリの木にしかとまらないとされる。)
5. 남산(南山)하고 십이봉(十二峯)에 오작(烏鵲) 한 쌍이 훨훨 날아든다
南山十二峯にカラスとカササギのつがいがひらひら飛んでいく
6. 왜철죽 진달화 노간죽하니 맨드라미 봉선화 (鳳仙花)가 영산홍(映山紅)이로다
やまつつじ、つつじがねず(杜松)というなら、ケイトウ、ホウセンカはサツキだ。
7. 우광쿵쾅 소리가 웬 소리냐 경복궁(景福宮) 짓는데 회(灰)방아 찧는 소리다
ズドンズドンという音は何の音だ。景福宮を建てるために杵をつく音だ。
8. 조선 여덟도[朝鮮八道] 유명(有名)한 돌은 경복궁(景福宮) 짓는데 주춧돌 감이로다
朝鮮八道の有名な石は景福宮を建てるための土台の石になるとやら
9. 우리나라 좋은 나무는 경복궁(景福宮) 중건(重健)에 다 들어간다
朝鮮の良い木は景福宮の建てるためにつぎ込まれ
10. 근정전(勤政殿)을 드높게 짓고 만조백관(滿朝百官)이 조화(朝賀)를 드리네
勤政殿を高々と建てて、朝廷の百官が朝拝をする。
如何ですか?詩の内容については、また専門家の人の意見もお伺いしたいのですが、私が調べた範囲では、(音楽的なメロディーの解釈はともかく)、歌詞の詳しい意味について詳述した資料は見つかりませんでした。
歌全体の解釈としては、その4で紹介した大院君の野望を達成するために動員させられた民衆の恨みや大院君に対する皮肉が根底にあるという説と、景福宮再建にあたった人々を励ますための歌であるという2つの説が対立しており、どちらの説もそれぞれ説得力があります。
我々にとってはすっかりなじみ深い曲となった景福宮打令です。メロディーの解釈は音楽監督のパン先生にお任せするとして、歌詞の意味やその解釈について深く考える機会がなかったので、日本人向けのガイドブック等で取り上げられることの少ない話題や曲の背景等を含めて、私の理解するところを5回に分けて整理してみました。
合唱団の皆様の何等かの参考になれば幸いです。