徒然刀剣日記

刀剣修復工房の作品・修復実績と刀剣文化活動のご紹介

柄下地作成中

2012-02-09 00:06:53 | 拵工作
柄下地の荒削り作業です。

柄下地制作には、約10年間乾燥させたホウの木を用います。
白鞘とは違って、多少癖のあるホウノキを用います。これは、力の分散を狙ったチョイスですが、木の目が読み難くなることで加工が難しくなります。



写真下の柄前は、幕末期の本歌です。ご依頼時に付属していました。
塗鞘は、素人工作による物で、見るべき価値はありません。
当該柄前を見ると、肥後金具を用いており、程よく立鼓をとった体配には感動すら覚えます。このような柄前は、当時の高い技術力をうかがい知ることができる、数少ない生き証人です。古美術的な価値と資料的価値が、共に共存している見本のような作品です。

今回は、付属の柄前と同じ体配の柄前を制作します。これだけ反りの深い刀身ですと、柄も諸反り気味の物を工作した方がバランスも美しく仕上がるのですが、元のカタチで制作します。

昨今、本歌拵えが急速に姿を消しています。特に江戸後期の平常差しが危機的状況です。
これは、武道家によって安易に使用され、消耗されてしまうことが主な理由です。
恐らく、本歌拵の真の価値を理解しないまま、道具として使用してしまうことが理由でしょう。

当該お刀も武道家の方の指料ですが、安易に修復するのではなく、本歌は現状維持で保存し、柄前一式を新規作成されることになりました。
非常に好ましいご判断かと存じます。

ここで、日本刀所有者としての心構えをご紹介します。
日本刀を愛好するには、現所有者が「次の世代へ残すために、一時的に預かっているのだ」という認識を持つことがもっとも重要です。
日本刀を所有する又は所有しようとする方は、美術品保護者としての心構えを再認識していただき、適切な取り扱いにつとめてください。

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