徳島県の南西部に位置する剣山(つるぎさん)は、西日本第二の高峰である。
古くから修験道の山として知られる。
この霊峰には、数々の神秘的な伝説が残っている。
その一つが「剣山(つるぎさん)」という名前の由来には、いくつかの説があるのだが、そのうちでも有名なのが、安徳天皇が宝剣を山に奉納したという説がある。
安徳天皇といえば、檀ノ浦の戦で平氏が源氏に敗れた時に、わずか6歳で無念のうちに海に身を投げて亡くなったと言われている。
しかし、伝説によると安徳天皇は平氏の落人に守られて、この地に落ち延びたという。
そして、当時は石立山と呼ばれていた剣山に、平氏一門の再興を祈願する為に宝剣を奉納しようとしたと言うのだ。
すると、山頂近くにあった巨石が突然割れ、安徳天皇がその割れ目に宝剣を投じた所、巨石は割れ目をぴったり閉じたと言われている。
この巨石は宝蔵石とも呼ばれ、現在も剣山の山頂近くで鎮座している。
また、伝説によれば、安徳天皇はこの地で崩御されたのち、剣山の麓にある栗枝渡(くりしど)八幡神社で火葬されたという。
拝殿の奥にある「御火葬場」は、今でも聖域とされていて、周囲には縄が張ってあり誰も足を踏み入れる事が出来ない。
しかも、どんなに雪が降っても、この御火葬場にだけは雪が積もらないと言われている。
安徳天皇は、やはりこの地で生き延びていたのか。
悠然とそびえ立つ剣山は、その真相を
隠したままである。