録画人間の末路 -

人は記録をしながらじゃないと生きていけない

気が進まない裁判員制度、明日より

2009-05-20 21:06:08 | Weblog
まだ先だ、ひょっとしたらやめるかも知れないと、負の方向に期待を込めていた裁判員制度が、明日よりついに始まってしまう。幸いなところ、わたしはすぐに出頭するという状態になっていないが、なにせ悪い方の運は異常に強いわたしのこと、いずれかなり悪い条件の時に選ばれるのは確実だろう。
あくまでプライベートの時に言った言葉であるので個人の勝手な予想だろうが、それでも立場上は説得力のある警察官の方に
「kさんとこなんて自営業で仕事休みやすいから、すぐにでも裁判員にえらばれるでしょ」
と言われたことがある。こういう警察官を含め、勤め人は自営業は休んでも組織に迷惑をかけないから、休みやすいと勘違いしている人が多い。が、わたしらに言わせれば逆である。ちゃんと手回しさえしておけば一時的に他人に仕事を任せられる勤め人の方がはるかに休みやすい立場としか思えない。自営業者の休みは即店の臨時休業につながり、長期化すれば店は信用を失い、倒産しかねない。「裁判員として招聘され、休暇をとったことを理由に会社は解雇などを行ってはいけない」というような罰則はあったはずだが「裁判員として召集されたために臨時休業となった店の信用をやめてはいけない」という罰則など絶対にない。さらにプライベートな話だが、最近我が父の調子が良くない。家と病院を行ったり来たりの回数が増えているのだ。いずれ父一人に店を任せるのが不安になるのは目に見えている。そうなっても、わたしは裁判員に選ばれたら、店を父に任せて裁判に行かなければならないのだろうか。介護にも当たらないし、仕事が忙しいは辞退の理由にならないことは、最初から明言されている。非常に不安である。

個人的にはこのような商売の事情以外にも、いろいろ引き受けたくない理由がある。が、なぜかわたしの友人・知人には積極的に「やってみたい」「楽しみだ」というものが多いのだ。なので、ひょっとしたらわたしのように断固拒否、というものは決して多くないのかも知れない。なお、賛成派の理由は「お金がもらえるから」「裁判に参加して、裁いてみたい」「自分が参加するのは気が引けるが、裁判員制度によって裁判の中身が変わるのが楽しみ」というものが聞こえてきた。中には某裁判ゲームのファンな者もいるので若干甘く見ているような気もするが、積極性は伺える。が、本当に我々が人を裁くことになるのか、がわたしの最大の疑問なのだ。
前に裁判員制度の説明会に父が行ったとき、説明の担当者にこんな質問をした。
「ようするに、映画"十二人の怒れる男"みたいなことをやれってことですか?」
すると担当者、顔を真っ赤にして
「ぜんっぜん違います!」
と怒り出したそうな。
有名な映画だと思う。映画じゃジャンルムービー専門のわたしですら何度も視たことがある映画だから、有名なはずである。素人が裁判に参加しろ、と言われたらどうしてもこれを連想するのが普通だろう。多分、担当者も過去に何度も同じことを聞かれたので、またか!と頭にきたのかも知れない。しかし、裁判員制度の導入の理由の一つが「諸外国では一般人の裁判への参加は普通に行われている」だったはず。なのに、一番イメージされる映画で使われたものとは全く違う、つまりアメリカで使われている「陪審員制度」とは全く違うというのはどういうことなのだろうか。「日本は特殊だから」といういつも言い分けが通用するのなら、そもそも一般人の裁判参加などさせなければいいはず。
陪審員は、全ての裁判になにかしら参加する。一方、日本の裁判員は、刑事事件の中でも特に凶悪な犯罪を裁く時に限られる。ようするに、軽い事件はもちろん民事事件も国民には参加させないということは、素人の判断などとても信用できないと司法側が考えているということではないか? ある意味当然である。裁判官は裁判のプロだ。判断のプロが考えている時に素人の口出しなど、雑音もいいところ、はっきり言えば邪魔になる。中古品に関してはプロのわたしも経験がある。品物を持ち込むお客さんの中には、少しでも高額に判断させようとやたら商品の説明をしたがる人がいる。最初のうちならともかく、こちらが商品のチェックを始めたときまで説明をやめず、自分の見せたいところだけを調べるように要請してきたりすると、うるさく感じることもしばしばある(もちろん口には出せないが)。中古品と裁判を一緒にしてはいけないだろうが、素人の意見が本当に参考になるなど、わたしにはとても思えないのである。まして担当するのは必ず凶悪事件。ならば、ついつい探偵小説気取りで妙な推理をしたがる人が出てきても不思議ではない。ますます裁判官には頭の痛いことになるだろう。もっとも、意見としては裁判員より裁判官の意見が優先されるようなので、結局は裁判官の意見がで決まるのではないだろうか。結果、残るのは「この事件の裁判は、裁判員という国民の審判を仰ぎました」というお墨付きだけになってしまうように思えてならない。
凶悪事件の犯人が思ったより軽い罪になったときに「なんであんなやつ、死刑にならないんだ?」と思ったことは、誰でも一度はある経験だろう、わたしもある。その都度、国民の視点とエリート裁判官の視点の差が言われた。この制度はそれを埋めることを目的としたものではあろうが、最悪誤審の全てが裁判員の責任として押し付けられることになる。なにせ、裁判員は裁判に顔をさらすのだから、はなっから裁判員を守ることなど考えていない。顔さえわかれば、個人を特定する方法などいくらでもある。そして、実際どのような評議が行われたのかは、罰則を伴う守秘義務によって裁判員から漏れることはない。さすがにやるとは思えないが、守秘義務のない裁判官が好き勝手に脚色して公表することは可能である。

さまざまな意見はあるだろうが、わたしには理念と中身のバランスが取れている制度とはとても思えない。やるのなら、まぁ民事をやらせろとはいわないが、もっと軽い事件をステップとして、参加者に危険がおよばず、かつ理念と中身が近づくように少しずつ修正しながら実行すべきだろう。現在の制度は、結果を想像できない人間が頭の中だけで考えた、極端な制度と言わざるを得ず、そう思える限り、わたしは制度には参加したくない。


追記:・・・と、こう苦情を書きましたけど、いただいたコメント、特にフフリオ・イグレシアスさんからいただいたコメントより、

・どうせ回ってくるのは凶悪事件。どんな結論を出そうと、どうせ不満な方が控訴するような重大事件。われわれ素人は地裁の時だけ裁判員として参加すればいいだけだから、高等裁判所以上へ行ってしまえば後は関係なし。結局定めた求刑が採用されることは無いのだから、責任を重く考える必要なし、さっさと終わらせてしまうことを考えるのが吉

とこういう結論に達しました。だいぶ気が楽になりました。
コメント (5)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« GV-D4VRでm2ts録画してしまった | トップ | Friio BS/CS&Express店頭販... »

5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown ()
2009-05-21 03:26:37
裁判員制度ですが、事前に調査書類が来るらしいので、いきなり「月頭に通知が来て月末に来い」みたいなことは無いようです

裁判員制度の一番の問題は、その不透明性じゃないかと

1.裁判員のプライバシーの保証が無い
現時点では、裁判員の顔は丸見えであるような印象しか受けません
凶悪事件で、傍聴人からも見える位置に顔が丸見えで居るわけです
現在の盗撮技術は半端ないですから、調べようと思えばいくらでも調べることができるでしょう
裁判は数日に渡って行われ、断続的に行われる公判の度に呼ばれ、必ず裁判所から出てくる
個人の特定は意外と容易でしょう
せめて顔くらいは隠してくれないと話になりません

2.出廷を拒否する際の基準がわからない
krmmk3さんの場合、店番を代われる人が簡単に用意できないため、現在知られている基準でも拒否することは可能でしょうが、問題は派遣社員やフリーターのような立場の弱い勤め人です
こういう立場の人が仮に国の用事だからといって長期間断続的に休むとなれば、どんなに保護されようとも立場は難しくなりますし、雇うほうも大変です
すぐ戻ってくる人のために臨時バイトなんか雇えませんし、そこを何とかするためのシステムである日雇い派遣は縮小傾向にあります

3.招聘された際の一時金の詳細
招聘時の一時金に関しては一律で支給されるような話がありますが、問題は「採用されなかった場合」
裁判員は、一度20人くらいを呼ばれた中で、面接などで6人を選び、その人たちが公判中ずっと参加するそうです
じゃぁ残りの十数人は?
仕事を休んできたのに交通費だけで返されたら話しにならないし、数日休むかもしれないと報告してきたのに、翌日戻れるかもしれない・・・その余った分の給料は?
なんにしても無駄が多すぎる

このように、素人が頭の中で考えるだけでこれだけの問題点があります

判決・量刑に関しては、裁判官の意見は重視される代わりに、有罪の際裁判官のみの意見は採用されないようです(説明聞いてもここが今ひとつ理解できませんでしたが)
返信する
Unknown (ROM専)
2009-05-21 08:34:25
裁判員に選ばれた方には昨年の11月には既に通知書が発送されているはずです。ですからニュースでインタビューされて「選ばれたらどうしよう」などとのんきなことを言っている方は当然のことながら選ばれておりません。

>十二人の怒れる男
まあ現実には警察から協力を依頼されて殺人事件ばかり扱っている探偵も存在しないわけですし・・・。
返信する
陪審員は (ジャガーいも)
2009-05-21 09:33:51
有罪か無罪かを決めるだけで量刑は裁判官が決めるけど、
日本の場合は一般市民の裁判員が量刑まで決める。ただし
裁判官三人のうちの一人が同意しないとダメ。

バカげた話だけど、問題なのは何か知らないうちに勝手に
決められたという印象。マスコミが報道しなかったからか?
決まった後になって報道されても意味がない。
返信する
Unknown (フリオ・イグレシアス)
2009-05-21 18:55:52
裁判員制度は地裁レベルだけとのことですから、
判決が気に入らなければ控訴されてそれまでですよね。
そう考えると余り意味のない制度なのか?と思えてきます。
いっそ最高裁の方を裁判員制度にすれば...

明日からBD課金スタートだそうです。
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200905210103a.nwc
返信する
Unknown (krmmk3)
2009-05-21 22:58:16
>熊さん
あの裁判の際の顔出しは、なんとかして欲しいものですね。裁判官に言わせれば、裁判の実際の空気を吸わずになんの判断ができようか、ってとこなんでしょうけど。いろいろコメントいただいて、裁決そのものには抵抗がなくなってきましたけど、選ばれた場合の都合の問題は、改良の余地、それこそ見切り発車的な要素が多すぎますね。

>ROM専さん
裁判員制度は、エコポイントなどのように1~2年でなくなってしまうような時限制度ではなく、恒久的に続くことを目指していますから、5年後10年後に選ばれるのが怖いのですよ。もし「一生に一度だけやればいい」制度なら、父が元気な今のうちに、早く終わらせておきたいものです。
裁判員に回ってくる事件は、そういう事件ばかりだそうです。それだけに、しゃべりたがりはどうしても出てくる気がします。

>ジャガーいもさん
裁判官は結局同じ局に勤める同僚ですから、一人の同意が必要と全員の同意が必要は、限りなくイコールに近い気がします。なんでこういう制度になったのか、事前の公表や報道は欲しかったですね。

>フリオ・イグレシアスさん
逆を言えば、裁判員がどういう結論を出そうとも、結局控訴されるような事件ばかりでしょうから、結局ご破算になりそうですね。制度としては意味なしでも、気構えとしては気が楽になりそうです。

BD課金自体はまだしも、権利者側はやはりゴネ得と観て、現状の規制のまま、無限大に補償金の範囲の拡大を狙っていますね。誰か歯止めをかける人はいないのでしょうか。
返信する

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事