録画人間の末路 -

人は記録をしながらじゃないと生きていけない

カノープスの思ひ出ぽろぽろ

2011-03-02 22:47:19 | FIRECODER Blu/SpursEngine
東京に来ておりますが、予想より寒いですね。地元よりはマシですが。個人的にはそれより花粉の方が怖いですけどね。

今回は昨日の話で申し訳ないのですが、これをテーマに。


トムソングループから独立したと言う話は聞いていたので、社名を変更するにしてもてっきり"トムソン"の文字が削除される程度と考えていたのですが、完全に別の名前になってしまうのですか。残念です。そこそこPC暦の長い身としては、「カノープス」の名には独特のあこがれを持っていたのですが。"トムソン"がついた程度ならちょっと格好悪くなったけど、程度の感覚で済んだのですけどね。

カノープスと言えばMTV、といいたいところですが、それ以前のグラボが主力だったころ、PowerWindowとGeForceになってからのSPECTRAを語らずにはいられません。他社の同じチップを搭載した製品と比べて高額でありながら、ベンチマーク時に圧倒的なパフォーマンスを発揮するためにベンチマーカーに支持を受けたオリジナルのドライバと、独自設計による高画質さが魅力でした。特にカノープスが力を入れていて製造していたnVIDIAのD-SUB出力の画質はおせじにも良いと言えないものが多かったのでカノープスの力が際立っていたと記憶しています。高品質のために、今のグラボでは当たり前の外部からの電力供給を、最初に行ったのはカノープスのGeForce搭載グラボ、SPECTRAです。わたしはSPECTRAを買ったことはないのですが、実際わたしが購入した最初のGeForceであるGeForce2MXの画質はひどく、にじんでいる上にゴーストのようなものまで見えるほどの低品質でした。なのですぐにMATROXのMilleniumG450に変えてしまって「遅くなったけどこっちの方が画質がいいや」と悦に浸っていたものです。GeForce2の時代はnVIDIAしか製品メーカーにGPUをおろしてくれるメーカーがなかったにもかかわらずボード販売メーカーだけはやたら多かったので、わたしが買ったような低品質のものもたくさんありました。だからカノープスは高額でも輝いていられたのです。ちなみに他のGPUはメーカー直販のものしか製品がありませんでした。3DFXが同時代のVoodoo3からチップ単位の外注主義からメーカー直販のボードのみに切り替えたのは記憶している人も多いかと思います。結局3DFXは3はまだしもVoodoo4/5への移行に失敗してnVIDIAに買収されてしまいました。一方ATIは逆の道を歩み、RADEON8500を皮切りにVPU(GPU)をメーカーに開放、2大勢力時代の幕開けとなるのですが、それは別の話。
このカノープスのグラボにおける独自性が出せなくなったのは、GeForce3のころだと思います。一時代は築いたものの、あまりに玉石混合だったGeForce2製品の品質を見直すため、nVIDIAが製品のパートナーをASUSやMSIと言ったマザーボードメーカーにシフトし、リファレンスを守った設計を行うことを推奨し始めてからです。おかげでグラボ専用メーカーは独自性も出せなければ製品の発売もマザーボードメーカーより遅れるようになってしまい、出荷できるようになったらもうそのチップの旬を過ぎていた、なんてことも珍しくなくなっていました。さらにディスプレイに液晶が採用されるようになり、接続がD-SUBからDVIになると同じGPUなら画質の差があまり出なくなっていきます。結局さしものカノープスもそういった波についていけず、遅れて登場する上に値段が高いという競争力を発揮しづらい製品となってしまったため、GeForce4を最後にオリジナルのグラボから撤退してしまいました。現在のグラボ市場を見ると、もう少し我慢して続けていれば・・・とも思いますが、当時の状況では仕方がありません。

変わりに活路を見出したのが(と、言ってもMTV登場時点ではまだSPECTRAシリーズは健在でしたが)、われらがMTVによるビデオキャプチャ市場です。それ以前PC用のキャプチャ市場はごく一部のもの好きだけが見ている市場でした。PCの能力が足りないし、キャプチャー用チップの性能も低い、何より業界がなぜか「PCでのビデオキャプチャと言えばDVでビデオカメラからのキャプチャだ」という方向に持っていこうと盛んに運動を行っていたので盛り上がりようがなかったように思います。すでにPC録画の実力を敵視する傾向があったのかも知れません。パイオニアなどDVD-Rの立ち上げ時期に「DVD-Rの主要用途はビデオカメラで撮影した記録映像をDVD-Video化することだ」とはっきりと言い切っています。おかげで碌な製品がありませんでした。ただ唯一、ソニーのVAIOのデスクトップ機だけが高性能なTV録画ボードを搭載して売っていたと記憶していますが、当然単体販売はしてくれず、わたしらはやきもきさせられていました。
そんな中に衝撃的に登場したのがカノープスのMTV1000です。コンシューマ向けにいいチップがない代わりに業務用の一世代前のチップを使ってMPEG2のハードエンコ録画をしてくれるこのボードの性能の訴えは大当たり、一気に業界のビデオカメラ推奨の声を駆逐し、PC録画はメジャーロードへと躍り出ました。後に"3次元Y/C分離"、"3次元デジタルノイズリダクション"、"ゴーストリダクション"という、キャプチャーボードでは三種の神器のごとくあがめられる(実際にはY/CとDNRは排他利用なので同時には使えないのですが)機能を搭載したMTV2000が登場します。性能は圧倒的で、唯一対抗できたのはNECのSmartVisionHG/Vくらいなものでしたが、人気でそれをしのぎました。さらにバリエーションモデルとしてMTV2200シリーズを打だし、性能でもラインナップでも他社を圧倒したカノープスのPC録画における存在感は当時絶対的なものがありました。
ところが、歴史は繰り返すもの。NECがやたら画像補正の新チップの開発に熱心だったこともあって、NEC・アイオー・ピクセラなどは名目上カノープスと同等の性能のキャプチャーボードをより安い値段で提供することに成功していました。さらにNECがはじめて搭載してアイオーがそれに続いた「キーワード録画」機能にカノープスは遅れてしまい、それを挽回するのが難しくなってしまっていたのです。基本はそのままに機能をしぼったMTV1200で対抗しようとしましたがうまくいかず、結局他社並みの価格と性能のMTVX2004を発表、高品質のMTVからコストパフォーマンスも視野に入れたMTVXへと路線を変更します。それでも、時折MTVX2004HFやMTVX-WHFと言った気骨の感じられる製品もありましたがかつてほどの評価は得られず、MTVX2006HFを最後に一般向けキャプチャー部門からも撤退、ハイアマチュアや低価格業務用向けのビデオ編集システムの販売を主力に現在に至っています。もっとも、製品競争で負けたというよりPC録画のノウハウを活用して高性能化したDVD付きHDDレコーダーや、PC録画排除をひとつの目的として導入されたデジタル放送の前にPC録画には先がないことを悟っての撤退と解釈すべきでしょう。現在のPC録画はBonDriverが用意された機器を除いてひどい有様です。それでも発売すら許されなかった時代よりはマシなのかも知れませんが、カノープスを中心に各社が性能争いをした時代から見れば見る影もありません。

わたしもMTV1000を購入してから10年はたちますが、その間に購入したキャプチャーボード数知れず。そのほとんどが外されましたが、それでもカノープスのキャプチャーボードはわたしのPCに搭載され続けています。もちろんアナログ時代にものではなくHDMI入力搭載のHDRECSですが、それでも10年も同じメーカーの周辺機器を途切れることなく使い続けているなんて、他にはCPUのIntelくらいなものです。カノープスは単にブランドとしてだけではなく、製品の質も着眼点も他とは大きく異なるという事実が、わたしの中で根を張り続けているためでしょう。もちろんカノープスはなくなるわけではなく、グラスバレーと言う名に変わるだけです。それでもひとつのブランドがなくなるのは寂しいことですし、カノープスブランドはそれを惜しむだけの価値のあるものだったと考えています。

一度でもカノープス製品を使った方、その良さは心に残っていますか? わたしはやっぱりMTV1000が忘れられません。使いこそしていませんが、思い出とともに今でも保管されています。
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19 コメント

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Unknown (emanon)
2011-03-03 00:48:40
 カノープス 同社旧ロゴみたいに星になっちゃいましたね、どこかで型番とか製品名で復活はないのかな

わたしもまあ、 そうですねMTV1000から編集してみようと思ったのですよ 白くて薄い初期型リモコン買ってみたりしてさ

だがしかし当時のコーデックではどうがんばってもファイルサイズが大きくCD-Rが400円 少し遅れましたが同時期に発売されたDVD-RAM/DVD-R対応ドライブ 50,000円 DVD-R 4.7Gが2,000円キャプボとドライブ12月にはどちらもそろえはしたが高くて見て消すだけテープがのびるのを気にしなくともよい頭だしが早いと浸ってました 慣れると観たくない部分は右クリックでレコ並みにw

その後VHSに録画したものからでは役に立たづ挫折 結局レコ買ってバケツリレー地獄と… 

結局よく言われたあの クルリンパ あれさえ早期に何とかできれば好かったのだろうな
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もはや懐古趣味ですが (siinamon)
2011-03-03 01:23:57
うちの9821As2にはPW964LBが未だに健在です。
その前はPW801+、928LB使ってましたね。
特に928LBはS3自身よりも高性能なドライバで、VERUPの度に速くなるという…
98がコンパックショックに耐えれた要因の一つでした。
その後、スペクトラに憧れつつも高くて手が出ずMATOROXに行ってしまいましたが。
うーん、これで98時代から名が残る周辺機器メーカーはIOとMELCO(バッファロー)、ロジテック、エレコムくらいか…
さびしい限りです。
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カノプ (arpus)
2011-03-03 02:20:58
トムソンとなりグラスバレーとなり放送機器展のブースだけはデカくなっていってます。
トムソンの時は放送用カメラなんかもあったし、GVだとスイッチャなど取り扱い製品の幅も広いですからね。
放送業界では「カノープス」を残すよりもグローバルブランドな「GV」を定着させほうが良いという判断なんでしょうね。

ちなみにカノープスとのおつきあいはPC-9801のC-BUS用PowerCaptureでSDKを使った業務用スチルストア装置からでした。
PC-ATのビデオカードは・・・高値の花でしたのでやっぱりMATROXでしたね。ヘビーなゲームはしない方だったのかなりG200シリーズでひっぱりました。
個人的にはEDIUS3くらいからですかね。で、HDRECSとFIRECODERBlu。FCはともかくHDRECSは壊れないことを祈るのみ。w
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Unknown (Unknown)
2011-03-03 17:22:26
ビデオカードの良さは確かにありました。ノーブランドのGeForce256なんてひどくてがっかりした覚えがあります。

一方、ダメな製品にもあたりました。WINDVR-PCIです。画質がボケボケでがっかりした記憶があります。
http://www.thomson-canopus.jp/catalog/wincinema/windvr_index.htm

ところで、こんな記事をみかけましたのでご紹介します。
http://www.toyokeizai.net/business/industrial/detail/AC/d60827b7073ae62a8a36e500ab111208/page/1/#image1

こんなところにもコピーガードの影響ですか・・・
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Unknown (もののけ)
2011-03-03 17:27:36
カノープス、懐かしいですね。
SPECTRAといえば、私は RIVA TNT 搭載のカードを思い出します。
ドライバが独自で高速というのがうたい文句でした。
GPUメーカのリファレンスカードのみという縛りができてから失速したように思います。
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懐かしい名前です (WANI)
2011-03-03 20:49:42
カノープスといえば、友人の進めで購入したPowerCapturePCI。保存ファイル形式はMOTION JPEG。キャプチャーHDDは10Krpm4GバイトのUW-SCSIのチーター。キャプチャー原点かな。ちょっとしたパラメータずれで音ずれは当たり前。再生はキャプチャしたのを変換したVideo For Windows。欠点は価格が高い。当時で95K。
でも、名前が無くなるのはさびしい。
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Unknown (krmmk3)
2011-03-03 21:20:27
MTVやMTVXの話を書く人が多いと予想していたのに、なぜかPC-98関係が多い(^^;)いや、気持ちは分かりますが。そういえば、カノープスがPC-98用に高級オーディオボードを出していたという記事をどこかで読んだ覚えが。

>emanonさん
サーバーとかはまだcanopusの名のものを使っているみたいですよ。でも、一般向けの目に当たるところではもうないでしょうね。
初期のころは本当に大量のDVD-Videoを作りました。今じゃめぼしいものは吸い出して全部PCにファイル保存ですけど。

>siinamonさん
さすがにPC-9821As2を現役で使っている、というわけではないですよね? いくら964LBを併用しても実用には耐えませんし。
メルコの名を使ってませんから、バッファローも除外すべきですね。ロジテックも往年の活躍はないし、いいのはアイオーとエレコムだけ? に見えます。

>arpusさん
なるほど、国内よりも海外に向けたブランドの変更ですか。ナショナルがパナソニックに統一したみたいなものなんですね。
HDRECSは便利だけど、チップセットへの依存率が高いので、壊れないうちに使いにくくなるかも知れませんよ。ウチはそうなりかかってますし。

>2011-03-03 17:22:26さん
WINDVRはカノープスのキャプチャの中でも例外的にあまりよくなかった製品たいですね。ソフトでしたし。
東洋経済のは、わたしも独自に見つけてました。なので、記事の観点も独自にしておきました。

>もののけさん
なぜかカノープスのだけ以上にベンチが良かったので、「なにかしら不正してんじゃね?」なんて疑ってました(笑)。記事にも書きましたけど、GeForce3のあたりが分岐点だったように覚えています。

>WANIさん
ある意味当時のPCスペックでMotionJPEGでやろうというところが驚きです。1GBのHDDも珍しかったころではないでしょうか。
チーターは15k回転という恐ろしいものじゃなかったでしたっけ。10kのもあったかな?
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非常に残念 (たんたか)
2011-03-03 21:53:36
私もカノープスのビデオカードを使ってました。
確かSPECTRA5400とWF17を使っていたと思います。
特に5400は発色が大変きれいでした。
サポートが充実していたので、
マニアにはもちろん、初心者でも安心して使えました。

ちなみに私は地元なのでカノープスの本社のある場所を知っています。
15年くらい前はまだ小さい建物でしたが、
しばらくして隣接地に大きなビルが建ったときには、カノープスも大きくなったなぁと感動したりしていました。
しかし、独自開発のビデオカードを出せなくなったときから勢いがなくなったと思います。

品質にこだわった企業が、
日本にはあまり見かけなくなったのが、
実情だと思います。
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Unknown (通りすがり)
2011-03-04 00:06:43
そういえば、一番最初に買ったハイエンドなビデオカードは、カノプのPWR-128/4VCでした。(それまでは、S3なんかをよく使ってた。)
その後も幾つか購入したけど、流石にSpectraの時代は、他に浮気しました。
だって、高いし、ドライバのチューニングに時間が掛かってたのでしょう、出てくるのがかなり遅かったので我慢できず。(^^;
ビデオカードは、今は適当なミドルレンジのものを使ってます。
カノプのMTVシリーズも幾つか購入しましたが、今でも使ってるのは、MTVX2006USBだけになりました。
これは、アナログキャプチャ用に残してます。(主にDCやSSなんかのため。私は今でもセガっ子。(爆))
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WINDVRは他社製ボード? (jshy)
2011-03-04 01:08:24
個人ユーザーには、ほぼ懐かしむだけの会社になりつつありましたが、カノープスの名前がなくなると思うと、録画人間のひとりとしては、色々思い出が蘇ってきますね。
WINDVRに関しては、当時部屋にテレビがなくて、PC(PenⅢ自作機)でテレビが見れて録画もできる廉価版ボードとして購入した記憶があります。ただボードそのものは外国製で、その製品を日本仕様にしたOEM製品だったように思います。
多少不具合はありましたが、それでも自分のPCのモニター画面にテレビ放送が映るのを見て感動した記憶があります。MTV1000を横目に見つつ、その2年後ぐらいに、MTV2000 Plusを手に入れて画質の違いに愕然とはしましたがね。
部屋の中を見渡すと片隅にSPECTRAF11の箱が見えますねぇ。値札は24,000円 GForce2のリファレンス製品のノイズが気になって、大枚はたいて思い切って買い直したことを思い出しました。なんとなく残してあります。MTV2000 Plusのボードは壊れているんですが捨てられずにありますねぇ。MTVX2006HF ちょっと使って、後は箱に入ったままですねぇ。CGMS-Aに対応していて複数差しで同時多チャンネル表示が出来たような。でも外部チューナーとPV3,4辺りの方が使い勝手がよくて、自然とそちらにシフトしていったように思います。気づけば、エンコを覚え、PT1,2が欠かせなくなっています。当時からいまだに現役で使っているものといえば、いま覘いている17インチのDiamondtron まだまだアナログ人間な私です。
長文失礼。
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