Not doing,but being ~在宅緩和ケアの普及を目指して~

より良い在宅訪問診療、在宅緩和ケアを目指す医師のブログ

リニアフューザー

2010-05-16 15:08:15 | 在宅での薬剤の使用について
リニアフューザーは、テルモから販売されている、ディスポーザブルポンプ
です。linear(直線的な)という名の通り、初めから終わりまで正確に同じ
速度で薬剤を注入出来る点が最大のポイントです。これは、他の使い捨て
ポンプがバルーンの萎む力を使っているのに対して、スプリングを用いて
いることによります。クリニックでも実験してみましたが、確かにかなり
正確です。

一方、最大の欠点はと申しますと、PCA(早送り機能)がないことで、これは
医療用麻薬を用いるには大きな欠点になります。ただし、座薬を用いる事で
代用出来るのも確かなので、致命的とまでは言えませんが。また通常早送り
しない薬剤(サンドスタチンやケタラール)では何ら問題はありません。

もうひとつの欠点は、在宅で医療用麻薬の注射剤を使用する時には、
『速度を患者・家族が変更出来ないようにする』というのがルールに
なっています。リニアフューザーは速度を3段階に変更出来るのですが
患者様・御家族でもいじれてしまうので、上記のルールに反します。

そこで、ロック出来るダイアルカバーを使うことになりますが、これが
一度装着すると二度と外せない構造になっているため、
実質可変式の良さが失われる羽目になります。結論として、
速度を変更出来ず早送り機能もついていない本製品は
リニアフューザーは医療用麻薬の使用には不向き
と言わざるを得ません。
一方、抗がん剤などの在宅での使用も増えてきていますが、そのような
場合、速度が一定であるリニアフューザーは良いかもしれません。

さて、お値段ですが、PCAが付いていない分、安めになっており、
4000円程度で購入出来ます。

※ダイアルカバーはテルモに問い合わせると持ってきてくれます。