会計業界戦線 異常アリ

インターネットの登場によって、顧客の流動化が進む会計業界。このブログでは、会計業界の変化を綴っていければと思います。

ルールの本質を見極める

2008-12-19 07:33:36 | 会計業界事情
日経ビジネスの12月8日号の「有訓無訓」で、元日本公認会計士協会会長の川北博氏の以下のコメントが掲載されていました。


◆『小手先での糊塗は命取り ルールの本質を見極めよ』

戦後、軍隊から帰って中央大学で学んでいた頃、手持ちの外食券を売ったお金で、大塚久雄先生の『近代資本主義の系譜』を買いました。今でも愛蔵するその本で、大塚先生は資本主義の精神には、「倫理的諸徳性」と「営利」が表裏一体の構造として包含されていると述べています。

今、世界で起きている金融危機は、こうした倫理的諸徳性を忘れ、営利の追求のみに走った結果生まれた巨大なバブルの崩壊によって引き起こされました。デリバティブ(金融派生商品)という毒が世界中に回った今回の危機は、そう簡単には収束しないでしょう。

なぜ、こんなバブルを生み出すに至ったのか。私たちの学生時代、学問とは物事の本質を考えることでした。資本主義とは何か。経済学は何のためにあるのか。善とは、悪とは…。学生の多くはヘーゲルや三木清といった哲学書をむさぼり読んだものです。

だが最近は、そうした風土は全くなくなりました。現在の哲学研究者に言わせると、今は哲学自体が混乱しているのだそうです。善悪の根拠が危うくなっていると。

(※途中省略)

このままでは相場の下落で保有する金融商品に大きな損失が出る。損失が出たら経営が持たない。だから時価会計を凍結する、というのは邪道です。損失回避へモノサシを変えればよいという発想が、いかに国や企業の信頼を失わせるものになるか。日本は過去に何度も経験したはずです。

今は緊急時だから、という意見もあるでしょう。それならば逆に、正々堂々と損失を計上し、その損失の処理方法を考えるべきです。現状を糊塗する小手先の対応ではなく、ルールの本質を見極め、守り通す。それが何より大事なのです。

時勢に振り回されることなく、機能する経済システムとしての会計基準。上記の記事のような会計のあるべき姿に対する見識と警鐘がどこまで届くかわかりませんが、このような声が多くの上場企業管理職クラスが読む日経ビジネスに掲載されるあたりに、徐々に潮目が生まれつつあると感じたいところです。


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