栗太郎のブログ

一人気ままな見聞記と、
手づくりのクラフト&スイーツ、
読書をしたら思いのままに感想文。

読売歌壇 2012秋から冬

2012-12-31 21:34:32 | もろもろ

絵文字入りメールで癌を告げる友見つけられない返事の絵文字 (福岡市Sさん)

まだ若き母の歌ありこの胸に痛みにも似たあかりがともる (栃木県Kさん)

お互いがバッター役の恋だからいつまでたっても打ち返せない (静岡市Mさん)

「沢くんの奥さんキレイな人だった」だからどうしたそこからケンカ (名古屋市Y氏)

商品の製造場所を読むだけで小さな旅情に浸るわれかな (高山市O氏)

人多き駅の構内直線をつくりてあなたは吾に駆け来む (広島市W氏)

爪切りがぱちりと鳴ったその刹那私でなくなるわたしの一部 (霧島市H氏)

夜覚めてかよう厠の窓にさす昼と見まがう秋の月光 (赤磐市K氏)

雨止みて流し忘れし石鹸の泡残るごとちぎれ雲あり (池田市Iさん)

わたくしが先に逝ったら老いぬため娶りなさいと妻は旅で云う (東京都Y氏)

君の手に15時TELと書いてある15時だったら仕事の電話 (名古屋市S氏)

亡骸となりたる蝉をかつぎゆく蟻のかけごえ聞こゆるごとし (東京都Nさん)

ささくれをすごく気にする君がいて全部守ってみたいと思った (名古屋市S氏)

顔知らぬ媼(オウナ)に絵手紙描くこともわたしが世にある理由のひとつ (東京都Kさん)

下りという坂はなかった老いて今最後の大きな上りにかかる (交野市T氏)

大き手の弦絶ちしごとけさ不意に聞こえずなりぬ木犀の香は (稲城市Y氏)

神様は背負えない荷は負わせないかいかぶられてやせ我慢して (草津市Aさん)

小さき幸五つくらいを見つけだし重ね着すれば心ぬくもる (川崎市Oさん)

挑めどもいどめども尻あがらざる孫の鉄棒なみだぐましも (太田市S氏)

抜きし歯のあとのほら穴わびしかりわが舌先は何度も見舞う (匝瑳市S氏)

「泣きながら千切ぎった写真」何なのか想像はつく今なら削除 (仙台市I氏)

「ほんとうにありがとう」とは言うけれど嘘もあるのか「ありがとう」には (東京都Kさん)

校門を入りゆく影と出づる影わけへだてなく月は照らせり (三原市Tさん)

あすの晴れテレビにて知り心地よくきける今夜の土砂降りの音 (海老名市T氏)

突き抜ける硝子のような青空に石ころひとつぶつけてみたし (相模原市Sさん)


毎週月曜、まっ先に開くようになった読売花壇。
このごろでは、好みの歌詠みびとの名が何人かいる。
お、これはいいなと思うと、ああなるほどこの人かあ、と。
これもまた愉しみとなってきた。
でも最近、お気に入りのひとりの名を見かけないのが気がかりでもある。
会ったこともない、ただの一般人のひとなのに。


さあ、これから年越しというのに、夜通しの仕事に出かけるとしましょうか。
この暮れは、とうとう年賀状を書けずじまい。
どうしよう、やめちゃおうかと腰がひけてるところへ、今日の花壇のこの歌が後押し。


友とわれ結ぶ唯一の年賀状ぶっきらぼうに元気だと書く (東京都O氏)


そうだね、年賀状さえやめてしまったら、縁が切れそうな奴がいるじゃないか。
なにも、自分から切ってしまうこともないさ。
明日、テレビをみて笑いながら、友の顔をいくつも思い浮かべるとしよう。



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