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表紙は、とりあえず借り物で、あの横山大観先生の「平沙落雁」です。
昨日・土曜日の、ブラタモリは「湘南」がテーマでした。神奈川県の三浦半島から静岡県の伊豆半島に向けて弧を描く相模湾はすべてフィリピンプレートによるもので、少しずつその沈み込みが東から西へと移動してきたそうです。
プレートの沈み込みがたまっていくと、土地の隆起につながり、いくつか地面は盛り上がった。けれども当然波は打ち寄せるし、浸食は進む。その中で残ったものが江ノ島であり、湘南のシンボルの烏帽子岩だ、ということでした。
今も沈み込みは続き、また土地の隆起が何万年というサイクルで続いているんでしょう。
その相模湾、松林からのぞいたり、わりと光がキラキラしたりして、中国の「瀟湘八景」に似ている、ということで江戸時代の俳人さんが、命名し、「湘南」と呼ぶいい方が生まれ、その命名の地が相模湾の真ん中の大磯にあるということでした。
相模地方の海は、いつの間にか中国の南の方の風景に擬せられていたわけですね。
あのキラキラした海と、絵のテーマである「瀟湘八景」は全く似ていませんが、どちらが本物なのか。
たぶん、洞庭湖とか、湘水・瀟水という地域に行ってみたら、水墨画の世界とは似ても似つかない世界があることでしょう。
時々、絵のテーマは自己目的化して、現実はどうあれ、自分たちの勝手な絵の世界になっていくんでしょう。
そうでした。雪舟さんの水墨画も、ちっともリアルじゃなくて、超現実の世界です。
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というわけで、新聞屋さんにもらった県立美術館の日本画特集に行きました。
リフォーム中の滋賀県立近代美術館の作品もたくさんあって、曽我蕭白さん(江戸時代)、竹内栖鳳さん(近代)などの作品をあれこれと解説がついていて、それを見ながらゆったり見ていました。
下絵や、襖絵、材質・画材・技法などを説明しているようでした。そこである程度満足していたんです。そして、最後の部屋が横山操という人の「瀟湘八景」でした。
これらの絵はこの美術館で何度も見たことがありました。ただでさえボンヤリと霞んでいる絵なのに、いつ見ても大きなボンヤリした絵でつまらないと、いつも素通りしていた作品でした。「全く無駄な空間を使いやがって」と毒づいていたのです。
ところが、今回はどうでしょう。
すべてが薄暗い部屋に置かれ、スポットライト一つで浮かび上がらされていた。
もう絵が何やら語り掛けているのが聞こえてくるような展示でした。これらの絵は、こうした薄暗い部屋で、静かに見せてもらうものだと、びっくりするくらい目が覚めたのでした。
今まで私たちは、まるで作品を見ようとしていなかったし、展示もただそのままを見ろ、という無愛想な展示でした。ガラスケースごしだったかな。ふつうの灯りで白と黒の線と塗りたくったところとのコントラストも、何も伝わって来ていなかった。
でも、今回は、ガラスなしで、一本の光だけで、あれこれと工夫を凝らして描いたというのを解説した上で見せてくれていて、古典的なテーマに挑んだ、1963年の現代の水墨画であったのだと教わりました。
これから、機会があるたびに、こういう展示をして、県内外の人に、県立美術館の宝を味わってもらえたらと思いました。
いつまでもそこにいたい気になりました。静かで安らかな空間がそこにあった。
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★ うまく語れてないけど、とにかく感動しました。それが1963年の作品であり、やっと今、展示する方法が見つかった。これから、少しずつファンを増やして、曽我蕭白さんと、元永定正さんと、榊獏山さんと、その次くらいの目玉にして、あちらこちらから人々を引き寄せなきゃいけないです。
そのきっかけ、県立美術館は見つけたんですね。えらいです!
★ 横山操という人を少しだけ検索してみました。適当なのを借りようと思って、あれこれ見ていたら、三重県立美術館の演出法が変わったというのもあるけど、私の趣味も変わったのかもしれないと思いました。
不染鉄さんといい、横山操さんといい、画面をまっすぐに横にスパッと切ってから、画面を構成するやり方、そこにやたら引きつけられている自分を感じました。オッチャンは横にスッと一本線が入れられていると、何だか安心してしまうんだろうか。それはある気がする。
うちの奥さんなんかはまるで何とも思わない横長の画面、私は吸い込まれるように気に入ってしまうんです。不思議です。(2019.2.4 立春)
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