徒然刀剣日記

刀剣修復工房の作品・修復実績と刀剣文化活動のご紹介

漆黒の脇差

2009-12-07 18:44:32 | 拵工作
納期のない拵が完成した。
以前より、納期の有無で拵え工作を差別しているような書き方をしていますが、断じてそのような考えは持っていません。
ただ、長く身近にある刀ほど愛着が沸くというのは事実ですし、製作開始までの構想に時間をかけることができるという理由もあって、つい熱がこもってしまいます。
「やっぱり差別しているのではないか!」と指摘されると身も蓋もないわけですが・・・。



さてさて、この拵えは1年近い期間をかけてやっと完成しました。
お客様には、大変お待たせしてしまいました。
刀身が海部並みの重ねを有し(約1.5cm)、肌は大肌、とても誇張された体配です。
刀身が重いので、実用を考えると柄の長さを長めにとる必要があります。拵え全体のバランスが崩れ気味なのが欠点ですが、不恰好さを抑えるには鞘を長くしなければなりませんが、実用重視ということで今回はできるだけ短い鞘に収めました。



全身を黒を基調に、鞘は粗い石目。コジリ・クリガタ・鯉口は水牛。



柄巻きは、鉄漿と同じ技法で染上げた黒。鮫皮を一枚で製作し、上からマット調の黒漆で塗る。



目貫には、漢詩のモノを選択。

ここまで徹底して漆黒にこだわると、存在感がグッと引き立ちます。
すべてを黒に統一する拵えは、助真拵などに見られるようにわりと現存していますので、昔の武士も好んだのでしょう。
実は私も、黒を基調にした拵えが好きです。
無の世界を表現したような宇宙感と、武の圧力のようなものを感じます。