
久しぶりに、「徒然草」を開いてみます。これも今年度中にまとめておきたいですけど、まあ、冊子にこだわる必要はないのかな。
私が「独立した個人性」について書いてあると思った章段です。もう一度見直してみます。
よろづのことは頼むべからず。愚かなる人は、深くものを頼むゆゑに、恨み怒ることあり。
よろづのことは頼むべからず。愚かなる人は、深くものを頼むゆゑに、恨み怒ることあり。
すべてのものごとというのは、誰かよそからの力というのをあてにしてはならない。愚かな人は、誰かを頼ってしまうところがあるから、あてがはずれてしまうと、恨んだり怒ったりすることになる。
物事において、よその力に頼ることはいけないと兼好さんは書いています。
でも、現実の世界において、私たちは何から何まで自力で生きていけるのかというと、全くそうではありません。全てにおいて、私たちは誰かの力で生かされている、というのを感じないわけにはいきません。
いや、むしろ、私たちは積極的に他者の力・おかげを感謝するように教育され、感じても来ているはずです。食事の時の「いただきます」「ごちそうさまでした」も、命を頂くという感謝の気持ちも、すべて私たちは誰かのおかげだったんです。
(け)んなことは分かってるよ、キミ!
(わ)あら、兼好さんじゃないですか。私たちって、誰かの力がないと生きていけないです。
(け)それをすべて了解して、それでも頼らないで生きるんだという決別宣言をしなくてはいけない、という意味なんだよ。
(わ)はい、確かに自分で何でもやろうという気構えって、それは基本ですもんね。そうしないと、すぐ私たちってストレスがたまってしまうんだから、ある程度のわがままというか、自分のペースみたいなのは必要です。
(け)たとえば、権力があったとしても、そういったものは滅びやすいもんなんだよ。キミたち、目の前しか見えてないだろうけど、振り返ってみたら、そういうことってあるだろ。だから、プーチンさんだって、習近平さんだって、彼らの「ひとり権力」(独裁ではないのかな?)が永遠に続くように見えるけれど、いつかは終わるんだよ。財産は、もちろんすぐになくなる。学問は流行みたいなのがあって、乗り遅れたものはバカにされたりするだろう。そんなの必要ないなんて言われるぞ。
(わ)わたし、一応文学小僧のつもりなんですけど、努力が足りなくて、ボケボケのオッサンになってしまってますけど、文学は必要ないなんて言われてますね。でも、恋する若者には必要になったりしないかな。
(け)主君にかわいがられていても、ちょっとしたことで罰せられるもんなんだよ。家来というのも、利害関係だから、得にならないと思えば、すぐに逃げ出してしまうんだよ。他人の厚意も変わりやすいものだよ。約束なんていうものは、いつも心からしているというわけではないだろう。すべて利害関係だし、微妙な呼吸だし、相手と食うか食われるかの恐ろしいものなんだよ。
(わ)そうですね。自分である程度切り開いていく。そして、必要とあれば、仲間に声をかけて行く。または目で合図する、あのアイコンタクト、まるでサッカーみたいです。
個々の力で、相手ディフェンスにダメージを与え、混乱させ、仲間を呼び、それぞれの才能を生かすために、ミドルシュートのためのパス、へディングのためにクロスキック、もう少しタイミングをはかるために自分で相手ゴールに迫ってみるなど、いろんな突破の方法っていうのがありますもんね。

兼好さん、つづきはどうなってますか?
身をも人をも頼まざれば、是なる時は喜び、(a )なる時は恨みず。……中略……
自分も他人も頼りにしないでいると、その結果として、良い時には喜び、悪い(a)時には恨んだりしないですむ。
精神的な距離感として、左右が広いと、どこにも問題が起きない。前後が遠くであると、行き詰まることはない。ところが、前後左右が狭い時には、押しつぶされてしまう。
心を用ゐること少しきにしてきびしき時は、ものにさかひ争ひて(b )る。ゆるくしてやはらかなる時は、一毛も損せず。〈211段〉
心の用い方が狭く厳格であると、物に衝突して争いが起きて(b)れてしまう。逆に、心が寛大で柔和であると、少しも傷つくことはないのだ。
☆ [質問]空欄aには「是」の反対の一文字、空欄bには「損」と同意の一文字を考えてください!
(け)あいかわらず、そんな人の文章に乗っかったようなことしてるんだな。いい加減にしろよ、キミ。
(わ)いえ、これは文章の練習、どんなふうにコントラストを作りながら、文を書くかという、私自身の研究の意味でやってるんです。
(け)文章を研究とかなんとか言ってるが、それもすぐにイヤになって、ペイントでラクガキとかして遊んでるんじゃないのかね。
(わ)はい。それはもう、言い訳も何もありません。ひたすら反省です。

(け)「権力・勢ひ」、「金力・財」「学問・才」「やさしい人柄・徳」の四つが当てにならないと、私が挙げた例はどんなだったか、わかるかい?
選択肢は次の四つだよ。
ア・孔子も時にあはず。
イ・こはきもの、まづ滅ぶ。
ウ・顔回も不幸なりき。
ウ・顔回も不幸なりき。
エ・時の間に失ひやすし。
(わ)権力は当てにならない。偉そうにしていても、どんどん消えてしまうんだから、答えは「イ」ですね。
お金は当てにならない。すぐになくなってしまう。私はもともとお金ないけど、すぐになくなるんだから、「エ」ですね。
学問だって当てにならない。どんなに立派で優秀だった、孔子さんのお弟子さんの顔回さんだって若死にしてしまうんだから、「ウ」ですね。
そして、どんなに優れた人だって、人徳のある人をめざして体現されてた孔子さんだって、時流に乗れなかった。だから「ア」ですね。
(け)そういう風に書いてみたんだよ。
(わ)はい、権力・お金・学問・人柄、何があっても当てにはならない。でも、何かにすがるしかない私たちですもんね。
当てにはならないけど、当てにしなくてはいられない。それが私たちでもある。まあ、そういう自己矛盾を抱えながら、なるべく平和にのんぴり暮らしていきたいです。
