呼吸困難の治療は取り除ける原因をひとつひとつ検討して
いく事が肝心ですが、原因の治療が出来ない場合、
対症療法が行われていくことになります。
呼吸困難に対する薬剤の効果は、多くの場合限定的で
しばしば期待した効果はありませんが、その中でモルヒネ
は最も効果が期待出来る薬剤として広く認識されています。
何故効果があるのかは分かっていません。いくつか推測
されている機序はありますが、それはいずれ御紹介します。
mixiの緩和医療のコミュニティに、「呼吸困難に対する
モルヒネの効果にはエビデンスがない」という書き込みを
見ました。何を持ってエビデンスがある、不十分と判断
するかですが、少なくともモルヒネの呼吸困難に対する
効果にはプラセボとの比較試験も含めてかなりの文献があり、
その殆どがモルヒネの効果を支持しています。
これを否定してしまったら、緩和医療・ケアの殆ど全てが
エビデンスがない、という事になってしまいます。
しかし、ではモルヒネで簡単に呼吸困難が楽になるかと言うと
多くはそう簡単にはいきません。まず経験的に、労作時の息切れ
には殆ど効果を感じませんし、呼吸困難が重篤になればなるほど
モルヒネの効果は期待出来なくなります。この場合、増量しても
増量に見合った効果は実感していません。
一方、これはあまり重要視されていませんが、モルヒネの副作用
として口腔内の乾燥から痰の切れが悪くなり、喀出が難しくなる
方がいらっしゃるように感じています。これはモルヒネだけのせい
ではないと思いますが、モルヒネが気管支喘息に禁忌(使用しては
いけない)となっている理由も、痰の喀出が悪くなるという理由の
ようですので、関係ないとは言えないと思います。
また、モルヒネの鎮咳作用が良く働く場合もありますが、
逆に咳を抑える事で痰が出し辛くなる事もあると思います。
よく、痰を出す力の弱い方の湿性咳嗽に、不用意に咳止めを出しては
いけないと言われますが、同じ理由です。
また、量によってはいくらかの呼吸抑制はあると思いますし、
これがCOPDの患者様の場合、危険な影響となる可能性もあります。
上記の通り、モルヒネは呼吸困難に対して魔法の薬ではありませんが
経験的には7割程度の方に実感出来る効果がありますし、
正しい使い方をすれば他の治療法とも合わせて
有力な治療法となる可能性も十分にあります。
最後に呼吸困難に対するモルヒネの効果についての、恐らく最も有名な
文献のひとつを御紹介します。Pubmedから全文ダウンロード可能です。
Bruera E, MacEachern T, Ripamonti C, et al.
Subcutaneous morphine for dyspnea in cancer patients.
Ann Intern Med 119 (9): 906-7, 1993
癌患者を対象としたplacebo-controlled crossover study。
オピオイド皮下注は呼吸数、酸素飽和度を減少させることなく
呼吸困難を緩和した。
いく事が肝心ですが、原因の治療が出来ない場合、
対症療法が行われていくことになります。
呼吸困難に対する薬剤の効果は、多くの場合限定的で
しばしば期待した効果はありませんが、その中でモルヒネ
は最も効果が期待出来る薬剤として広く認識されています。
何故効果があるのかは分かっていません。いくつか推測
されている機序はありますが、それはいずれ御紹介します。
mixiの緩和医療のコミュニティに、「呼吸困難に対する
モルヒネの効果にはエビデンスがない」という書き込みを
見ました。何を持ってエビデンスがある、不十分と判断
するかですが、少なくともモルヒネの呼吸困難に対する
効果にはプラセボとの比較試験も含めてかなりの文献があり、
その殆どがモルヒネの効果を支持しています。
これを否定してしまったら、緩和医療・ケアの殆ど全てが
エビデンスがない、という事になってしまいます。
しかし、ではモルヒネで簡単に呼吸困難が楽になるかと言うと
多くはそう簡単にはいきません。まず経験的に、労作時の息切れ
には殆ど効果を感じませんし、呼吸困難が重篤になればなるほど
モルヒネの効果は期待出来なくなります。この場合、増量しても
増量に見合った効果は実感していません。
一方、これはあまり重要視されていませんが、モルヒネの副作用
として口腔内の乾燥から痰の切れが悪くなり、喀出が難しくなる
方がいらっしゃるように感じています。これはモルヒネだけのせい
ではないと思いますが、モルヒネが気管支喘息に禁忌(使用しては
いけない)となっている理由も、痰の喀出が悪くなるという理由の
ようですので、関係ないとは言えないと思います。
また、モルヒネの鎮咳作用が良く働く場合もありますが、
逆に咳を抑える事で痰が出し辛くなる事もあると思います。
よく、痰を出す力の弱い方の湿性咳嗽に、不用意に咳止めを出しては
いけないと言われますが、同じ理由です。
また、量によってはいくらかの呼吸抑制はあると思いますし、
これがCOPDの患者様の場合、危険な影響となる可能性もあります。
上記の通り、モルヒネは呼吸困難に対して魔法の薬ではありませんが
経験的には7割程度の方に実感出来る効果がありますし、
正しい使い方をすれば他の治療法とも合わせて
有力な治療法となる可能性も十分にあります。
最後に呼吸困難に対するモルヒネの効果についての、恐らく最も有名な
文献のひとつを御紹介します。Pubmedから全文ダウンロード可能です。
Bruera E, MacEachern T, Ripamonti C, et al.
Subcutaneous morphine for dyspnea in cancer patients.
Ann Intern Med 119 (9): 906-7, 1993
癌患者を対象としたplacebo-controlled crossover study。
オピオイド皮下注は呼吸数、酸素飽和度を減少させることなく
呼吸困難を緩和した。