甘い生活 since2013

俳句や短歌などを書きます! 詩が書けたらいいんですけど……。

写真や絵などを貼り付けて、二次元の旅をしています。

モテ男の皮肉

2021年01月06日 20時21分17秒 | 本読んであれこれ

 こんなこと書く人って、ナルシスト? 変人? モテる男? とにかく、私ではありません。ああ、ザンネン!

 童貞――どうもこいつがいけない厄介物(やっかいもの)なんだ。惜しくはない荷物なんだが、そして薄暗い裏路(うらみち)や橋の上を歩いている時にちり箱か大川に捨ててしまえばなんでもなかったんだが、こう花やかな電灯の鋪石道(しきいしみち)に出てしまったんでは、どうも捨て場が見つかりにくいではないか。

 それに、女があの荷物には何がはいっているんだろうと珍らしそうに眺めたりすると、ちょっと顔が赤くなるではないか。それからまた、まあここまで重い思いをしてぶら下げて来たというだけでも、道端の犬にはやりたくない気持ちがするではないか。

 この人、「童貞」というお荷物を抱えているそうです。できればそんなのどこかに捨てたいと思っているけれど、なかなか捨てられない。でも、女の人たちは集まって来るみたいですよ。



 しかし、この頃のようにいろんな女に恋をされてみると、雪を食った高下駄をはいて歩くような不自由さを一層絶え間なしに感じる。跣(はだし)になって雪の上を走りまわったら、さぞ気持ちが軽々とするだろうな。――こんなことを彼は考えている。

 裸足になって、もっと自由に女の人の上を飛び歩きたいと言ってるの? それは楽しいのかもしれないけど、何だか大変なことですよ。

 ある女は、彼の枕元につっ立っていたが、突然荒々しく膝を落として、彼の顔の上におっかぶさりながら、彼の匂いを吸い込んだ。

 またある女は、二階の縁の欄干(らんかん)にもたれている時、突き落とす真似(まね)をして肩を押した彼に思わず抱きついたが、彼が手を離すと、もう一度自分で落ちそうな姿を見せて欄干に身を反らしながら、自分の胸を見つめて彼を待った。

 またある女は、風呂場で彼の背を流しているうちに、彼の肩をつかんでいた片手をぶるぶるふるわしはじめた。

 この三人の女の人でいくと、二番目の女の人がかわいい気もするけど、少しずるいなあ。男もずるいです。そんな恋愛遊戯じゃなくて、ちゃんと好きなら好きというふうにしてもらいたいです。まあ、もてない男のひがみですか。

 好きなんじゃなくて、とにかく一緒にいたら、落ち着くだけだったんだろうか。



 またある女は、彼と座っていた冬の座敷から唐突にさっと庭に飛び出して、あずまやの長椅子に仰向けにひっくり返りざま両肘で自分の頭を固く抱いた。

 またある女は、彼が戯れにうしろから抱くと、動かなくなってしまった。

 またある女は、床の中で眠ったふりをしている時彼が手を握ると、唇をうんとつぐみからだをこわばらせて反り返った。

 この三人は、何だか悶々として抱えているものがありますね。うまく行ってないのかな。まあ、そういう女の人との時間があるのはいいですけど、若いうちだけだよ! 私には関係ないけど。



 またある女は、深夜彼がいない間に彼の部屋に縫物を持ち込んで石のように座りながら、彼が戻って来ると、耳まで赤くして、電灯をお借りしていますのよ、という奇妙な嘘を喉(のど)にひっかかるしゃがれ声で言った。

 またある女は、彼の前でいつもじめじめ泣いていた。

 もっと若いたくさんの女が、彼と話しているうちにだんだん感情的な身の上話に落ちて行って、それから一言も言わなくなると立ち上る力を失ったようにじっと座った。

 この三人は、遊ばれているというのか、一生懸命に自らの気持ちを示そうとしているのに、彼がちゃんと相手をしてあげていない感じです。そして、イジワルするのを楽しんでいる感じ。女の人がしおらしくしているのが好きだったという話だし、きれいな女の人と一緒にいるのが楽しかったということでした。結婚したのかな? 家族もいたんだろうけど……。



 ――そして彼は、いつもその時が来ると白く黙ってしまった。でなければ、きまって言った。

「私は生活を一つにしようと思う女の方からでなければ感情をいただかないことにしています。」
 彼が二十五になると、こういう女がますます多くなった。そしてその結果は、彼の童貞を包む壁がだんだん厚く塗り立てられることであった。

 女性からたくさんのアプローチがあったのに、すべてを弄び、誰かひとりに決められないモテる男がいたんですね。そして、結婚したい女の人が見つからなかった。遊びで付き合ってもよかったのに、まあ、そこは真面目なのかな。



 しかし一人の女は、彼のほかの人間の顔を見るのも厭(いや)になったと言い出した。ぼうっと日を送るようになった。養ってやらなければこの女は飢え死する、と彼は思った。すると、生活を一つにせずに、感情をもらわずに、そして養ってやらねばならない女の数がだんだん殖えて来そうな気がした。彼は笑った。
「そうすれば、少ししか財産のない自分は間もなく破産するだろう。」

 こんなにモテていたら、自分から誰かを好きになることがなかったのかな。そう、彼は自分が愛した人がいなくなるのがとても怖い人だったんです。彼が愛したとたんに、その愛された人たちは彼のそばからいなくなっていったんですから。そして、彼は天涯孤独になったんですから。

 愛は要らないから、たくさんの女の人たちに囲まれる生活、それが彼の理想だったのかもしれない。そして、好きになるのなら、真面目に好きになりたいのに、好きになりたい人が見つからない。そんな悩みを抱えてたのかな。



 その時彼は、相も変わらず童貞というたった一つの荷物をぶらさげて、乞食に出るのであろうか。みすぼらしい身なりをしながら、しかしもらうばかりで与えないため豊かになった感情の驢馬(ろば)にまたがって遠い国へ――。

 ――こんな空想を遊んでいると、彼の胸は彼の内の感情でいっぱいにふくらんで来た。しかし、生活を一つにしようと思う女はもうこの世に見つかりそうには思えなくなってしまっている。

 空を仰ぐと満月だ。月が明るいので月が空にたった一人だ。彼は両手を月に伸ばした。
「ああ! 月よ! お前にこの感情を上げよう。」

 彼は愛することを諦めて、孤独宣言したんですね。考えてみると、かわいそうなお話です。

 これは皮肉なんかじゃなくて、愛する人がいない哀しみみたいなものなんだろうか。

 どんなに愛想よく近づいてきても、彼にはすべてが見えてたんですね。そして、いろんな人を見送った後、自分もあの世に送ってしまったなんて! 昨日、本屋さんで岩波文庫の「雪国」買いました。「三国志」も読まなきゃいけないけど、「雪国」も読んでみたいと思います。


 この小説、川端康成さんの「月」という小説の全文でした。


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