Not doing,but being ~在宅緩和ケアの普及を目指して~

より良い在宅訪問診療、在宅緩和ケアを目指す医師のブログ

インフューザー

2010-05-27 08:29:33 | 在宅での薬剤の使用について
リニアフューザー、シュアフューザーを御紹介しましたが、最後に
バクスターのインフューザーポンプについて御紹介します。
他社製品と比べてのメリットですが、まず何と言ってもPCAで注入
する薬剤の量に選択肢がある(0.5mlと2.0ml)こと。
またロックアウトタイムも15分、1時間で選択出来ます。
PCAのボタンも、シュアフューザーよりは押しやすそうですし
コンパクトなデザインですので違和感も少ないように思います。

欠点を挙げるとPCAがつくとラインが分かれ、プライミング等が
慣れないと面倒な印象です。またバルーン式なので最大充填量の
プラスマイナス10%くらいの速度のずれは仕方ないようです。
ポンプの値段(定価)は5050円とのことで、PCA付きを考慮すると
他社なみかな、と思いました。細かいですが12個単位でしか購入
出来ないです。薬局で薬剤と一緒に処方する時も薬局の合意が
必要になりますね。

感想として、凄く良い訳ではありませんが、
在宅で麻薬の持続皮下注射を用いるなら
消去法でこれになるかなぁ、という感じです。

シュアフューザー

2010-05-18 13:19:05 | 在宅での薬剤の使用について
ニプロのシュアフューザーの紹介になります。こちらは流量可変式のものと
PCA(早送り)機能の付いたものがあります。しかし、流量可変式機能と
PCAを両立させる事は技術的に難しいようで、現在のところ両方の機能が
付いたポンプはありません。

シュアフューザーは、PCA機能が3ml早送りのタイプしかない
のが問題です。持続1mlのタイプで3ml早送りされてしまうと、麻薬では
3時間分の量が早送りされてしまう事になり、これはかなり多い量になる
と思います。持続3mlのポンプを使えば、ちょうど良い量の早送りになる
ものの、時間3mlのポンプはかなり大きいので、非常に使いにくいです。

また、PCAのボタンが堅い印象があります。力がないと押しにくいので
ご高齢な方では押すのが大変だと感じました。

申し訳ないのですが、上記2点だけでも在宅で麻薬の処方にシュアフューザーを
使用するのはちょっと難しいかもしれません。

シュアフューザーはPCAが付いている割には安めですが、それでも6000円
前後します(定価なので実際はもう少し安いと思いますし、もちろんPCA
がないものはもっと安いです)。前述のように薬局で処方するなら、
単価はあまり関係ないので、安さはそれ程のメリットにはならないかもしれません。

現在、ニプロでは新しいデバイスを開発中とのことですので、
そちらを期待することとしましょう。

リニアフューザー

2010-05-16 15:08:15 | 在宅での薬剤の使用について
リニアフューザーは、テルモから販売されている、ディスポーザブルポンプ
です。linear(直線的な)という名の通り、初めから終わりまで正確に同じ
速度で薬剤を注入出来る点が最大のポイントです。これは、他の使い捨て
ポンプがバルーンの萎む力を使っているのに対して、スプリングを用いて
いることによります。クリニックでも実験してみましたが、確かにかなり
正確です。

一方、最大の欠点はと申しますと、PCA(早送り機能)がないことで、これは
医療用麻薬を用いるには大きな欠点になります。ただし、座薬を用いる事で
代用出来るのも確かなので、致命的とまでは言えませんが。また通常早送り
しない薬剤(サンドスタチンやケタラール)では何ら問題はありません。

もうひとつの欠点は、在宅で医療用麻薬の注射剤を使用する時には、
『速度を患者・家族が変更出来ないようにする』というのがルールに
なっています。リニアフューザーは速度を3段階に変更出来るのですが
患者様・御家族でもいじれてしまうので、上記のルールに反します。

そこで、ロック出来るダイアルカバーを使うことになりますが、これが
一度装着すると二度と外せない構造になっているため、
実質可変式の良さが失われる羽目になります。結論として、
速度を変更出来ず早送り機能もついていない本製品は
リニアフューザーは医療用麻薬の使用には不向き
と言わざるを得ません。
一方、抗がん剤などの在宅での使用も増えてきていますが、そのような
場合、速度が一定であるリニアフューザーは良いかもしれません。

さて、お値段ですが、PCAが付いていない分、安めになっており、
4000円程度で購入出来ます。

※ダイアルカバーはテルモに問い合わせると持ってきてくれます。

持続皮下注②

2010-05-15 22:50:56 | 在宅での薬剤の使用について
本日は細かい内容になります。
ディスポーザブルポンプを使用したことのない開業医の
先生向けです。申し訳ありませんが、他の方はあまり
面白くないと思います。在宅緩和ケアの普及が本サイトの
ひとつの目標なので、しばらく我慢してお付き合い下さい。

まず、ディスポーザブルポンプを使用すると、在宅の
診療所(クリニック)は、管理料がとれます。これは1月
2500点(25000円)です。しかし、ポンプがひとつ
4000~6000円程度しますので、一月5~6個以上使用すると
赤字になってしまいまいます。実際は3~4日に一度、あるいはそれ
以上にポンプを使用する事も多いので、これでは全然足りません。

しかし、平成22年の4月から在宅でディスポーザブルポンプを
使用する場合、6個を越える部分はポンプ1つにつき
4000円が支払われるようになりました。これでクリニックの
持ち出し分はかなり少なくなったと思います。
しかし実際はポンプが4000円以上しますし、ルートやシリンジの
持ち出しもありますので1個4000円ではきついのですが…。
以上は、クリニックでポンプを購入する場合です。

別の方法もあります。平成18年から、麻薬を管理している
薬局がある場合、院外処方箋に薬品名、薄めるための生食、
ポンプを一緒に書くことで、保険でポンプを処方出来ます。
薬剤とポンプをまとめて処方出来るということです。この場合、
ポンプの料金は薬局で請求されますので、クリニックでは
持ち出しのことを気にせず処方出来るかと思います。
1週間分を薬局で詰めて在宅まで運んでもらい、それを医師
や看護師が自宅で使用します。モルヒネでは管理も煩雑なので
この方法の方がむしろ一般的かもしれません。

それでは、次にディスポのポンプの種類と特徴についても
述べたいと思います。


持続皮下注①

2010-05-14 17:15:45 | 在宅での薬剤の使用について
モルヒネ等の持続皮下注を行なう方法は、
①テルモのシリンジポンプを使用
②ディスポーザブルポンプを使用
③レガシーポンプを使用

の選択肢があります。緩和ケア病棟では①が使用されると思います。
使用頻度が高いので、性能の良いポンプを使うのは当然です。

一方、在宅ではシリンジポンプを持っているクリニックは少ないのが
現状です。購入するのは30万円くらいかかりますので無理もありません。
レンタルも出来るのですが、既にHPN(在宅高カロリー輸液)でポンプ
を使用した場合、ポンプふたつのレンタルは管理料のみでは大きな赤字
になります(ポンプのレンタル業者から家族が直接レンタルすることは
出来ません)。また、シリンジポンプのアラームが頻回に鳴るので、
対応が面倒との理由でレンタルをしている会社そのものが少ないようです。

従って、在宅ではしばしば②の使い捨てポンプが使われることになります。
これは現在、

1.テルモのリニアフューザー
2.ニプロのシュアフューザー
3.バクスターのインフューザー

があって、一長一短です。今後ひとつずつ紹介させて頂こうと思います。
薬局などにお聞きすると、バクスターのタイプが一番使われているとの
ことでした。

ちなみに、③レガシーポンプは私は使ったことがありません。
シリンジポンプと比べてもかなり高額で、正直値段に見合うメリット
は分かりません。薬剤がたくさん入るので何日も交換なく使えるのは
強みかもしれませんが…。

(続く)