第十三回 「テーマパークとは何か」の謎を解きました ② 仁川「地すべり資料館」の紹介
【( 8½ )総目次 】
さて、話をテーマパークに戻します。ここからは、テーマパークでの「アトラクションの思い出」の強化と「飲食」「おみやげ、記憶のよすが」について述べてみます。ところで、テーマパーク活性化の手法は、そのままで Society5.0などの社会システムの実装にも使えるように思います。
それで、一つの社会実装のアイデアを書いておきます。「仁川百合野町 地すべり資料館」という施設が兵庫県西宮市に あります。阪神・淡路大震災(1995年)で起きた地すべりの一つでは 西宮市仁川百合野町と仁川6丁目の家屋13戸が押しつぶされて、住民34名が亡くなりました。その災害事故の資料館として、この施設は その 2年後に建てられました。母の友人が地元のボランティアを組織され資料館の斜面にシバザクラを植えて庭園を整備されたので、私は見学に伺いました。
この施設では、当時の被害の説明と併せて、その後の対策工事、全国で記録された土砂災害の怖さ、そして防災対策の仕組みなどを展示物から学ぶことができます。1995年の 大震災で起きた この場所の「地すべり」の規模は、幅約100m、長さ約100m、深さ15m、移動土塊約10万㎥という大規模なものでした。特筆すべきは、展示されている全国で起きた土砂災害のフィルム映像の(迫力の有りすぎる)恐ろしさで、適切な対策が事前に必要だということが良く分かりました。
この「地すべり資料館」は展示内容が素晴らしいので、私は何度か 友人を誘って資料館を案内しています。皆さんも近くまでお越しの折は、ぜひ一訪をお勧めします。ただ、最寄りの駅から遠い(1.6㎞)ので その距離を歩くと着いた時に足が疲れてしまって、立ったままの見学が少し辛いという難点が ありました。アクセスが不便なままでは 来館者数に影響があると考えたので、その資料館についての告知方法をボランティアの皆さんには 次のように提言しました。
地すべり資料館は入場無料ですが、最寄りの駅(阪急線「仁川」駅)のタクシー乗り場から資料館までのタクシー代金 690円(中型車)を資料館の「入場料」と考えて頂こうと最初に考えました。約5分で到着しますが、3人で相乗りすれば バス代程度です。タクシー代をけちって 30分歩いて到着時に疲れているというのはディズニーランドなら入り口で足が疲れてしまっているのと同じで、見学どころではありません。幸い、資料館の展示物が充実していますので、気にならない金額ではないでしょうか。なお、資料館に駐車場などは、ありません。
さて、館内を見学してみます。域内のハザードマップが 六甲山の立体地図を中央に掲示されていますので、もし危険地帯に知人が住んでいるという方であれば、資料館の無料パンフレットをお知りあいの分も持ち帰って宣伝して下さるかも知れません。来館者がこの施設を訪問した「記憶のよすが」になりますので、無料パンフレットは切らさないように お勧めしておきました。常駐して説明して下さる方に お金の管理はご負担だと思いますので、DVDなどの高額の資料については、阪急線の乗換駅である「西宮北口駅」構内の書店などで扱って貰えないか相談してみてはいかがでしょう。災害のDVDなどを観れば、再訪時に新しい気付きがあります。しかし、無料パンフレットだけでも置いてあれば、なにも無い時と比べて「リピーター」の数に違いが出てくると思います。
ただ、資料館のリピーター対策をそれだけで済ませてしまうと、稲元さんが近著で指摘されている通り「アトラクションの追加が無い施設は自然減で、入場者数が対前年の 0.9掛け以下」に必ず減りますから来館者がどんどん減り、数年後には「閉館」してしまおうという話になりかねません。仮に、対前年比 0.9の入場者数までしか減らない自然減を仮定しても 6乗すると、0.53。つまり、テーマパークのアトラクションを 何一つ更新せず に 6年間過ぎると、入場客は半数以下 になって経営が維持できなくなるのです。
【( 8½ )総目次 】
さて、話をテーマパークに戻します。ここからは、テーマパークでの「アトラクションの思い出」の強化と「飲食」「おみやげ、記憶のよすが」について述べてみます。ところで、テーマパーク活性化の手法は、そのままで Society5.0などの社会システムの実装にも使えるように思います。
それで、一つの社会実装のアイデアを書いておきます。「仁川百合野町 地すべり資料館」という施設が兵庫県西宮市に あります。阪神・淡路大震災(1995年)で起きた地すべりの一つでは 西宮市仁川百合野町と仁川6丁目の家屋13戸が押しつぶされて、住民34名が亡くなりました。その災害事故の資料館として、この施設は その 2年後に建てられました。母の友人が地元のボランティアを組織され資料館の斜面にシバザクラを植えて庭園を整備されたので、私は見学に伺いました。
この施設では、当時の被害の説明と併せて、その後の対策工事、全国で記録された土砂災害の怖さ、そして防災対策の仕組みなどを展示物から学ぶことができます。1995年の 大震災で起きた この場所の「地すべり」の規模は、幅約100m、長さ約100m、深さ15m、移動土塊約10万㎥という大規模なものでした。特筆すべきは、展示されている全国で起きた土砂災害のフィルム映像の(迫力の有りすぎる)恐ろしさで、適切な対策が事前に必要だということが良く分かりました。
この「地すべり資料館」は展示内容が素晴らしいので、私は何度か 友人を誘って資料館を案内しています。皆さんも近くまでお越しの折は、ぜひ一訪をお勧めします。ただ、最寄りの駅から遠い(1.6㎞)ので その距離を歩くと着いた時に足が疲れてしまって、立ったままの見学が少し辛いという難点が ありました。アクセスが不便なままでは 来館者数に影響があると考えたので、その資料館についての告知方法をボランティアの皆さんには 次のように提言しました。
地すべり資料館は入場無料ですが、最寄りの駅(阪急線「仁川」駅)のタクシー乗り場から資料館までのタクシー代金 690円(中型車)を資料館の「入場料」と考えて頂こうと最初に考えました。約5分で到着しますが、3人で相乗りすれば バス代程度です。タクシー代をけちって 30分歩いて到着時に疲れているというのはディズニーランドなら入り口で足が疲れてしまっているのと同じで、見学どころではありません。幸い、資料館の展示物が充実していますので、気にならない金額ではないでしょうか。なお、資料館に駐車場などは、ありません。
さて、館内を見学してみます。域内のハザードマップが 六甲山の立体地図を中央に掲示されていますので、もし危険地帯に知人が住んでいるという方であれば、資料館の無料パンフレットをお知りあいの分も持ち帰って宣伝して下さるかも知れません。来館者がこの施設を訪問した「記憶のよすが」になりますので、無料パンフレットは切らさないように お勧めしておきました。常駐して説明して下さる方に お金の管理はご負担だと思いますので、DVDなどの高額の資料については、阪急線の乗換駅である「西宮北口駅」構内の書店などで扱って貰えないか相談してみてはいかがでしょう。災害のDVDなどを観れば、再訪時に新しい気付きがあります。しかし、無料パンフレットだけでも置いてあれば、なにも無い時と比べて「リピーター」の数に違いが出てくると思います。
ただ、資料館のリピーター対策をそれだけで済ませてしまうと、稲元さんが近著で指摘されている通り「アトラクションの追加が無い施設は自然減で、入場者数が対前年の 0.9掛け以下」に必ず減りますから来館者がどんどん減り、数年後には「閉館」してしまおうという話になりかねません。仮に、対前年比 0.9の入場者数までしか減らない自然減を仮定しても 6乗すると、0.53。つまり、テーマパークのアトラクションを 何一つ更新せず に 6年間過ぎると、入場客は半数以下 になって経営が維持できなくなるのです。
ここで、地元ボランティアの「ゆりの会」が シバザクラを、資料館の斜面で育てていることの効果が出てくるように思います。ここは「桜見物の名所」として、県の広報誌や新聞などで宣伝されてもいますので、毎年4月下旬には約千人の見物客を周囲に集めています。皆さんも、桜見物でお出かけになっては いかがでしょう。シバザクラの季節に もし新規に入手した映像を常設映像と併せて上映できれば、出入りが自由なので、見物客にも歓迎されると思います。また、ボランティアの方々の高齢化も懸念され、行政による支援が望ましいことも感じました。
ところで、行きも帰りもタクシーでは芸が無いですね。帰りは ゆるい下り坂なので、同行された皆さんで一緒に駅まで歩きましょう。駅の近くには、関学の皆さん御用達の チーズケーキがおいしい喫茶店などもあります。
ところで、行きも帰りもタクシーでは芸が無いですね。帰りは ゆるい下り坂なので、同行された皆さんで一緒に駅まで歩きましょう。駅の近くには、関学の皆さん御用達の チーズケーキがおいしい喫茶店などもあります。
※ 直ぐに帰宅するよりイベント内容が記憶に残りやすい、と稲元さんが近著で解説しています。
画像借用元:https://tabelog.com/hyogo/A2803/A280303/28014210/dtlphotolst/smp2/
さて「地すべり資料館」は(当たり前の話ですが)テーマパークではありません。
でも、そのように「見立て」て来場者の「学術的な難しい説明が多いのでは ?」という心理的な しきい値を下げたほうが良いに決まっていると思います。例えば、東京ディズニーランド(TDL)が安定した経営を続けていて新しいパレードにも お金が掛けられるというのも、来場者の 9割が(関東圏を中心とする)リピーターだという事実に支えられているのです。ですから 高度な研究展示施設であることを強調するよりも「災害の展示/桜・飲食・パンフレット」のセットだ として展開を考えることで、来館者数の深刻な落ち込みが回避できる のではないかと考えました。これだけ貴重な資料を集めた優れた資料館ですので、
アクセスが不便なので「来館者数減のため」に閉館 という流れだけは避けたいと思ったのです。
ですから、テーマパークという「見立て」は誤解を招く可能性もあるかも知れませんが、効率の良い再訪者の獲得方法として様々な場面で生かせるやり方ではないかと思います。ちなみに、潜在的に地すべりの可能性がある場所で、兵庫県の県土整備部などが行なっている先進の地すべりを起こさせない 効果的な対策って何だと思いますか。答えは すごく明解です。地下に太いパイプを埋め込んで、地下水を定期的に(センサーで監視しながら)抜いてやるのです。資料館には、土中のパイプを示した詳しい模型も大きく飾られています。「仁川地区」は この方法で、地すべりが起きにくい土地に改良されており、専門家の定期的な監視も受けているので 安心して住める住宅地に生まれ変わりました。兵庫県が誇る防災設備だと思います。
でも、そのように「見立て」て来場者の「学術的な難しい説明が多いのでは ?」という心理的な しきい値を下げたほうが良いに決まっていると思います。例えば、東京ディズニーランド(TDL)が安定した経営を続けていて新しいパレードにも お金が掛けられるというのも、来場者の 9割が(関東圏を中心とする)リピーターだという事実に支えられているのです。ですから 高度な研究展示施設であることを強調するよりも「災害の展示/桜・飲食・パンフレット」のセットだ として展開を考えることで、来館者数の深刻な落ち込みが回避できる のではないかと考えました。これだけ貴重な資料を集めた優れた資料館ですので、
アクセスが不便なので「来館者数減のため」に閉館 という流れだけは避けたいと思ったのです。
ですから、テーマパークという「見立て」は誤解を招く可能性もあるかも知れませんが、効率の良い再訪者の獲得方法として様々な場面で生かせるやり方ではないかと思います。ちなみに、潜在的に地すべりの可能性がある場所で、兵庫県の県土整備部などが行なっている先進の地すべりを起こさせない 効果的な対策って何だと思いますか。答えは すごく明解です。地下に太いパイプを埋め込んで、地下水を定期的に(センサーで監視しながら)抜いてやるのです。資料館には、土中のパイプを示した詳しい模型も大きく飾られています。「仁川地区」は この方法で、地すべりが起きにくい土地に改良されており、専門家の定期的な監視も受けているので 安心して住める住宅地に生まれ変わりました。兵庫県が誇る防災設備だと思います。
ここまでで、① 「一つだけの入り口」と「地獄・天国」、② 「入場料」(アトラクション)「飲食」「物販」(記憶のよすが)について説明してみました。次回は、③「説得するための Art」(プロパガンダとしてのテーマパーク)を解説します。映画や絵画では、テーマによって「歓喜・爆笑から慟哭(どうこく)まで」が誘発されることと同じように、メディアとしてのテーマパークでは プラスとマイナス両極端の感動が表現できると思います。