録画人間の末路 -

人は記録をしながらじゃないと生きていけない

流れるような誘導作品 「シン・ウルトラマン」

2022-05-15 09:04:59 | 特撮・モンスター映画
※個人ブログゆえ
と、なっております。あらかじめご了承願います。

遅れながらも公開になりました映画「シン・ウルトラマン」、行ってまいりました。
正直言いますとね、本作に関してはいろいろ不安だったんですよ。庵野・樋口監督コンビと言えば「シン・ゴジラ」。大ヒットこそ記録したものの、理屈っぽく作られ過ぎてていてわたしのツボにはまる作品ではなかったんです。当時の感想を見ても、素直な思いを口にしたというより、なんか理屈をくっつけて面白いと思える部分を引っ張り出そうとした、という感じで書いてますし。BDとかも買いましたけどもう一つその気にならなくてあまり観たりしてないです。それが今度は「シン・ウルトラマン」で再び。しかも予告編では政府相手にまたいろいろやる「シン・ゴジラ」を思わせる展開に、オリジナルウルトラマンでは「科学特捜隊」略して「科特隊」だったものを「禍特対」に、「怪獣」を「禍威獣」にと当て字をする言い換えの仕方とか、カラータイマーを省いたデザインとか、妙な押し付け感満載でしたから。ヲタは長く親しんできた作品に対し、どうしても斜めな見方から解釈を行ってしまうことがあります。例えばウルトラマン個人はともかくウルトラ戦士全体に対してダークな解釈をするとか。わたしもその辺に関して持論ありますし間違いなく特撮ヲタである本作製作陣にないわけがありません。わたしの場合「コメットさん」にゲスト出演した話とか内山まもる氏のマンガ「ザ・ウルトラマン」とか円谷プロがウルトラシリーズの展開管理にさほど力を注いでいない時期に作られた社外作品をキッカケにしたものが多く、それでウルトラ戦士やウルトラ兄弟をダークな面で語るのはインチキだなぁと自粛していたのですが、仮に作品を作るとなった時に自分のヲタとしてのそうした思いを作品に反映させずに作れるか・・・と言われると多分無理。ウルトラマンならゴジラと違って一文字もかけない、なんてことにはならないと思いますが、代わりに長年蓄積された拡大解釈が大いに反映された内容になってしまうことでしょう。ただ、それを他のヲタがヨタ話としてならともかく一つの作品として歓迎してくれるかとなると全く別。事前の情報から感じ取られる「シン・ウルトラマン」からはそういう匂いがプンプン。だからこの間「ゾフィーは出ないかも知れない」とか書いたわけですし。そうした不安部分が公開初日を忘れてしまい、その翌日に慌てて予約を入れて見に行くことになった大きな理由でした。


さて、前置きはここまで。
その予想は大きく、いい意味で裏切るとはまさにこのこと、という展開が待っていました。予想以上にウルトラマン! 序盤はウルトラマンと言うより「ウルトラ作戦 科特隊出撃せよ」というウルトラQとウルトラマンの間の話を扱った大昔のPCゲームを思いださせる展開で「ビルガメラーとかでないかなぁ」とワクワク・・・さすがに出ませんでしたがそれくらい自分の怪獣好きを刺激してくれます。「禍威獣」のような当て字も最初に触れられる程度で字面はほとんど作中に使われず、もっぱらセリフであるのみなので「怪獣」だと思って聞いても全く支障なし。何より劇中音楽が「ウルトラQ」や「ウルトラマン」そのまま! 「シン・ゴジラ」でも劇中音楽を昔のゴジラシリーズから大量に引用して使っていましたが音源も昔のものをそのまま使っていたため、音質が新規の劇中音楽やセリフ効果音と違い過ぎてパロディとしか感じられない使い方でしたが、本作ではおそらく新規演奏を行いながら編曲は可能な限り行わない、音質だけ改善して曲はそのままというこだわりと前の反省を生かしたものとなっており、これがわたしの頭の中で勝手にオリジナル「ウルトラマン」と「シン・ウルトラマン」を同一のものとして認識しなおしてくれます。思った以上にウルトラマン!そのもの! こういうのでいい、いや、こういうのがいいんだよ! 夢中です。
こうなったのは全くの推論ですが、監督の樋口真嗣氏が、個人的にはイマイチだった「サンダーバード55」に関わっていたからではないかと。結局ファンやヲタが一番面白いと思うのは往年の作品からなるべく変えないで作ることなんだよ、ということを思い出させてくれたからこうした・・・そんな気がします。
とはいえ、さすがに「サンダーバード55」と違ってミニチュアとぬいぐるみで撮影するわけにも行きません。してもいいんでしょうけどそれは円谷プロがやってるので差別化も欲しかったでしょうし。で、CGでやっているわけですが、「なんだ、せっかく怪獣ものなのにまたCGかよ。人間の動きが出るぬいぐるみより生物間が出てカッコいいと思ってやってるんだろうけど、あのCG臭さは怪獣に合わないのよ」というわたしみたいな捻くれた思考のファンもいるわけですし、おそらくそれも想定して今回の製作陣はCGに対する別の回答を導き出しました。"コピペ"と"改変”です。フォームやデザインで共通性のある怪獣をあえて使い、一つのデータから複数の怪獣を作りだす"コピペ"でぬいぐるみでは難しいチョイ役で多数の怪獣を出演させることを実現しています。
そして"改変"。鑑賞中に一番驚いたのがウルトラマンの初登場シーン。これは予告編に描かれていたシーンそのまま・・・と思ったら何か違う・・・。あ、顔が違う。事前に公開されていたウルトラマンの顔はオリジナルの作中中期に使われたBタイプに近い顔になっていたんですが、作中に登場したウルトラマンはむしろ最初期のAタイプベースの作りになっていたんです。これは作品に合わせて直した、というより予告編ではあえて隠しておいた(当初フェイク映像を使った、と書きましたが、今見るとスペシウム光線のシーンだけ差し替えでBタイプ&赤カラーを使っているだけで、登場シーンは見えにくくなっているだけですね)実際に見に来たヲタ客なら分かるサプライズを入れて脅かしに来た、とこういうところなんでしょう。そしてウルトラマンの顔はやがてBタイプから、最後にはCタイプへと劇中でも変化し、ヲタ心を満たすとともにアレの伏線にもなっていたという実ににくい演出。さすが! 予告編を期待を盛り上げる要素ではなく不安要素をあえて前面に押し出して本編で覆すサプライズ要素にニヤニヤしっぱなし。とにかく製作陣はノリノリで作っていた、ってのが感じられます。庵野氏なんててっきり脚本だけで大人しくしているかと思いきや、「シン・ゴジラ」ばりにクレジットの中に何回も名前出てくるだけでなく、モーションアクターにまで名前入ってましたし。まぁさすがに一~二か所やっただけだと思いますけど。庵野氏の名前を大量にクレジットさせること自体が一種のギャグなのかも。

と、ここまではよかったんです。が、後半になるほど政府だとかそっち方面の展開が多くなって、知らないうちに劇中音楽も旧作のものから新規音楽に入れ替わっており、どんどんウルトラマンから離れていってます。ただ、それでも随所にオリジナルウルトラマンそのまま、という展開を挟みながらやっているのでその都度わたしの意識はウルトラマンに戻されるのでまだまだ・・・だったんですが、クライマックス、とうとうやってます。オリジナルを一部の要素だけにした独自展開と解釈、特にウルトラ戦士のダーク扱い! 異常に理屈っぽくて何言ってるのかわからないセリフの押収と、わたしが不安に思っていた部分が全部出てるぅぅ~。まぁねぇ、「シン・ゴジラ」でこの手のやり方が興行的に成功しましたからそれを踏まえるのは当然です。でも、やっぱりういうのがやりかったのか・・・でも、それを受け入れなければ、と思うほどそこまでの展開で誘導され、引き込まれていたのも事実なのでクライマックスは観る気なくなった、というほどではありません。ただ、最後の裏切られた感は否定できません。それでも、本作は「面白かった」と評しておきましょう。

ただ、本作を「面白かった」と評することが出来たのはその精神的たたき台があったからです。言うまでもなくあの「大怪獣のあとしまつ」です。さすがに「大怪獣のあとしまつ」を見たり中身を知ってから「シン・ウルトラマン」を作ったわけではないでしょうが(多少の手直しくらいはしたかも知れませんが)一部にソレを彷彿させる展開が、随所にセリフの中で存在します。ただ、コメディ要素はあくまで添え物扱いで、特撮ヲタなら分かる、という程度のギャグに抑えています。ですが、「怪獣ものでコメディやるんならこういう感じでやらないと」という作りての対抗意識のようなものは感じましたね。
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8 コメント

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Unknown (Beep)
2022-05-15 15:26:05
昨日シン・ウルトラマン見てきました。
尺として怪獣成分少な目なのがちょっと残念。
シン・ゴジラほどではないですがセリフ多く字幕が欲しい所
怪獣などの顔が使徒っぽく感じたのはご愛敬
当て字は、呪術廻戦か鬼滅の影響でも受けたのか、そんな言葉遊び不要かと。
ゾフィーじゃなくゾーフィなんですね。
ネットに上がった個人情報をデータとして消しても個人の記憶には残るでしょう
残念ながらスパイダーマン:ノー・ウェイ・ホームに出てくる記憶を消してくれる
魔術師のような存在は、ウルトラマンにはいないのですね
マルチバースも言葉として出てくるけど、消化不良で全体的に詰め込みすぎ感
P.S.
予告で『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』流れてた。
まだやるの?まあ見に行くけどw
昨日、帰宅してから届いていたUHDBD版スパイダーマン見ましたけど、やはり
面白い。アマプラにデアデビルもあるから見ておこう
Unknown (krmmk3)
2022-05-15 17:22:59
>Beepさん
オリジナルウルトラマンの総集編型劇場版を意識して怪獣はやられ役、というスタイルをとったのかも知れないですね。一エピソードに絞る、というのもありだったかも知れませんが、やっぱりああいうのがやりたかったんでしょう。
ゾーフィは、確か放送当時の雑誌掲載時に一部でそういう表記されていたことがある、と何かで読んだ覚えがあります。そこから取ったのかも。
まぁ伏線も回収しきってませんし、あとは各自の映画や特撮の知識で補ってくれ、という若干投げっぱなし感もありますね。基本的にセリフだけなので無視してもいいかな、と思ってます。
ジュラシック・ワールド、一応シリーズ完結編らしいので、そこそこ楽しみにしてます。洋画はためすぎてどれから手を付けていいのかわからない(笑)
Unknown (Beep)
2022-05-15 19:31:50
ゾーフィについては
https://dic.pixiv.net/a/%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%95%E3%82%A3
https://ultraman.fandom.com/ja/wiki/%E5%AE%87%E5%AE%99%E4%BA%BA%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%95%E3%82%A3
こういうことらしいです。へー
Unknown (krmmk3)
2022-05-15 23:31:07
>Beepさん
わたしはキワモノ怪獣本か何かで読んだのですが、ネットにも転載してあるんですね。しかしよく円谷プロ許したな。
Unknown (Beep)
2022-05-16 14:20:18
https://av.watch.impress.co.jp/docs/news/1409139.html
Unknown (krmmk3)
2022-05-16 16:57:57
>Beepさん
はい、ガッツリ録画予約入れてます。
今はもちろん数年後見返すのもこの手の番組の楽しみです。
Unknown (Beep)
2022-05-30 20:21:42
https://togetter.com/li/1893322
既に冒頭部分の公開は終わってしまいましたが、某監督にはぶっささったようでw
監督特権?でスーツアクターまでやってると、うらやまけしからん!とか思ってそう。
Unknown (krmmk3)
2022-06-01 10:42:06
>Beepさん
そういえば「シン・ウルトラマン」と「パシフィック・リム」、序盤の展開は似てますね。次々と襲い掛かる巨大生物をやっとの思いで防ぎ続けた人類は対抗すべくあらたな組織を結成・・・とか想像するにエンターテインメント性を重視するなら本編よりも面白そうだとか。ああ、どこかにその部分を映像化したテレビドラマとかないでしょうか(笑)

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