爺さんが伝えたいこと

寡黙に生きて来た爺さんが、一つの言葉ででも若い人達の役に立つならば、幸いです。

ヒグマに脅かされる聖地

2021-08-15 18:16:37 | 日記
アイヌ語で「シリエトク」という北の果てを意味する知床は、2005(平成5)年に世界文化遺産として登録された、多くの見所が有るが、中でも人気のスポットが知床五湖である。

知床五湖は知床連山の一つである硫黄岳の一部が崩壊し、そこから崩れ落ちた岩石のたまり場に水が溜まって出来たものだと言われている。

周囲から流れ込む川もなく、一年中豊富な湧き水で満たされ、夏の時期でも水温は低いので絶好の避暑地でもある。

知床が世界遺産に登録された事で、知床五湖への観光客も増えた。

しかし、同時に危険な事態を招く事となってしまった。

ヒグマとの異常接近である。

1995(平成7)年以降、観光客が行き来する遊歩道周辺でも頻繁にその姿が目撃される様になった。

人間が食べ歩きなどをする事で、ヒグマの行動範囲が変化してしまったのだ。

現在では生態系を守り、事故を防ぐ為に、入場規制が設けられている。

特にヒグマの活動期となる5月から7月は、登録ガイドが同行するガイドツアーでしか散策出来ない。

また、湖畔の展望台へと延びる高架木道にもヒグマ対策がとられている。

木道脇には電線が張られ、7000Vの電流が流れていて、ヒグマが侵入する事が出来ない。

もともと、知床は世界的なヒグマの生息地だった。

異常接近が起こる様になったのは、観光目的で侵入した人間側の都合に他ならない。

大自然のパワーを感じる為に訪れた場所で、電流柵を使って動物を追い払う。

何とも皮肉な話ではないだろうか。



断崖絶壁を下がった聖地

2021-08-15 02:42:10 | 日記
神社と言えば、通常は長い階段を上がって参拝するというイメージが有るが、宮崎県には石段を下って参拝する珍しい神社がある。

日向灘(ひゅうがなだ)に面した断崖絶壁の洞窟に本殿を構える鵜戸(うど)神宮だ。

参拝者は日向灘の大海原(おおうなばら)を見ながら海に向かって下りて行く様な石段を400段近く下り、岸壁に大きく空いた洞窟へとたどり着く。

まるで竜宮城への入り口を思わせる様な佇まいの理由は、そこに祀られている神様のルーツにある。

鵜戸神宮は、ヒコナギサタケウガヤフキアエズノ尊の生誕の地と言われる聖地だ。

『古事記』によれば、山幸彦の妻になった海神の娘の豊玉琵売(とよたまびめ)がその子のヒコナギサタケウガヤフキアエズノ尊を産み落とした。

ヒコナギサタケウガヤフキアエズノ尊は神日本磐余彦(かむやまといわれひこの)尊は初代の天皇とされる神武天皇の父親だ。

豊玉琵売は、天孫の御子を海原で産み落とす事は出来ないと、海から陸へ上がり、鵜戸の洞窟で出産したのだという。

そして、鵜戸神宮には母が子を思う切ない伝説が残されている。

出産の際に、ワニの姿になったのを夫に見られた豊玉琵売は、子を産むと海へ帰ってしまう。

その時に残していくわが子の為に岩に乳房を押し付けた。

その岩が「お乳岩」となって清水を滴らせ、ヒコナギサタケウガヤフキアエズノ尊はその水で作った飴を母乳代わりに育ったのだった。

今もなお絶え間なく岩清水を滴らせているお乳岩は、国造りの神話の代から変わらない母親の情を参拝者に感じさせる。

その水は今でも自由に飲む事が出来る。

安産や健やかな育児を願う参拝者は、現在も後を絶たない。