徒然刀剣日記

刀剣修復工房の作品・修復実績と各種刀剣文化普及活動のご紹介

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ハマの職人工房『HAMA-TORY』中止のおしらせ

2020-03-02 17:29:40 | ブレイク
度々のご来訪ありがとうございます。しばらくブログの更新を怠っており、久々の投稿になります。

執筆活動自体は、定期的にお仕事を頂いている関係上絶えず頭の中で文章を考えている状態で、自分の中では作文に割く時間は変わらないものの、どうしてもブログが後回しになってしまいます。という言い訳です(笑)

さてさて、久々の投稿にて残念なお知らせをしなければなりません。

来る2020年3月7日~8日に開催を予定しておりました「ハマの職人工房『HAMA-TORY』」が中止となりました。

中止の理由は他でもありません、新型コロナウィルスによる感染爆発抑制?のためのイベント自粛の波をもろに受けた結果でございます。

このたびのイベント「ハマの職人工房『HAMA-TORY』」は、ヨコハマの ものづくりの技 春の陣 ~若葉芽吹く春は、新たな出会いの時。あなたも、はじめての“ものづくり体験”してみませんか。~ と銘打って開催される、横浜市主催のものつくりイベントでしたが、前回の秋の陣(台風直撃による中止)に引き続き、今回もまた中止と相成りました。
相手が目に見えないウィルスということでは、もはや止むを得ない状態ですが、ここまで外的要因に拒まれて中止となり続けるイベントも珍しいのではないでしょうか?

ちなみに、今回ははじめて刀剣を学ぶ方向けに刀剣の楽しみ方を講義させて頂くと共に、柄巻体験と称して特製のツボウチに自分で柄糸を巻き、作った作品をお持ち帰り頂こうという体験イベントと、包丁の研ぎを学び、研いだ包丁をお持ち帰り頂いてご自宅で刃物研ぎの妙技を身をもって体験して頂こうという機会を設けていただけに、非常に残念です。

いずれリベンジを果たしたいと思っておりますので、ご参加を楽しみにされていた皆様、市役所の担当者さん、どうぞ気落ちせず次の機会をお待ちください!
なお、前回日本大通りでの職人組合イベントにて、イベント告知のご要望をお寄せくださいました皆様へメールをお送りする前に中止の決定と相成りました。そのため、この度はご案内をお送りしておりませんので、その旨ご承知おきください。

ものつくり体験イベント中止のパブリックコメントはこちら
https://www.city.yokohama.lg.jp/business/kigyoshien/ginou/20200203hamatory.html
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闇蒔絵鞘打刀拵

2019-12-22 15:15:33 | 拵工作
新たな拵が完成しました!



毎年恒例、年末年始の集中工作にテンヤワンヤの状態です。
たまにはゆっくり年末年始を迎えたいものです(*:今年から時流に流され年賀状を遠慮させて頂きますので、その旨ご了承ください)。



昨今、リピーターからのご依頼が大半を占めておりますが、この度は初めてお仕事を頂く方からのご依頼です。



当工房では基本的に、外装制作は下地からおこして完成に至るまで御刀が工房を離れることはありませんが、今回は違います。
まず、ご依頼者様が持ち込んだ状態で、すでに下地が完成していました。おそらくベテラン職人(鞘師さん?)の手によるもので、大変繊細な加工が施されていました。



刀装制作は、大きく分けて2種の工程に分かれます。
拵下地を作る工程と、鮫革着せや柄巻き、鞘塗といった仕上げの工程です。
通常、下地を作るのは鞘師さんの持ち場で、鮫革着せや柄巻きは柄前師さん(柄巻きに特化して鮫革工作をしない職方さんや逆に鮫革加工のみを施す職方さんもいるので、ここでは総称的に柄前師とします)、鞘塗は塗師さんが各々受け持ちます。これ以外にも、刀装具を刀身に合わせて調整したり、ハバキや切羽を作る白金師さんも重要な役割を担っています。



前述の通り、当工房は全ての工作工程が守備範囲ですが、その理由の一つは多くの刀職が持ち回りで工作に取り掛かるとチグハグな外装を作り出してしまう危険性があって拵の最終調整が難しくなる場合があるのですが、そうした無駄な労力を極力少なくしたいからでもあります。(本来は、コーディネーターたる刀剣商さんなどが音頭を取るのですが、現在この立ち位置の識者がほぼ不在と言われています)
実際に、ベテランの職方さんたちが各々の領域を受け持ったにも関わらず、各々の箇所が自己主張をしてしまって全体のまとまりという意味で拵えとしての完成度が著しく低下した刀装を拝見することがあります。
さらには、大変高名な先生方の工作でも、修正のご依頼で当工房へ再度持ち込まれるケースが後を絶ちません。例えば、反りの深い刀身に反りの浅い直刀用?の真っ直ぐなハバキが作られているケースなど、鍔が上を向いているような不自然な外装に仕上がってしまったりします。



今回は、高い技術力を必要とする塗りを施しますので、名実ともに当代きっての名塗工師中田陽平さんに、鞘塗をお願いしました。



中田さんは、漆器の産地として有名な香川県高松市にてご家族で中田漆木(http://www.nakatashikki.com)を長年営んでいらっしゃる代々の工芸家さんです。
以前から交流があり、中田さんのものつくりへの情熱と直向きな姿勢には、常々共感を覚えておりました。
新宿高島屋さんでのイベントの打ち上げの席にて、「いつか共同でものつくりに挑戦したいですね!」と意気投合していたもののなかなかチャンスに恵まれず、この度長年の思いが結実するよい機会になりました。



ご依頼者様からはお任せ頂いていた部分でもありますが、鞘塗は意匠を凝らして闇蒔絵で仕上げたいと考えて構想を練りました。



となれば、一通りの塗り方をかじっただけの当方の腕では力不足(Unknown様より誤用のご指摘を頂きました。×役不足→○力不足、お恥ずかしいことですがご指摘頂きお礼申し上げます。)ですので、卓越した技術を持った専門家中田さんに相談した方がより良いものをカタチにできると考えて、今回の共同制作の相談に至ったのでした。



途中、当方の至らぬ情報共有の不味さから、塗り直しをお願いするなど2度も鞘塗をお願いする羽目になってしまいましたが、結果的に良い作品に仕上がってくれました!(初の合作でしたので、妥協を許さぬ姿勢で臨みたいという思いに、中田さんを付き合わせてしまいました。)中田さんには、お忙しい中多大なご協力とお仕事のご負担をお掛けしてしまいましたことを、この場にてお詫びとお礼させて頂きます。



とはいえ、本当によい刀装に仕上がりました。他ではちょっと目にすることのできない意欲的な創作刀装の美を実現することが出来たと思っています。


作業中の中田さん

これからも、当工房の鞘塗は、中田漆木さんにお願いする予定です。中田さんの卓越した技術をご所望される方は、ぜひ当工房へご相談ください。


中田さんの動画も絶賛配信中!
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第40回よこはま技能まつり

2019-10-29 17:24:14 | ブレイク
令和元年10月27日、横浜最大の技能職イベント『よこはま技能まつり』が、横浜スタジアムのある横浜公園から~みなとみらい線日本大通り駅までの、日本大通りにして開催されました!



よこはま技能まつりは、今年で40回目を数えるイベントで、この手の技能職イベントとしては、屈指の伝統と格式を誇ります。
主催は、横浜市技能職団体連絡協議会さんで、横浜市内で活動する様々な職方の組合が参画する唯一の団体です。
イベントを40年間続けているということは、昭和・平成・令和と年号を跨いで欠かさず開催されてきたことになりますので、あらためて歴史の重みを感じずにはいられません。



毎年同じ時期に、変わらず流されず確固たる活動を続けることの難しさは、主催者でなければわからない労力と根気が求められることでしょう。



その中にあって、マンネリ化しないように絶えず活動を推進することが、最大の課題になると思います。



当工房は、そんな歴史あるイベントに初出店をさせて頂きましたが、この度出店のご依頼を頂いたことで伝統工芸と言えども地域活動に貢献できる可能性を見出すことができました。
古くて新しい、時代に左右されない活動を目指している当方としては、大変居心地の良い展開となりました。毎度ながら、当方の活動を陰ながら応援して下さる市役所の関係部署の皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。



さてさて、当ブースではいったい何をしたのか?といいますと、刀剣研磨の実演をしながらニッチな伝統工芸分野が細々とではあっても、地域に根付いていることをご紹介しました。



さらには、技術を少しでも身近に感じて頂きたいという思いから、包丁の研ぎ教室を開催し、研ぎの理論から実技のコツまでを指導させて頂きました。一生ものの生きた技術を体験された方々は、体験しないと分からない絶妙な研ぎの面白さに夢中なご様子でした。



他にも柄巻体験をご用意しておりましたが、時間の都合などもあったため、実施の有無を含めて応援に駆けつけてくれた柄巻師の三幣さんのご判断に委ねました。



今回特に面白い!と感じたことは、職方通しの垣根を超えた交流があったことです。
これだけ異業種の職方さんが一堂に集合すると、当然多種多様な工具もまた集結します。
それら見たこともない刃物の修復を手伝わせて頂きました。



例えば、氷彫刻に用いる巨大な彫刻刀?のような工具類は、見るのも初めてな不思議な形状をしていましたが、研いでみると勘所はやはり日本の刃物で、正しい工作に務めれば素直に反応してくれることがうれしくもあり、確かな手ごたえを感じました。

一つ不思議に思ったことは、道を挟んで隣で開催されていた神奈川県主催の伝統芸能、文化・芸術の祭典(流鏑馬などを披露)との接点がないという謎の距離感があったことです。

当工房の立ち位置は、神奈川県のイベントの伝統やら文化やらの方向性と、横浜市のイベントの技術・技能職の活動紹介のちょうど中間に位置することから、大げさに言うと場所的にも間を取り持つようなブースであったかもしれません。
実際に、そのように声をかけてくれた来場者さんもいらっしゃいました。

今後とも、近隣社会への情報の発信と持続可能な文化の紹介を続けていきたいと改めて思いました。
当ブースへご来訪くださいました多くの来場者の皆様、この場をお借りしましてお礼申し上げます。
また、アンケートにご連絡先をご記入くださった方々には、改めてお礼のメールと今後のイベントのご案内などをお送りさせて頂きます。
なお、今回創作工芸品を購入いただいた方々には、改めて特典を検討しておりますので楽しみにしていてくださいね!
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短刀修復

2019-10-26 04:03:37 | 拵工作
短刀の修復が終わりました!



刀剣の工作では、刀身の長さに関わらず一振りに掛かる工作内容はほぼ同程度の労力・時間が必要です。単純に考えると、短い短刀類よりも長い刀の工作の方が大変なイメージがありますが、必ずしも長さに比例して難易度が上がるわけではありません。確かに材料費は大きな作品になればなるほど嵩みますし、材料を厳選する都合上時間も要します。
ところが、実際の工作となると極端な長さや形状の違いでもない限り、結局工程が同じである以上工作に大差ないというのが実際のところなのです。

今回のご依頼は、ネットオークション?で購入された短刀のご相談です。「現状の完成度が低いので何とかしたい」というものなのですが、最近多いご依頼の特徴の一つでもあります。
写真写りのみを向上させるために取り合えずそれらしく修復?加工?された刀剣をお持ちになる方があまりにも多いです。
ご購入されたまでは良いものの、実際に手に取ってみるとその完成度の低さに辟易するらしく、当工房へご相談をお寄せになります。

この度の工作内容は、刀身の再研磨、柄前の新規作成、鍔の交換、鞘の修復、つまりほぼ全てに手を付けました。



この手の御刀の特徴は、鞘をラッカー塗料で青貝散しの笛塗りに仕立てているケースが多く、柄前も流用下地に雑な諸捻の柄巻を施していることが共通しています。
おそらく器用な素人さんが、趣味が高じて錆身を光らせて外装をそれらしく補修し、インターネットで転売して利益を得ているのでしょう。
我々刀職ならずとも、実物を見れば購入を躊躇するような出来ですが、そこはインターネットの魔力でしょうか?刀剣にしては安いという感覚で、ついつい手を出してしまうようです。

ところが、そうしたオークション出品者は刀身の本来の価値を理解しないままガリガリと削ってしまうのか刀身が痩せてかなり消耗しています。また、刀身に合わせた研磨なども施すはずがなく、直刃調の刃取りで化粧を施すため、本来の刀身の美しさが失われています。



まずは刀身を研ぎ直してみると、働きに富んだ出入りの激しい焼刃が顔を出してくれました。



柄前については、使用感やバランス・刀身に合った形状など考えられているわけもなく、これ以上手を付けられないので新たに作りました。



ご要望により、グッと引き締まった立鼓型に仕立てて、戦国時の雰囲気を復古しました。



鞘のコジリがあらぬ方向を向いていたので、新たにコジリを作り直して、蝋色に漆を塗って仕上げました。



ここまで修復を加えると、グンと見違えるように刀剣らしい形状に生まれ変わります。
但し、ここまで手をかけるには、時間も労力もかかります。
できることなら実物をご覧になって購入されることが、納得の一振りと出会う最短ルートであろうと存じます。
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イベント中止のおしらせ

2019-10-11 21:55:48 | ブレイク
残念なお知らせです。



いよいよ明日10月12日から二日間の開催を予定していた、横浜市初の試み「HAMA-TORY ハマの職人工房」が、台風の影響で急遽中止になりました。
「ヨコハマ ものつくりの技 秋の陣」と銘打って、横浜を代表する職人さんたちがものづくりの技を伝授する特別なイベントでしたが、過去に比類なき台風の上陸を目前に開催が危ぶまれていました。

まさかの台風直撃には逆らえるわけもなく、この日のために着々と用意してきた作品や体験用の材料を前に、なんともやりきれない気持ちになります。
そうです。今回のイベントには当工房も横浜市の担当部署の皆さんから出展要請を頂き、二つ返事で承諾すると共に体験会を開催できることを楽しみにしていたのです。



三流職人たる当方が、横浜を代表する職方であるかどうかについてはこの際目をつぶるとして、末席に加えて頂いた横浜市の心意気にただただ感謝し、期待を裏切らない働きで恩返しする他にはなかろうと意気込んでいただけに肩すかしをくらった形になりました。



物事は、そうそううまく運ばないものですね。
最も気の毒に感じたことは、我々出展者よりも市役所の皆さんです。
この日のために、長い時間をかけて各方面との調整や折衝を重ね温めてきた企画が、まさかの天候によって中止になるとは、なんとも言葉にならない残念さが残ります。



とはいえ、今月は10月27日に横浜市技能職団体連絡協議会が主催する「第40回よこはま技能まつり」を控えています。
こちらのイベントは、山下公園から続く日本大通りを封鎖して歩行者天国にする壮大なものづくりの祭典です。27日のよこはま技能まつりには、当工房も初参加をさせて頂くことになりましたので、頭を切り替えてHAMA-TORYのリベンジに務めたいと思います。

最後に、この度の体験イベントにて、柄巻体験と包丁研ぎ体験、各々にご予約をお寄せ下さっていた方がいらっしゃいましたら大変申し訳ございませんが、中止の旨ご了承の程お願いいたします。なお、同様の体験会をよこはま技能まつりにて開催できるよう調整中です。

第40回よこはま技能まつりの詳細につきましては、追って告知させて頂きます!
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pen No.481

2019-09-14 20:00:16 | ブレイク
ファッション情報誌「pen」が届きました!
表紙には、「ファッションについて語るときに、あの人の語ること。」とあります!



ここでpen誌についてご紹介します。penは、「よりよい品を、よい使い手に届けたい。つくり手の思いが形になった数々のアイテム。あなたへ、そしてあなたの大切な人へ。」という発行趣旨のもと、20年以上続くファッションリーダー的存在の刊行物です。

ページを開くと、読み応えのある記事に美しい写真の数々、洗練された優雅さをまとった高級デパートに迷い込んだような錯覚に陥ります。



今回私が紹介させて頂くのは、ラドーさんの復刻モデル「ゴールデン ホース 1957 リミテッド エディション」です。
手にした瞬間、その重厚感・存在感から、ラドーさんが如何にこだわりを持って復刻に取り組んだのかということが伝わってくる、そんな一品でした。



時計と刀剣、分野は違えど作り手の情熱を内包する作品には、職人の様々な思いが込められているということを改めて感じさせて頂きました。

pen【ペン】No.481 2019は、最寄りの書店にて発売中です。
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かながわ しごと・技能体験フェスタ 2019

2019-07-23 15:45:45 | ブレイク
7月20日㈯・21日㈰、パシフィコ横浜にてお仕事体験イベントが開催されました。



この催し物は、子どもたちに楽しみながら技能や職業への関心と理解を深めてもらうために、厚生労働省委託事業としてかながわ技能振興コーナー(神奈川県職業能力開発協会)が主催する参加・体験型のイベントです。



毎年、神奈川県中の子どもたちがこの日を楽しみにしています。



今年は、横浜市からの要請を頂き、当工房も参加させて頂くことになりました!



私が感じた現場の熱気と活動内容を、ご報告させて頂きます。


早朝の準備の様子

この度の職業体験会は、毎年この時期に開催しているといいますが、お恥ずかしながら私はこの度の機会を頂くまで全く知りませんでした。



知る人ぞ知るイベントらしく、この日を心待ちにしていた子どもたちは入場開始時間前から長蛇の列を作って目的のブースに熱い眼差しを向けています。



私たちが使わせて頂いたスペースは、横浜市のブースです。菱紙作りに、市役所の皆さんもご協力くださいました!



他のスペースは、各職方さんで作る組合さんや業界団体さんのブースで、各々得意分野の技能を活かした体験プログラムをご用意されています。



私たちは?というと、刀剣を最も刀剣たらしめている柄巻き(持ち手の手を添える部分の紐を巻く箇所の工作)を体験して頂こうと、一ヶ月前から毎日準備を続けてきました。



今回は、以前から工房見学&体験会で定評を頂いている、短刀型の柄巻靴ベラ作りに挑戦して頂きます。


制作見本その1


制作見本その2

初めての参加ということもあり、各回の時間配分や難易度の設定など分からないこと尽くめでの手探り状態からのスタートとなりました。



有難いことに、友人で柄巻師の三幣さんと奥さんが駆けつけてくれました!



友人ら・市役所の職員さん方の協力なしには、完全に計画倒れするところでしたので、心からお礼を申し上げたいと思います。



一度入場開始となると、ものすごい人人人。あれよあれよという間にブースの前に体験待ちの行列が!



みんなで手分けをして、子どもたちにものつくりの面白さ・楽しさをご案内しました。



中には、柄巻体験をするために2時間待ってくれたというお子さんもいらっしゃって、逆に子どもたちから元気をもらう貴重な体験となりました。



最後になりますがとても残念なこともありました。子どもたちの工作体験中に、我が物顔でブース内の工作会場に立ち入る一部の大人たちがいました。しまいには、子どもたちを差し置いて自分たちが参加したい旨の交渉や子どもたちの指導中にも関わらず技術的な質問攻めをするなど、とても同じ大人として恥ずかしくなる立ち居振る舞いをされていました。
後で知ったのですが、彼らは別の地域のマイスター指定を受けた職方さんたち(神奈川・横浜といった地域ではなく、おそらく視察団?のようにお見受けしましたが全員同じ某県の関係者カードを首から下げていました)だそうで、そのモラルの低さに辟易し、何を審査した結果マイスターという称号を得たのか甚だ疑問にすら感じました。



皆様のお力添えのおかげを持ちまして、何とか無事完遂することができました。ご用意した50人分の体験キットもすべて無くなりました。改めまして、現場でサポートしてくださった市役所の皆様、友人の柄巻師三幣さん、そして我が家族にお礼をさせて頂きたく存じます。
さらにさらに、ご参加くださった50人のお子さんたちとそのご家族様、体験を希望されるも先着順の壁に阻まれご参加頂けなかった方々にも、お礼とお詫び申し上げます。

またの機会に皆様が笑顔になる体験をご用意してお待ち申し上げております。
この度は、誠にありがとうございました!
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令和元年7月7日イベント情報

2019-06-26 14:07:55 | ブレイク
7月7日は、言わずと知れた七夕です。

七夕は夏の風物詩として、日本の伝統行事に欠かせない存在です。
本格的な夏を前に、農耕や狩猟などの季節の訪れを確認する意味もあり、日本人にとって生活と直結した行事であったといいます。

ただし、その起源はあやふやで、ネット情報などでは中国の乞巧奠(きっこうでん)にみる織姫・彦星の感動的な星伝説に由来する旨の記載が圧倒的大多数です。

ところが、乞巧奠が伝来し皇室行事(天平頃の七夕(シチセキ)の歌会?)になる以前から、ベースとなる神話や伝説が日本にも息づいており、それらをひっくるめて?棚機津女(たなばたつめ)にまつわる物語に題材をとったと言われています。

その代表的な語源は、日本書紀の瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)が木花開耶姫(コノハナサクヤヒメ)に一目ぼれ?した時に発した「あの織経(ハタオ)る少女(オトメ)はだれ?(現代訳)」という部分と、天稚彦の葬儀の歌にある弟織女(オトタナバタ)ではないか?とする記事が数点認められます。

いずれにしても、平安期以前から7月7日を祝う祭りは長らく行われており、皇室でも相撲を観戦するなど、特別な催しが行われていたようです。
おそらく、当時の催しは庭園の池に三日月型の舟を浮かべたことでしょう。7月7日は旧暦ですので、月は三日月形に陰り月光は弱く天の川がより鮮明にみえる夜空であったと想像します。
ちなみに、相撲を観戦するという行事は、当時は特別な意味がありました。相撲の四股(シコ)の起源は、たたら場でフイゴを吹く(たたらを踏む)動作にあるとする説があり、国家運営に製鉄が欠かせない技術であったことの現れではないでしょうか?

また、七夕は刀剣職人にとっても大変重要な要素を含んでいます。
前出の通り、神話の中でも語られるように棚機津女は神に御召物を仕立てる仕事を支える巫女であり、一方、拵を作る職方は示現化した神の依代たる刀剣に御召物(拵)を仕立てる神職として「その作業は神事である旨の認識を常に持つように!」と、修業時代から師匠に度々叩き込まれてきました。
そのような理由で、工房で作業をする前にはミソギをして身体を清めることを忠告されたものです。
つまり、棚機津女同様の文化的・歴史的背景の上に成り立っている日本のものつくりの技術は、本来神を敬い奉ることを第一義として誕生したもので、その名残が最古の工芸技術に属する刀剣工作の心構えの中に息づいているのです。

さてさて、ここ神奈川では平塚の七夕祭が大変有名ですが、この度ご案内するイベント情報は熊本です!

熊本は、九州のど真ん中に位置する行政区画で、封建時代は肥後国と言いました。
関東人からすると、武道のメッカの様な強靭なイメージがある熊本ですが、そこには熊本地方・阿蘇地方・天草芦北地方・球磨地方があり、様々な地形と気候そして多彩な地域ごとの文化が脈々と生きづいているといいます。

特にご紹介したいのは、このうちの球磨地方です。

球磨地方には、人吉盆地を中心に内陸気候と山地型の気候があり、寒暖の差が激しい地方で、年降の降水量も比較的多く、夏は猛暑日になり冬は最低気温が氷点下にまで下がることもあるという大変厳しい環境です。

その文化の中心地に、人吉地区があります。

人吉は小京都とも呼ばれ、700年の時を超えた現在でも当時の面影が漂う歴史の宝庫なのです。その中にあって、ダントツの歴史と風格を兼ねそろえた存在として、地元の方々に愛され続ける神社があります。

それは、1200年の歴史を有する国宝青井阿蘇神社です。
青井阿蘇神社のホームページ:www.aoisan.jp

こちらの青井阿蘇神社は、大同元年(806年)創建と言われ、現在の社殿は相良長毎により慶長15年から18年(1610年~1613年)にかけて造営された大変味わい深い建造物です。



そして、もう一つ忘れてはいけないのが、熊本県無形文化財に指定されている兵法タイ捨流です。
兵法タイ捨流のホームページ:www.taisharyu.jp

タイ捨流は、丸目長恵流祖によって新陰流から創始された兵法で、人吉藩に伝わった系統が脈々と受け継がれています。

これらの有形・無形文化財を内包する人吉地区で、今すごいことが起きています!

それは、人吉球磨にのこる伝統文化と現代アーティストたちがコラボレーションするプロジェクトとして産声をあげ、今春イタリアにてサムライをテーマにしたエキスポ「侍うーsaburauー」を堂々開催し、かの地で大旋風を巻き起こした今最もホットな伝統文化集団が誕生したことなのです。

そしてこの度、令和元年の七夕という特別な日に、上記青井阿蘇神社にて「侍う-SABURAU- in ITALY 凱旋展」が開催されます!



当日は、地域を代表する名工兼光刀匠の豪壮な御刀に私が拵えた肥後拵も展示頂きます。武道のメッカ熊本で、しかも国宝指定の社殿にて、当方の作品を展示頂き皆さんにご鑑賞頂けることは、職方として最大の名誉であり光栄なことです。

ぜひ、今年の七夕は、熊本県人吉地区の伝統と新しい魅力が凝縮した「侍う 凱旋展」へ足をお運びください。当方の作品もお楽しみ頂けましたら幸いです。
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新作拵

2019-05-28 16:49:50 | 拵工作
年号を跨ぎ、刀剣修復と外装制作が完了しました!



時代は平成から令和へと移り変わり、新たな気持ちでご依頼者様にご愛用頂けることを願うばかりです。



さてさて今回のご依頼も、尋常ならざるハードルを越えた遥か先にゴールが見え隠れする個性的なご相談から開始しました。



お送り頂いた御刀と同封頂いた刀装具に一抹の不安を感じながらも、毎度のことながら当工房でしかできないであろう工作内容を鑑みて、お受けすることといたしました。



刀身は、打刀拵を作るには茎反りが深く、現代拵(新作?)が付属するも体配からくる弱点と強度を補う為か?柄の重ねを極限まで厚く作ってあります。ここは、下地材の厳選と柄成の調整を図れば、何とか解決できるだろう!と考え工作を開始するも、ご依頼者様より下地は再利用してほしい旨の難解なご指示に撃沈・・・。



しかも、同封頂いた縁金具は厳密な意味で縁装具ではなく、柄縁様の金具は薙刀のもので大刀に用いるには若干身幅が狭く(脇差サイズ)腰が深く、楕円形の形状からは柄成を殺してくれと言わんばかりの作り込みです。極めつけの頭金具に至っては、縁に対して異様に大きな作り込みから柄頭ではないことは一目瞭然で、江戸肥後系の鐺(泥摺り)です。さて困りました、ご依頼者様とのやり取りの中で刀装具変更への余地は微塵も感じられないことから、徹底的に刀装具へと生まれ変わらせる以外に使用できません。



本来尻に着けるものを頭に被せる罪悪感と名品に孔を穿つ罪の重さに耐えながらの工作に手が震えます。



そして刀装具上の最大の問題は、例え薙刀金具と鐺を各々縁頭に生まれ変わらせたとしても、頭が張り縁がつぼむという不格好な形状を如何にまとめるか?という課題が依然残されていることです。



上図の様な不格好さを緩和するため、目の錯覚を利用した柄成の加工と鞘のバランスの調整に挑みます。ちなみに鍔は現代製の鑑賞?を主目的に制作されたものらしく、茎櫃が真ん中になくバランスが不自然です。やむなく鍔にも加工を加えざるを得ません。ちなみに、ハバキも銀着せ一重の半ば剥離した破損品で、やむなく材料を再利用して銅一重ハバキに作り直しました。



そして、今回第二の難問は、ご当地の鹿革を用いて柄巻を施す旨のご依頼であることなのです。刀装には、古来より厳選された鹿革が用いられてきましたので、直ちにお送り頂いた鹿革を使用することが出来ず、柄革に加工できそうな業者さん巡りをする羽目に・・・。



業者さんに加工して頂いたものの色味の調整が必要であったため、さらに革紐の染色を行いました。



何とか材料が揃い、拵へとカタチを変えていきます。



斬りヒケだらけの刀身も、一旦研磨します。



サービス研磨なのであまり手を掛けられませんが、研いだ感触から言って非常に良い刀身です。



今回は、ご用意頂いた刀装具を活用することに精一杯であったため、特に掟へのこだわりはありませんが、強いて言うのであれば肥後系の拵様式にまとめました。



鐺(泥摺り)は、鉄刀木で一から削り出しています。



最後にお祓いを済ませて納品です。ご依頼者様に気に入って頂けることを祈るばかりです。



なお、今回は北国からのご依頼でしたので、白鞘は通常のものよりもかなり厚めになっています。
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刀剣ツアーガイド

2019-05-12 11:49:30 | 徒然刀剣紀行
昨日、令和初となる鎌倉刀剣ツアーを開催いたしました!



この度のツアーは、博物館で刀剣のご案内をされている方々の集まりということで、皆様のご要望にお応えする形でツアーコースを設定いたしました。


絶好のツアー日和、ご参加者様も刀剣に造詣の深いご一行様となれば、否が応でもテンションが揚がります!

ツアーの特設ルートは以下の通りです。

 北鎌倉駅 - 円覚寺 - 山ノ内地区 - 源氏山 - 扇ガ谷 - 建長寺


この場所に立つと、鎌倉に来た!という感慨が深まります。

令和最初のツアーということもあり、新たな気持ちでガイドを務めさせて頂きます!
今回も、円覚寺からスタートです。円覚寺では、製鉄に関する謎かけや伝承をご案内しながら、三門(山門)-大光明宝殿-正続院前-白鹿洞-梵鐘(洪鐘)のルートで回りました。

次に、山ノ内の藤源治周辺を散策しながら山道を登って源氏山公園へ、各自お弁当を食しながら主催者様が手作りなさった美味しいお惣菜のご相伴に預かりました。
藤源治では、相州伝の発祥に関する謎解きをご案内!


材木座海岸が見える見晴らしの良い高台にて、皆さんと記念撮影をさせて頂きました。

食後は、化粧坂より源氏山をあとにし、扇ガ谷方面へ。
ここで痛恨のミス!道を間違えてしまい、浄智寺方面への登山道を見失ってしまいました。ガイド失格です(涙)



というわけで、やむなく海蔵寺周辺のゆっくりした時間の中で、建長寺塔頭の禅居院前でお話しする予定でいた最後の謎解き(正宗伝説)をご紹介。

ツアーはここで終了と相成りました!

結局ご一行様は建長寺へ行かれるということで、亀ヶ谷坂切通しから長寿寺の横に抜けるルートで北鎌倉方面まで同行させて頂きました。

途中、当方の至らぬミスにより、皆様の体力と時間を消耗してしまい恐縮ではございましたが、そういったハプニングも含めて楽しんでくださったご様子でした。
ツアー中、尊敬する鎌倉ガイドさんとも少しだけお話しする機会に恵まれ、充実した一日を過ごすことができました。ご参加くださいました皆様には、この場をお借りしましてお詫び方々お礼申し上げます!


またの機会を楽しみにしております。
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週刊日本刀

2019-03-02 13:39:12 | ブレイク
試験販売中の雑誌が届きました!



タイトルはズバリ「日本刀」、しかも週刊誌です。

今年に入ってから何度か取材にいらっしゃって、全くの未知な分野に手探り状態といった印象を受けました。



私の作業風景も掲載頂いております。

只今試験販売中のため、購入できる地域が限られているそうです。読みたくても読めない!買いたくてもどこで買えばいいのかわからない!という状態が続いているらしく、大変レアな存在なのだとか。
ですが、わりと読み応えのある内容ですので、ご覧頂ける方はお近くの書店で探してみてください!
今後の評判次第で、全国に販路を拡大する予定もあるそうです。ぜひ、末永く全国販売を続けてほしいと思える新しい週刊誌の産声を聞くことができました!

週刊日本刀の特設サイトはこちら
https://deagostini.jp/ndfmt/


ちなみに、こちらは昨年地上波にて放映頂いた「ニッポンお仕事図鑑~匠の仕事場~」での一場面です。



下記リンクのYahoo動画サイトより、ご覧いただけます。
https://videotopics.yahoo.co.jp/video/stove/192720

昨今の刀剣ブームが、一過性の流行で終わらないといいな~と願う一職方でした。
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刀剣外装の個性

2019-02-14 02:15:22 | 拵工作
先日納品を終えた刀装です。



昨年、お客様が工房に持ち込まれた錆身の中にその御刀はありました。



見るも歪な刀装は、鞘の長さに比べて柄前が極端に短く、柄巻は素人の手による不格好さだけが目立つひときわ薄汚れた様相を呈していました。



それでも、鞘の変り塗りには目を見張るものがあり、鞘の形状は重ねをギリギリまで薄く作り込み、刀装具に至っては薄汚れてはいるものの生れの良さが垣間見える不思議なオーラをまとっていました。



刀身を抜き放つと、古研ぎにより曇った刀身には部分部分に赤サビがまとわりつきお世辞にもよい状態とは言えませんでしたが、明らかな南北朝期の刀身に古刀然とした地金、焼き刃に至っては直刃調の働きに溢れた古名刀でした。
若干茎をつまみ底銘となるも古風な二字銘が確認できる雰囲気の良い御刀です。



何でも、欠点が多く処分価格で店頭に転がっていた一振りで、ご依頼者様が「ならば!」と購入されたとのこと。

刀剣の欠点の中で最も嫌われる条件は、「健全でない」ということに尽きます。この御刀の場合は、刃切れという刃紋の断絶が刀身に表れていることが致命傷となって美術刀剣としての取り扱いを得られないまま放置されていたのでしょう。(ちなみに刃切れについてですが、古来よりその部分から刀身が折れやすいなどと言われてきましたが、実はさほど性能に違いはないそうです。)

ところがご依頼者様は、武道をたしなむがゆえに刃切れ承知でお買い求めになり、こうしてわが方まで何とか使える状態に修復したい旨のご相談でお見えになりました。

今まで、刃切れがあるがために打ち捨てられた刀剣を幾たびも見てきた私としては「やられた!」と、この度のご依頼者様の心意気に打たれてしまいました。



こんな粋な仕事を果たすために、私は長い時間を費やして修復家の道を志したことを改めて思い起こし、熱いものがこみ上げてきたのでした。

となれば、直ちにも修復に取り掛からなければなりません。当工房では、基本的に直請けのお仕事しか頂かない関係上、上記の様に使用者様との直接の会話が可能なのでご依頼のいきさつやお考えをお伺いすることができます。また、納期の厳密な期日を定めていない関係上最低限のお代を頂くに過ぎないのですが、一つの工作に掛かりっきりになってしまうとたちまちに赤字仕事になって生活が成り行かなくなってしまいます。というわけで、今回の仕事は赤字決定(笑)。

それでも、ご依頼者様の粋な心意気にほれ込んだお仕事であり、打ち捨てられる可能性が高かった古名刀が命を吹き返す瞬間に立ち会えるわけですから、この仕事の醍醐味を味合わせて頂きました。



鞘の配色に重きを置いて、拵全体の色味の調整にこだわりました。





まず、劣化の酷い柄前を分解します。案の定、柄下地には亀裂が走り、武道用途など危険極まりない状態でした。



鞘の長さに合わせて頃合の長さの柄下地を作成!



もちろんご依頼者様の好みの柄長、操作性、目貫の位置、バランスの調整が念頭に置いての作業になります。



掻き流しの樋の形状に合わせて下地の内側を掻き入れていきます。



昨今の職方は入口周辺のみでよいといった解釈をしている場合がありますが、ギリギリまで樋に添わせて下地との密着度を高める努力が必要です。次に、鮫革を腹合わせで総巻きに包み、漆で塗り固めます。この時、鮫革を固めるための漆、色味を調整するための赤みを帯びた漆、表面に塗る漆の三種類を用いて、拭き漆仕上げとしました。特に大きめの親鮫などは擦れて下層に塗った朱色が顔を出す寸法です。



最後に、鞘の色に合わせて染色を施した柄糸を諸摘み技法で巻き上げました。



今回の染色では、鞘の色に合わせることはもちろんのこと経年による汚れを加味して若干明るめの色調に抑えました。



これから何年もご使用頂く中で、より柄糸の色味に深みが増していくことを期待しています。





おっと、忘れてはいけません!刀身の所々に噴き出た錆を除去します。
部分サビというものは、想像以上に刀身にダメージを与えています。今回の御刀は、南北朝期の刀身であったためサビが深く入り込むことがなかったものの、特に錆の酷かった横手周辺は備水砥まで戻って研磨を施しました。



*:今回の工作では全体的に朱色の刀装に仕上げましたが、全く違う方向性で対極になる色味の柄前を作ったとしても、刀装のイメージを汚すことはありません。むしろ、本来はもう少し柄前が自己主張をする様な刀装であったと思います(ただの憶測)。



これにて色味の調整を施した刀装の修復は、終了です!
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熊本復興拵(こしらえ)

2018-12-20 19:04:50 | 拵工作
ユニークなアイデアをふんだんに盛り込んだ肥後拵が、完成しました!



実に長い時間がかかってしまいましたが、まずは純粋に完成を祝いたいと思います。



この度のお仕事は、刀匠さんからご指名を頂き、ご依頼者様が遠方遥々ご来訪頂くという大変珍しくも有難い、私の人生にも大きな影響を与えることになったご依頼です。



ご依頼者様にお会いした時、お時間の許す限り「この御刀がなぜ作られたのか」、「どのようなお考えでご依頼に至ったのか」、「どれほど多くの思いが詰まった御刀であるか」等々一連の事情をお伺いし、その重みに触れるにつれて目頭が熱くなるような気持ちで刀身をお預かりしました。



思えばその瞬間から、私とこの刀との奇妙な共同生活が始まったのでした。



この数年間、片時も傍を離れることなく寄り添い、目が合うたびに話しかけ、共に酒を酌み交わし、時には夢中になったり疎ましく感じたり・・・、もはや物と生の垣根を超えた友と化したかのような錯覚に陥りました。(実は同じような事情で、なかなか工作が先に進まない御刀があと数振りあるのですが、それはまた別の機会にご紹介します・・・。)



というわけで当初、生半可な気持ちではお請けできないことからご依頼をお断りすることも考えた程でしたが、考え方によっては「これ以上の職人冥利に尽きるご依頼はないのでは?」と考えるに至って、正式にご依頼をお引き受けすることになりました。



始めの1年目は、ご依頼時に伺っていた設計で制作を開始するも、作業半ばで大幅な指示の変更があり、それまでの材料が無駄になるというハプニングもあったものの、仕切り直しで一から構想を練り直し設計を見直しました。



難易度の高い工作になればなるほど、「より良い外装に仕上げるのだ!」と気合を新たにして、果敢に挑み続ける楽しみが増えます。



新しい指示は、当初の詳細な指示とは裏腹に、ザックリ「昆虫」(鞘はハチの巣をイメージ)という方向性で作り上げることになりました。



ご依頼時からご予算の都合が全く成り立っていなかったことと、制作期間中に発生した熊本地震への復興のために何かお手伝いができないものか?という個人的な考えとが相重なって、この度の御刀が現地の復興の手助けになるのでは?という自分勝手な考えが芽生え始めました。
ここは一つ「資金集めから始めるぞ!」という、強い意志が育ちました。



ここで刀剣工作から少し脱線して、震災復興の話をさせて頂きます!


東日本大震災で甚大な被害をうけた女川町の現在

昨今、日本中で頻発している地震による被害は甚大で、不幸にも被災された多くの方々は今だ過酷な状況下で生活しています。特に東日本大震災を皮切りに、平成28年(2016年)の熊本地震、今年の北海道胆振東部地震と、各々震度7を観測する大地震が日本各地で発生しており、未曾有の災害に見舞われた地域では、復興に向けた取り組みが必ずしも充実しているとは言い難く、九州や北海道は首都圏から離れた地域ということもあって、もはや震災があったことすら忘れかけている人たちも多いといった有様です。

そんな各地方に長く根付いていて地域の文化圏と切り離して考えることができない伝統的な文化の中に、古流剣術などの武道が含まれています。そこで私は、復興の陰で二の次にまわされがちなご当地の伝統文化を守ることも、長い目で見て必ずや震災の復興に繋がると考えるに至りました。



この度、足りない資金はご当地体験をビジネス化している旅行会社さんの協力の元、近隣学生さんたちのお力添えで、鎌倉の製鉄文化を紹介するツアーを開催して資金を調達することにしました。



もちろん一工芸職人が始めることですから、右も左もわからない手探り状態の中からの出発でしたが何とかご好評頂き、回を重ねるごとに自分自身楽しませて頂くことができました。特にうれしかったことは、リピートを希望される方が圧倒的大多数で、数多くのお礼の言葉を頂けたことです。



ツアーにご参加頂いた皆さんには、ツアー終了後に参加費を熊本の復興に用立てさせて頂く旨のご了承を頂き、何とか材料費を工面することができました。



次に、実際の工作に移るわけですが、今回の設計は試行錯誤の連続でした。



刀身は、現代名工の渾身の打ち下ろしで、豪壮な作り込みから奉納刀かと見紛うほどでしたが、実際に武道にお使い頂けるようにバランス調整や手持ちの改善を施していかなければなりません。



注目して頂きたいのは、研ぎ出し鞘の意匠です。



仕切り直し後の新たなご要望は『ハチの巣』ですので、まずは鮫革を細かく六角形に切り出してパズルの様に組み立ててみました。ところがこのままいくと全面を覆うころには部分部分で歪なパズルが生じてしまい、どうにも不格好なためボツ。



次に、正確にサイズと角度を計算しながら、大きめのモザイク画を作る様に当てはめてみました。完成度の高い外装に仕上がるものの、朴訥とした武骨な表情が影を潜めて美しいばかりの拵になってしまいました。さらに、貼り合わせた鮫革が一部剥離するなど、強度面の欠点が浮き彫りに・・・。



次に、問題点を洗い出し、貼り合わせる鮫革のサイズを強度に耐えうる最低限のサイズに仕上げてみました。出来上がった鞘は、デザイン性がどうしても私の美的センスとかみ合わず、あえなく破棄。どうやら発想を切り替えて、ハチの巣をデフォルメする必要がありそうです。

最後に、指し裏には強度を、指し表には意匠性を取り入れて、色味を調整しながら研ぎ上げたのがこの鞘です。



本来、鮫革の合わせ目は裏側にきますが、逆転の発想で合わせ目を意匠に仕立てて相反する強度とデザインを両立させる試みに挑戦しました。



結局、鞘5本分の材料を無駄にしながらも、何とか完成しました。



今までに作ったモダンな鮫の研ぎ出し鞘の技術を応用して、今までにない肥後拵に挑戦したわけですが、本場の愛好家の方々に快く受け入れて頂けるのか?は全くの別問題です。



「これは肥後拵ではない!」と言われてしまえば努力は無駄になってしまいますし、伝統的ではないという批判があればご依頼者様にも迷惑をかけてしまうかもしれませんので、一種の賭けになります。



それほど、〇〇拵という伝統的な様式美は踏襲が難しく、巷にあふれるナンチャッテ拵がいかに出鱈目な代物であるかということを改めて知って頂きたいと思います。



今回独自の試みとして、公共性の高い使われ方をされるであろう御刀の工作代を、工作の対価以外のカタチで捻出することで、伝統工芸の社会的価値を広く知って頂く機会になればと思い活動を行いました。



批判もあるかと思いますが、この機会にニッチな工芸分野の存続の意味について、考えて頂く切っ掛けになりましたら幸いです。



さらに、熊本の復興に一役かってもらおうなどと大それた企みは、物言わぬ刀剣に勝手に役目を押し付ける行為であって大変罪深いと思いますが、そうでもしなければ拵えの完成は絶望的であったことから、御刀には申し訳ないのですがもう一仕事かって出て頂こうと思います。

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短刀拵のバランス

2018-12-19 00:24:48 | 拵工作
日本刀は、硬軟多様な鉄からなる鋭利な刀身と、刀身を保護し使用に耐えうる外装(刀装)とからなる総合芸術品です。

刀剣の美意識は、長い時間をかけて確立した独特の湾曲と、刀身を研ぎ磨くことによって鑑賞を可能にする研磨技術、そして使用感の改善と刀身保護の役割だけでは収まりきらない刀装の意匠性とが相まって「実用の美」を醸し出しているところに魅力があるのだと思います。

事実!実用品であるからこそ美術品としての立ち位置に収まりきらず、今日でも世界中の愛刀家を引き付ける引力を保ち続けているのです。私は、「実用の美」を内包していない刀剣には存在の価値すらないと思っていますが、戦後の日本刀は美術刀剣として取り扱うことが法律で定められているため、現代の定義に引っ張られるように工芸家も美術品として刀身及び刀装を制作しているというのが現実です。

結果的に実用性のない不実な美があふれ、本来の刀身や刀装の性能が軽視されていると感じています。当工房では、日本刀を実用品として使用感や性能を最大化する技術を継承し発展させる努力を続けているため、刀剣に対する考え方も極力実用品として捉えるようにしています。

この度の短刀は10年ちかく前にお作りした作品で、制作当時に操作性を意識して使用感の改善とバランスの調整を施しています。過去記事はこちら


納品当時の写真

長い間ご依頼者様にご愛用頂き、擦れや経年のキズなどは見られるもののほぼ制作当時のままに機能してくれています。


修繕前の状態

ところで、ヤフーさんのウェブサイト提供サービス終了に伴い、ホームページを一時的に閉鎖させて頂いたのですが、画像類の保管場所に使っていたため古いブログ記事の写真が読み込めなくなってしまいました。折を見て再度更新していきたいと思いますが、何分古い写真なので見つからない可能性もございます。ご来訪くださった方々には大変申し訳ございませんが、精一杯修復に努めますので、その旨ご了承の程お願い申し上げます。



目に見えない箇所の状態も確認するため、一度柄前をバラバラに分解して、再度組み上げました。



今回は、大刀の柄糸に合わせて同じ柄糸で柄巻を施し、大小として御刀を佩びて武道の稽古に用いて頂きます。



この拵えは、復古調の外装様式を取り入れてお作りしましたので、柄成にも気を配りました。



柄成が、鍔元からグッと折れ曲がる様に湾曲しているのがわかるかと存じます。古作の短刀などに見られる振袖茎の刀身に着せた外装様式は、このような形状であったと考えられます。



柄頭を地面に垂直に立てると、より腰反り感が理解しやすいです。例えるならば、蕨手刀の様な形状に仕上がっています。



柄を外すと、実は茎はまっすぐの形状で、茎反りなどはありません(新々刀刀身)。意図的に、刀身とは違った形状を外装で作り出しています。
日本刀のバランス感は、刀身の形状・使用用途・時代考証など、狙った様式によって著しく左右されます。今回の拵えは幕末に流行した復古調の外装(腰刀や鍔刀の写し)を狙ったため、このような形状に仕上がっています。ようは、何を意図するか?誰がどのように使用するか?によってバランス感は大きく変わりますので、ご参考までに!



鞘の形状にもこだわっています。通常の鞘の半分ほどの重ねに仕上げてあります。長時間身に佩びていても疲れにくいカタチに仕上がっています。今回は、鞘には一切手を加えていません。

次の10年も、遜色なく機能を続けてくれることでしょう!
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用途に合わせた刀剣外装

2018-11-01 03:26:05 | 拵工作
経年により破損した刀剣外装の修復です。



刀剣外装の中で、破損が致命傷になる箇所は、柄前です。

特に柄下地に亀裂や劣化が見られるケースでは、下地を新たにお作りする以外に性能の改善を図ることは難しいです。

今回も、柄下地が破損しており、武道の稽古に用いるにはとても危険な状態でした。
そこで、刀装具はそのまま流用して、柄前を作り変えることになりました。



今までの柄前の使用上の欠点や問題点を洗い出して、新たにお作りする柄前の設計を練り上げていきます。



今回は、柄成を変更し、柄の長さをご依頼者様の好みに調節します。



また、柄の重ねと幅もより実用的に修正を加えました。



今回も、拘りをもって漆黒の外見に作り変えました。バランスや手持ちの良さを考えて、同時に鍔も変更、責金加工を施して取り付けました。



柄前の形状(柄成)にはいろいろな種類がありますが、好みに応じて選べるのか?というと必ずしもそうはいかず、刀身の性能を最大限に生かすための形状、使用者にとって使いやすい形状、外見上のバランスなど、様々な制約のある中で掟を勘案しながら選択します。



写真の刀装はすべて黒漆の打刀拵ですが、柄成は上から立鼓・刃方一文字・諸反りになります。おおよその形状は、刀身に依存していることが分かりやすいと思い並べてみました。

一見同系統の外装にも、個性があることをご覧頂けましたら幸いです!
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