録画人間の末路 -

人は記録をしながらじゃないと生きていけない

Fluid Motion Videoの良さとPowerDVDの働きを知ろう

2014-11-26 20:36:54 | AMDブログ
現状すでに市場投入されている機能にして今回の勉強会のテーマの一つ、それがFluid Motion Video(フルードモーションビデオ、この発音で呼んでいました)です。ベータ版を含むとこれが一般ユーザーでも利用できるようになってもう3ヶ月以上が経過しているにもかかわらず勉強会のテーマとなっています。やはりAMDとしては知名度に不足を感じているのでしょうか。そういえばこの機能、尋常じゃないほど商業サイトから無視され、AMDが行ったイベントの一環として触られるときと雑誌記事の転載以外では全く取り上げられてませんね。やっぱりベンチマークソフトみたいに数字で評価できない機能の評価ってあまりライターさんやりたがらないのでしょうか。他に理由があるとも思えませんが。
そういうわけでならば個人ブロガーに取り上げてもらい、ネット上の情報量を増やして欲しいというところなのでしょうが、それだと多分日本で一番同機能について書いているわたしがいまさら書いても知名度が増す原因になりにくいような気がします。ただ誰よりもその機能を使っている自負はありますし、理解もしているつもりです。ならその経験を生かしてわたしにしか語れない良さを含め、改めて書いてみるのもまた一興と言うものでしょう。以前書いた内容とダブる部分も多いですが、総合記事ということでご了承ください。


Fluid Motion Videoとは、24fpsで収録されたBDソフトを60fpsに変換して動画として出力する機能のことです。と、言ってもそうでないPCでの動画再生だって24fpsを60Hzのディスプレイに出力するために60回画面を書き換えていることに変わりはありません。従来の形式は24コマで60回書くために同じコマを複数回使っているのです。ただ、収録されているのは24、表示は60。二倍しても48コマしかないので12コマ足りず、三倍すると72コマになってしまうので今度は表示能力が足りません。じゃぁどうしているか。方法は一つです。1コマごとに2フレーム書き込みと3フレーム書き込みを交互にやるしかありません。その結果、1コマおきに表示時間が1.5倍も異なるんです。と、言ってもわずか1/60秒でしかありませんから人間の目にはちゃんと動いて見えます。でも正確な表示ではないため、複雑な動きの場面ではチラつき、単純な動きの場面ではカクカクとブレて見えます。ほとんどの人が表示装置として使っているだろう液晶特有の残像がそれを増幅しているのは言うまでもありません。元が24fpsの映像なのにインターレース保持60iのままのほうが24fps化した映像より動きが良く見えることがあるのはこのためです。
Fluid Motionはそれを解決するための手段の一つです。同じコマを表示し続けるだけだったフレームをその前後から動きの中間になるフレームに差し替えることでそのチラつきやカクカク感を大幅に低減し、スムーズな動きに見せるというわけです。もちろんやりすぎると元の映像を雰囲気を損なったりかえってカクカク感を増しまねません。が、そこは大変複雑なアルゴリズムを駆使することで解決しているそうです。もちろんそのアルゴリズムは教えてもらえませんでしたし仮に教えてもらっても理解できそうにないですが、実際に動画を見たときの結果から見る限り必要以上の補間を控え、メリハリが利いているところを見るとうまく動いているとおもいます。

ただ、これが現状PowerDVD14Ultra/PROでしか使えない(今回の担当者の発言にはありませんでしたがLiveも可)ことに不満を覚える人もいるでしょう。PCユーザーにはハードにはお金を掛けてもソフトにはお金を掛けたがらない人が少なくないだけに、そういう人は動画再生のために比較的高価なソフトは買いたくないと考えているとおもいます。ですが、Fluid Motion Videoはただドライバでサポートした、というだけで簡単に使える機能ではなかったようです。


今回のスライドで示されたFluid Motion Video搭載のための経過です。

AMDとサイバーリンクが協力

・AMDと2013年夏より長期にわたって協力
・かなり早い時期よりサンプルを頂く
・AMDのトロンチームとサイバーリンクのカーネルチーム
・CCCドライバとPowerDVDのインタフェースを何度も改善
・コンセプト共有からドキュメント、SDK、テストベットも共有/交換

→2社間でとても緊密に協業!


開発開始が2013年夏、ベータ版で実装が2014年の夏。形になるまでまる一年を費やしています。Fluid Motion VideoはAMDとサイバーリンクの共同作業の産物と言っても過言ではないのです。



ちょっと裏話

弊社開発によれば・・・
・開発時、本当にハードウェアでの映像品質を心配した・・・
・弊社のソフトアルゴリズムよりも悪ければプロジェクト中止も考えた
・両者間の努力も無駄に・・・
・両エンジニアが多大な時間を費やし多数のBlu-rayをチェック・・・
・最初はジッタやモザイク多発・・・

→しかし、ひとたび問題が発見されるとAPIは改善され、Fluid Motionの品質もどんどん改善!


弊社、つまりサイバーリンクのソフトアルゴリズムとはPowerDVD7から実装されているTrue Theater機能のこと。現状ではDVDなどSD映像までですがやはりフレーム補間を行うことでカクつきをなくし、動きをスムーズにする動画再生をソフトで実現しています。サイバーリンクはこれをHD画質にも対応させる研究も行っていたようです。それを見送ったということはそれだけの効果をFluid Motion Videoに見つけることが出来たということでしょう。これだけ苦労して高品質を実現したAPI。もちろんAMDが保持しているのでしょうがサイバーリンクにこれだけ協力してもらっている以上、おいそれと無償提供など出来ないでしょう。



PowerDVDの働きドコロ
・単一APIを呼び出すような単純なもの・・・ではない
・複雑なメカニズムでグラフィックのワークロードを検出
・Blu-rayコンテンツを解きドライバにお届け
・Fluid MotionドライバでPowerDVDのパラメータを参照

→補完されたビデオフレームが生成される!


ハードに頼った再生ではなかなか高品質な再生は難しいようです、特にBDでは。Fluid Motion自体はプレイヤーソフトに依存しない機能ということですが、それと再生品質は異なるということです。だから、




結果
Fluid Motionを効かせた映像がスムーズに動く!
アニメ見るならPowerDVD!
(※インスパイアされています)


だそうです(笑)。ちなみに会場では「なにはともあれデモンストレーション!」としてYouTubeなどでもあがっているFluid Motionの比較映像のほか、某アニメのBDの再生が行われました。前者は写真撮っても面白くないし、後者は「大人の事情でブログに載せないように」といわれているので掲載しません。ちなみにブツは某所で「狂喜乱舞したアニメマニアの技術スタッフ」といわれた方の私物だそうです。最近社内でもデモ用として使うので家に持って帰られなくなったと言ってました。

なお、このようにAMDでもサイバーリンクでも「アニメ向け」としているFluid Motion Videoですが、わたしは異議を唱えましょう。どうみてもFluid Motion Videoが最大の効力を発揮するのはアニメ・・・いや、アニメはアニメでも絵のアニメではなく人形をコマ単位で動かすストップモーション・アニメの方です。前に特撮での表現力がアップすることは書きました。特撮はフィルムを3倍無いし4倍、つまり秒間72コマや96コマで撮影したものを通常の回転速度で再生させることで動きを遅くし、巨大感を表現していますが、そのため炎や煙といった全体はゆっくり動いても細部は大きさに関係なくチラチラとした動きが見られる自然界の産物はどうしても不自然に映ってしまうのです。Fluid Motion Videoはそれを見事に補間してチラチラ細かい動きに直してくれるため、巨大感と現実感を同居させる映像にしてくれるのです。これがFluid Motion Video効果の決定打とおもっていましたが、ストップモーション・アニメの効果はそれ以上でした。
ストップモーション・アニメはCGのような技術がなかった時代でも造形物に複雑な動きをさせることを可能にした技術で、ウィリス・オブライエンが「ロストワールド」と「キング・コング」で恐竜や怪獣を表現したことで世界にそのすごさが知れ渡り、後にレイ・ハリーハウゼンという特撮の神と呼ばれる人物によって頂点に達しました。もう一人の神、円谷英二ですら当初「ゴジラ」をストップモーション・アニメで撮ろうとしていたくらいです。ですが、弱点もあります。コマごとに人形の動きを変えることで確かに動きを表現することはできるのですが、止まっている姿を繰り返し撮影するのでコマ単位では止まっており、チラつきとぎこちなさをどうしても感じてしまうのです。そのため、この技術が怪獣表現に使われていた末期にはわざわざ別に撮影したブレ(モーション・ブラー)を合成してチラつきを減らしていたくらいです。Fluid Motion Videoの技術はそれを後付で映像に与えます。補正によって追加された中間の動きと流れる残像がブレと同等の効果を映像に加えるため、チラつきが減り、驚くほどストップモーション・アニメの映像に"動き"を追加するのです。「キング・コング」が、「水爆と深海の怪物」が、「シンドバッド虎の目大冒険」が、目の前のディスプレイの中で命を吹き込まれ、初見時を超えるほど生々しく動き出す様は同じ映像を何回みたかわからないわたしでも驚愕せずにはいられませんでした。「古いコマ撮りはあのチラつきがいいんだ。後から効果を加えるなんて冒涜」とおもう人ほどあの効果を見てもらいたい。きっと人生観が変わること請け合いです。


そして質問タイム。ここではあの質問をぶつけるしかないでしょう。ズバリ「Fluid Motion Videoが使えるハードの条件は?」です。
サイバーリンクに問い合わせても「AMDに聞いてくれ」という返事がかえってきただけだったこの謎。文字通りAMDに聞く機会がある以上、聞かないわけにはいきません。Fluid Motion Videoのセッションはサイバーリンクの方の担当だったのですが、回答はAMD側からのものでした。

・GPUコアを6GPU以上備えたAPU
・260・285・290番のRADEON

この2つのどちらかを満たすことが Fluid Motiron Videoの条件とはっきり答えてもらいました。つまり現行APUのKaveriだとA10/A8の4コアモデルは使えますが、A6の2コアモデルは4GPUしか有効になっていないため、Fluid Motion Videoは使えないということになります。そうかぁ、だとするとわたしの買ったThinkPad E455でFluid Motion Videoが有効にならないのもFX-7500のGPUが足りないからだったんだなぁとその場では納得したんですが帰って調べてみると

AMDがノートPC向けのKaveriを発表、FXとPROのブランドを追加


>>FX-7500 with RADEON R7 Graphics
>>4CPU+6GPU

・・・おーい、条件満たしてるぞ~!? ますますなんでE455で動かなかったのか謎になってしまいました。ドライバがモバイルKaveriに完全対応してないせい?という気がします。しょうがないので次のドライバのメジャーアップデートに期待。


さて、Fluid Motion Videoとは関係の無い話ではありますが、他の人の質問等によりますとPowerDVDでBDが再生できなくなる不具合が出ているとか。BDはセキュリティの関係でAACSを最低18ヶ月に一度更新しなければならないとPC用ソフトでは義務付けられているのですが、その自動更新を停止にしているとうまくいかないというケースが一つ。これはまぁいいのですがもう一つのパターンがありまして、それはPowerDVDのバージョン10にはその更新がうまくいかなくなるバグが存在するということです。これが出た場合はサポートセンターに電話で問い合わせて欲しいということでした。10はバージョンとしてはもう古いですが今なおBDドライブにバンドルでついてくるソフトであり、こうしたバグを知りながら残しておくのはちょっといただけない対応ですが、とりきれないのかも。10を使っている人はせっかくなのでFluid Motion Video環境を構築するために14に買い換える、というのはどうでしょうか。ファイルの再生ソフトとしても使えますよ。

それ以外にGPGPUの活用例も兼ねてPowerDirector(PhotoDirectorだったかも知れない)のデモも。風景写真内から写っている人だけを簡単に消してしまうフィルター掛けはまるで手品を見ているようで、あまりにあざやかなので写真を撮るのを忘れてしまうほどでした。あくまで「こういう処理をGPGPUを活用することで高速に行える」ことを見てもらうためのデモという扱いでしたが、処理の面白さのほうが際立っていました。最近の加工ソフトのフィルタすごいわ。

コメント (4)    この記事についてブログを書く
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4 コメント

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Unknown (Unknown)
2014-11-26 23:27:09
AMD広報から確定情報が流れてきただけでも大収穫ですね。
しかしPowerDVD必須なのは(いや、書くまい)
なんとかサイバーリンクにお金が落ちるようにしつつ、
他のプレイヤーでも有効にできるようになればいいんですけど。
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Unknown (krmmk3)
2014-11-27 01:23:37
>2014-11-26 23:27:09さん
やっと具体的な情報が出ました。これを聞きにいったようなものです。
基本的に、お金はやっぱり利用者である我々が払うべきだとおもいますよ。
返信する
Unknown (Unknown)
2014-12-05 07:34:00
うぬぬ
払っていいと思ってはいるんですが
ソフトは自分の使いたいものを使いたいです
外部からデコーダーとして利用できないのかしら
返信する
Unknown (krmmk3)
2014-12-06 01:19:41
>2014-12-05 07:34:00さん
Fluid Motion Videoはデコーダーではないことと、BDの再生に使われる機能である点がありますから無理でしょうね。何よりソフトに繊細な調整が要求されますから、ただ放り込んだだけではまともに動かないですよ。
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