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七光台ピアノ教室での再会 その2

2014年08月07日 22時25分45秒 | 物語・小説
偉薙郎が見かけたのは、いつかに出会い、音信途絶となった会員制サイトで白黒縞と名乗る人物だった。
(人違いじゃないよな)
偉薙郎がもっとよくその人物を見ようとしたとき、ライヴが始まった。
「今日もお馴染みなメンバーがお揃いですね。今回も10曲ラインナップの予定で参ります。どうぞ最後までお付き合いのほど。それでは、一曲目は――」
主催者の七光台六実がいつもよりやや穏やかで落ち着いた感じで挨拶をし、グランドピアノを弾き始めた。
(マジ、それやんの?)
第1曲目は、有名番組のオープニングだった。とても、ピアノでやるようなものではなく、歌っているのは男性歌手なのに、音程を調整の上に演奏は始まり、七光台は歌い始めた。
(すごっ)
会場の空気が一気に熱を帯びる迫力とリズム感をもつを選曲しただけの事はある、と偉薙郎は思った上に、調整された音程と歌声が物の見事に合い、別曲の様にさえ聴こえた。それだけなものがあって、第1曲目演奏終了には盛大な拍手が贈られた。
どこかで聴いたことあるばかりを七光台はピックアップし、彼女なりのアレンジのもとに歌われた。一体こんな力はどうやって身に付けたんだよ、と偉薙郎はやや圧倒されていた。

「それでは、ここで、今回はゲストボーカルが来ておりますので、歌ってもらいたいと思います。河辺風実矢~」
何曲か七光台が歌った後、どうやら彼女の内々の関係者を呼び出した。
「何か一言言いなさいよ、ライヴなんだから」
姉御肌を突如と出す七光台と河辺と言う人のやり取りにまた違う雰囲気が生まれた。
「続いての曲は――ってあたしが紹介してもつまらないので、あんたやりなさい」
七光台はノリノリな感じだった。
やがて河辺から題名を告げられ歌われた曲は数年前の深夜アニメで使われたらしいものだった。偉薙郎は聞かない名前だな、と思いつつ、聴いてみると、それなりに悪くなかったが、なんでそんな曲を――と思っていた。しかも、元は女性のアーティストの歌だと言うのに、七光台の調整によりアレンジ化されたものだった。
(有り得ねーな)
偉薙郎はそうは思ったものの、決して悪い出来になっていなかった。
「どうもありがとうございました」
河辺は声と体を震わせてそう言った。
「次で最後になりますが、この中で多分知ってる人はいないと思いますが――」
河辺が紹介したものは、白黒縞が好きなアーティストで、今日この会場に居るあのアーティストのものだった。
(名前聞くのどれくらいぶりだ?)
と偉薙郎は思いつつ、白黒縞とそのアーティストを交互に見つめる中でイントロが始まった。

演奏が終ると河辺は一礼して姿を消そうとしたのを七光台が止めた。
「今の歌は彼のお気に入りシンガーの一番好きな曲だそうです。そんなシンガーの方が実は来てましたね」
七光台は、会場に居た女性シンガーを促すと紹介した。
河辺も白黒縞も固まっていた。
(予定外でも気づいてましたってパターンか)
偉薙郎はありがちな展開に静かに笑った。


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