徒然刀剣日記

美術刀剣拵工作工房

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

白鞘の補修と機能回復

2018-04-13 00:54:13 | 拵工作
白鞘の補修が終わりました!



白鞘とは、刀剣の保管に用いる木工芸品(外装や刀装の部類には入りません)で、それ自体には武器としての性能はありません(このあたりは、お暇な時に過去のブログ記事をご参照ください)。
世の中のほとんどの刀剣は、白鞘に納まった状態で受け継がれたり、販売されたりしています。長年の放置や手入れ不十分により保存状態の悪い刀剣は、真っ先にこの白鞘に異変が生じますが、今回の御刀もご多分に漏れず一見で危険信号を感じました。
まず、鞘部の鯉口周辺の繋ぎ目が割れてほぼ開きかけており、輪ゴムなどで辛うじて白鞘の形状を保っているといった按配でした。

早速、刀身を拝見すると、無欠点の新刀脇差しが現れました。近年に研摩が施された健全な状態で、白鞘とは裏腹にものすごい名刀の出現です!
こういう瞬間が、この仕事の醍醐味でもあります。
これだけの名品を作り出せる巨匠は、史上数えるほどしかいません。消去法で、出羽大掾か越中か、はたまた仙台か南紀か、迷った末に京物とみて下を見るもアウト~!仙台の名脇差でした。
常に見る国包の作域とは若干違い、古名刀を狙った注文打ちを感じる作域です。ここ数年、無銘から偽名までやけに北国の作品が当工房へ持ち込まれます。これは邪推ですが、先の震災が一因ではないか?と思います。

さてさて、今回の症状について職人目線で解説しますと、お持ち込み頂いた段階で鯉口が完全に納まらないことから合わせの白鞘を疑いましたが、白鞘を割ると反りや作り込みの形状は刀身とほぼ同じでした。ただし、今までに見たことがないほど錆が内側にビッシリと移っています。以前の状態が、全身赤茶けた鰯状態であったことを物語っています。


内側の変色具合が、錆の移行度合を示している。

この点、上記の通り現代研摩がなされていますので、ちょっと疑問に感じます。本来、日本刀は研摩毎に白鞘を新調します。特に錆が酷い状態であれば、職人サイドから白鞘の新調が必要である旨の助言があってもおかしくありません。あまり考えたくないですが、あえて錆が移った古い白鞘を着せることで、短期間で刀身に貰い錆びを発生させて再研摩を要求する悪意ある手口かもしれません。


分解直後の画像その1、小鎬周辺の錆の移行が厳しい。

次に、鯉口が納まらない理由については、白鞘工作当初から収まらなかった、経年変化による木材の歪みによって納まらなくなったということは考えにくく、ハバキが変わっている可能性が高いです。この説を裏付ける様に、現在装着されているハバキは呑み込みのない太刀ハバキで、白鞘の鯉口裏側を削って調べたところ金サビが認められました。おそらく鰯状の発見当初は金無垢のハバキが付属していたのではないか?と思います。


分解直後の画像その2、幕末頃の白鞘であるが全体的に雑な工作。

結局今回の修復作業では、白鞘を新調したほうが早いほど手がかかりましたが、時間をかけて入念にサビを除去しました。



ここで、申し上げたいことは、研ぎ上がりなのに古い白鞘を着ている御刀には気をつけて頂きたいということです。時々、「古い白鞘だからさぞや名刀!」といった解釈をされる方をお見受けしますが、古い白鞘であれば放置されていた期間が長い可能性があり、近い将来白鞘内部からの貰い錆による刀身の破損の危険性があるということも念頭に置いてください。
もちろん、古い白鞘を修復する物好きな職方の手がかかっていれば話は別ですが・・・(笑)。



以上、刀剣購入の参考になりましたら幸いです。
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

新作拵と研摩

2017-11-12 13:14:53 | 拵工作
長らくお預かりしている御刀の工作を終えました!
お待ち頂いているご依頼者様には大変心苦しいのですが、毎度ながら手が遅くて申し訳ございません!

この度のプロジェクトは、ご依頼者様に刀身と刀装具をご用意頂き、新たに刀装を拵えるお仕事です。



お持ち込み頂いた御刀は、本職ではない器用な方?が刀身を研摩されたかと思う様な極端な部分的な痩せ方をしていて、指裏の消耗が激しいため整形が難しい案件でした。



まずは、ハバキを白金師さんに依頼し、色揚げは何度か当工房で調整しました。



刀身を名倉まで研ぎ進めた段階で、鞘師さんに白鞘とツナギの製作をお願いしました(通常は、改正までで別作業に移ります)。その後、いよいよ刀装具の微調整と拵え下地を作成します。



刀装具の調整では、鍔に責め金を作り、古い切羽を用いました。切羽は、刻み加工なしで新規作成する旨のご指示を頂いていたのですが、作ってみたところ何とも味気ない仕上がりで拵え全体の雰囲気を崩すことから、都内の刀剣商を回ってサイズの合う骨董品を探し、加工取り付けしました。



柄前は、最上級の親鮫を配した鮫皮を総巻きに背合わせで貼り、柄糸を限りなく黒に近い深緑に染め上げて、諸摘みで巻き上げました。



刀剣外装の命といっても過言ではない柄成の調整にも、余念がありません。
鞘の栗型は江戸時代の物を流用して、新物では再現できない微妙な造形美を移植しました。



今回、最も時間が掛かった鞘の塗りです。細かい黒石目ですが、ただ漆黒というわけではありません。ご依頼者様からは、「ただの黒ではつまらないので…」とお伺いしていたので、海老茶の上に黒石目を撒きました。
はじめに焦げ茶の上に同様の塗りを施したのですが、あまりにも「ねらいました!」という表情が模造刀のような品の無さを感じさせるので、ハバキの色と同系色の柿色を配合して塗ることで、ほかでは見ない色合いに挑戦してみました。



とても長い時間がかかりましたが、完成です!

納期のお約束を頂いていないありがたいお仕事は、どうしても急ぎ仕事が割り込んでしまう関係上完成が遅くなります。度々様子見のお問い合わせを頂戴しますが、けっして放置しているわけではありません。もちろん、手抜きも一切ございませんので(むしろ、時間的束縛がないので入念に工作しています)、その旨ご了承くださいます様お願い申し上げます。
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

脇差の再生(修復と再現の間)

2017-10-08 02:43:47 | 拵工作
室町期の刀身と付属の江戸期の刀装の修復が完了しました!



今回は、刀剣愛好初心の方からのご依頼です。そのため、刀剣がただの刃物の延長線上にある作品ではない!ということを体感して頂けるように、日本刀が歴史そのものを実体化した文化的存在であることを紹介していきたいと思います。
この度の修復で特に意識的に力を入れたことは、作刀時の雰囲気を再現することに重きを置きました!



柄前にいたっては、棒柄状の柄下地を廃して下地から新たにおこしました。付属の鞘(北国の作域を感じますが定かではありません)の形状を殺さない様に、極限まで鍔元から柄成りに動きを付加し、使用時(戦闘時?)の刀身と柄前への負荷、使用者の疲労感を逃がすための加工を施しました。

この刀身は、室町時代に一大生産地として繁栄を誇った三原の地で作られた実用刀です。今日古刀というと、どうしても五ヶ伝を始めに想像してしまいますが、それはあくまで便宜上定められた統計学的な分類分けであって、当時の日本には思考や言語、文化や刀剣の用途に至るまで、大きな地域差があったと考えられます。

苦労した点は、鞘の鯉口の径よりも、若干柄縁の外径の方が大きいことから、据わりをよく見せる為に四苦八苦したこと。また、目貫があとから手元に届いたため、想像していたイメージが崩れてしまって、何度か調整を余儀なくされたことです。(後から設計の変更が加わると、刀剣のバランスを崩す可能性があるので、極力避けたい工作です。柄下地製作時の記事はこちら(ameba-blog:柄前の作り替え)。)



付属の外装は、江戸期の道中脇差の様な一般的な作り込みです。この手の刀装は、戦国期の本歌拵えに見られるような戦闘上の工夫や機能性を持っておらず、日常生活に支障をきたさないような作り方に終始しています。ある意味職方の用途への配慮を感じますが、今回目指す設計とはかけ離れています。

今回は、「戦国期の片手打ちの外装は、このような作り込みであっただろう」という考証に重点を置いています。



もちろん刀装の据わり感だけを調節したのではなく、抜刀時に鞘を払った状態での雰囲気にも配慮して研ぎ方を何度か変更しました。当初は、菖蒲造りの刀身に掟通りの鑑賞研摩を行いましたが、鋭利感をより強調するために肌を抑えて地を沈め、横手を切ることで武器感?を強めました。



刀身研摩時の記事へはこちら(ameba-blog:伸びごころの切先について)

私は、刀剣の命はトータルバランスにあると考えていますが、今回も設計段階から目指す表情を定めることで、前出の通り時代考証に努めつつ実用の美が表現できる様に努めました。

追記:柄前作り替え時に、アンバランスな鍔を小さめの鍔(+責め金加工)に変更し、バランスを調整しました。

後はお祓いを済ませて、納品するのみです!
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

鎧通しの修復

2017-08-15 22:28:06 | 拵工作
可愛らしい短刀の修復が完了しました!



この御刀は、発見届けの段階からご相談を頂いており、登録証の発行後直ちに修復を開始しました。


当初の状態は、お世辞にもよいとは言えませんでした。

刀身は全面に錆が深く朽ち込み、付属する匕首拵えは栗型が欠落し、柄巻きは脱落、キズと汚れが全体に著しく、修復は困難が予想されました。


まずは、刀身の研磨を施しました。

可愛らしい短刀拵えとは裏腹に、中身は鎧通しと呼ばれる殺傷力の高い刀身です。


今回は、白鞘とつなぎを新たに作成しました。


拵えには、同じ時代の栗型を用いて修復し、柄前には柄巻きを施しました。


最後に微調整を施して、お祓いを済ませた後に納品です。

あともう少し!最後まで気を抜かずに修復に努めたいと思います。
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

新作拵とあそびごころ

2017-04-20 11:29:24 | 拵工作
新しい拵えが完成しました!



寛文体配の長大な御刀です。健全そのものの刀身です!茎には長文の金象嵌裁断銘があり、歴代の所有者が如何に大切に扱ってきたかが一目で判ります。



私は、鑑定書にさほど興味はありませんが、次回の重刀審査に間に合うように思います。



ズシリと重いため、当初居合には不向きでは?と思いましたが、拵えでバランス調整に取り組んだ結果、十分使用可能であろうと感じます。



ご依頼者様よりお預かりしていた刀装具は、当初どうしても刀身に合わなかったため、何度も相談を重ねました。



刀身との相性やバランスとの兼ね合いで、必ずしもお持ち込み頂いた刀装具が使用できないということもあります。



拵えは、飾りではありません。刀剣と使用者を繋ぐ唯一の装置であり、使用用途に即した工作でなければ本末転倒な作品に陥りがちです。



特に柄前は、刀剣外装の顔に値します。所有者を表す大変重要な装置であることから、品格を加味する工作が必要です。



昨今、雑な柄巻きを施した安価な工作が横行していますが、武家の価値観に接するのであれば、避けたい工作です。



工作内容を挙げるとキリがないのですが、鞘には様々な工夫を凝らしました。
くり型は、ご希望によりシトドメを施さず、内側に金泥を塗りました。



コジリ寄りには、闇蒔絵により拵えのストーリーに関わる意匠を施しました。
拵え工作時には、刀身との兼ね合い、用途との関係も重要ですが、ストーリーを持たせることもトータルバランスの調整に寄与します。



鯉口には、ご依頼者様のお持ち込みになられた銀製のメモリアルプレートを加工して鯉口金具を作成しました。くり型の内側同様、鯉口部には金泥を塗りました。見えないところに金を乗せます。



蝋色黒蒔絵鞘、正絹諸摘み巻き、源氏物語拵えといった名称でしょうか?
鮫皮は、日頃手にすることのない大きな親鮫を配した高級品を、総巻きに着せました。

朝からお払いの儀を執り行ない、ただ今ブログを更新しています。
ご依頼者様に喜んで頂けることを、とても楽しみにしています!
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

天正拵

2016-09-13 11:39:44 | 拵工作
時代拵えの掟を踏襲して作り上げたお刀が完成しました!



日本刀には、時代・地域・作者などによって、様々な種類があります。
中でも慶長時代以前に作刀された刀身は、政情の不安定や街道の不整備によって、材料・技術・考え方に至るまで地域毎に独自の発展を遂げたと考えられます。
また、刀身に様々な種類があるのと同様に、外装に関しても数えきれない程の様式や掟が存在します。

それら様々な種類の中で、一つ大きな違いを挙げるならば、美意識とでも言うべき武家のモノに対する考え方があります。
武家の美意識を、最も形に表現することが出来る身近な道具というと、衣類や甲冑・刀剣類といった身にまとうモノです。
特に、私は刀剣の外装に、各時代・所有者の嗜好・各々の美意識が反映していると考えています。



今回お作りした拵えは、天正時代の典型的な拵えの掟に従って作り上げた、通称「天正拵」と呼ばれる外装です。



お客様に刀身と刀装具(柄縁・鍔・目貫・小柄・笄)をご用意頂き、他の部品(柄頭・時代切羽の加工・栗型・返り角・コジリ)は当工房にて1から製作しました。柄巻きは、鹿皮を厳選し最も強固に仕上がるものを取り寄せました。



鮫皮には、漆を何重にも塗り重ね独特の色合いを作りました。
この技法は、拭きうるしなどと言い、この度の拵え様式が流行した天正時代頃にも頻繁に用いられた塗り方です。強度が増すことで強靭な中にも色の深みが現れることが特徴です。



刀身は、大磨り上げ風の茎にゴロンとした肉置きからドッシリとしたバランスのため、若干柄前の形状を厚めに仕上げてバランス取りを図りました。



この度の外装の最大の特徴は、鞘の両サイドに設置されたポケットです。それぞれの櫃穴には、小柄・笄(こうがい)が収まるように作られています。天正鞘とご用意頂いた笄の時代が違うことによる形状の不一致で、若干笄が飛び出して見えますが、鞘の掟を優先しました。



小柄は、ちょっとやそっとでは飛び出さないように硬めに固定しました。よく本歌の拵えで、小柄がグラグラになっているものを拝見しますが、本来はガッチリと固定されています。
日常的に帯びる刀ですから、小柄がスルスルと飛び出る様なことがあっては、大怪我の元です。



この時代の鞘塗りは、本来は花塗りであっただろうと考えています。
そのため、炭研ぎを最小限にして、温かみのある光沢に留めました。



返り角の設置は、武道用途での使用では邪魔になることが多く、工作も難しいことから、今日の拵えではあまり取り付けることがありませんが、観賞用の外装ではポピュラーな工作です。



両櫃を備えた鞘といえども、長時間帯刀した状態でも身体に負担がかからない様に、形状を計算して工作する必要があります。

この度の工作では、時代拵えの掟を踏襲しつつ、実用の美を表現し、かつ鑑賞に堪えられる目的で製作したことが、最大の特徴です。
コメント (2)
この記事をはてなブックマークに追加

刀身を活かす柄前

2016-07-04 22:49:46 | 拵工作
しばらく付きっ切りで修復を施していた柄前が完成しました!



そもそも修復とは、一定水準以上の技術が注ぎ込まれた作品を、経年劣化などで破損した箇所を補修し、再度本来の性能を引き出す工作の事を指しますが、今回のご依頼は一筋縄ではいきませんでした。



元々工芸家の手によるものではなく、どこから手をつけて良いやら全く見当がつないことから、時間ばかりが過ぎていくという職人泣かせな作業でした。



下地から作り直した方が断然簡単な仕事でしたが、ご依頼内容がどうも判然とせず、手探り状態が続きました。



現状の柄下地を活かすには、一度染み込んだ溶剤や接着剤を完全に除去しなければなりません。
鮫皮からもラッカーを完全に除去し、強度の補強の為に漆で塗り固める方法をとりました。



柄成りは刀身のスペックを引き出せるように若干肉置きを蛤型に整え、柄糸を幅の狭めのものを用いることで補強と使用感の向上を重視しました。



今回、あまりにも雑な拵えを修復するということもあり、通常の倍ちかい時間がかかってしまいましたが、修復前の様にすぐに壊れてしまう外装では安全に武道の稽古もできませんので、じっくり腰をすえて取り組ませていただきました。

結果、何とかカタチになってくれましたので、職人としてはまずは一段落です。
コメント (4)
この記事をはてなブックマークに追加

刀剣外装のお直し・リメイク

2016-05-16 02:23:28 | 拵工作
拵えのリフォームが完了しました!



この度のご依頼は、近年に別の御刀のために拵えられた外装を、お客様の愛刀に着せるという変わったお仕事です。(注意:時代の上がる外装を着せることはできません。鞘の中に錆が落ちている可能性もあり、外装から刀身の破損が進行することがあるからです。)



全く別の刀身のために作られた拵えですので、偶然でもない限り無加工で取り付けることはできません。今回はご予算が限られることと、ある程度鞘の反りが合うことから、極力拵えを生かしたリフォームに挑戦します!



鞘は、この度の御刀よりも若干腰反りの体配(現存するツナギからも、このことが伺えます)であったことから、鯉口の角度を修正して新たに鯉口を作りました。



柄前は、一度バラバラに分解し、刀身に合わせて下地から作り直します。
(時々、柄の中を専用のヤスリで削ったり、詰め物をして刀身に合わせる加工をする業者や職方がいますが、居合や抜刀に用いる場合には避けたい工作です。)



この際に、刀身に合わせることはもちろんのこと、使用者や用途に合わせて仕立てることも重要です。今回は、以前の状態よりも柄下地を薄く仕立てましたので、新たに鮫皮の加工が必要です。



この手の工作では、鞘の形状がそもそも刀身の体配に合っていないことから、納めた状態で柄前と鞘の位置が若干ずれるという問題が発生します。
拵えの据わりが悪いということは、職方としては一番気になってしまいます。
当然ながら、新しい鞘をオーダーされた方が、拵え全体のバランスと言う意味で完成度が上がりますが、限られたご予算の中で極力良いものをお作りするためには、外見のスマートさよりも使用感や安全性の向上に注力します。
用は優先順位を明確にし、重要な箇所に技術を集中させる踏ん切りが必要になります。
特に鞘は消耗品ですので、今回は将来的に新しい鞘に変えることも視野に入れて柄前を製作しました。もし、現行の鞘に合わせて柄前を仕立ててしまうと、新しい鞘に変更した時に、またもや柄縁と鯉口の位置がずれて不恰好になりかねませんので、長い目で見たリペア性も加味して工作します。

あとは、納品を待つばかり!
コメント (2)
この記事をはてなブックマークに追加

脇差し拵の作り替え

2016-01-24 00:24:24 | 拵工作
昨年末から取り組んでいる脇差しの修復です。



いよいよ納得のゆく仕上がりになってきました。



当初の状態は、他の職方?によって修復が施されたばかりの状態でしたが、ご依頼者様が作り替えをご希望される気持ちがよくわかる完成度でした。
既に大幅に手が加えられており、元の状態に復古することは難しいのも事実ですが、一度分解してみたところ下地はとてもよい材料を用いていました。



そのため、今回はどうしても再生させてあげたいという気持ちで、在りし日の形状に迫りたいと思います。



この度のご依頼は、以前当工房でお作りしたお刀の外装(先日鞘のみ変更しました:アメーバブログ「鞘の修復」)の対になる脇差し拵えとして作り直して欲しいという内容です。そのため、大小のバランスを考えて柄糸の色や刀装具を選択しました。柄前の詳細は、2016年1月13日の投稿「柄前の作り替え(脇差し編)」をご覧下さい!



鞘も黒蝋色に塗り直しました。とはいえ遊び心を加えて、強い日光の下では若干螺鈿の反射が現れるように、所々下地に螺鈿を残してみました。蛍光灯下では一切見えないため、落ち着いた趣が宿りました。



あともう少し手をかけたいと思っていますが、トータルバランスとしては完成です!完成といっても、工房に置いてあるとチョコチョコ弄ってしまうため、私の手元にある限り終りが無いというのも事実なのですが・・・(笑)。
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

柄前の作り替え(脇差し編)

2016-01-13 00:49:28 | 拵工作
調整中の脇差しです。柄前が完成しました!



元々は江戸時代の拵えですが、近年に修復が施されて、本来の設計が滅茶苦茶になっています。現状では使い難く不細工で、実用の美意識が一切感じられません。何とか本来の輝きを取り戻したいと思います。



この状態から、納得のいく外装に仕上げ直すには、全て分解し柄下地の整形から始めなければなりません。
0から作った方が早いのですが、柄下地だけは江戸時代の最高級のほうの木が用いられており捨てるのは忍びなく、時間をかけてでも修復に挑みます。



刀装具を拵え全体のバランスと合うものに変更しました。現代製の目貫から、長年保管してきた小振りのセミの図へ。偽名のある水戸の縁頭から、銀着せの腰の低い作品へ。

次は、鞘の塗り直しと鍔の責め金加工です。
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

拵えのアフターケアと用途変更

2015-12-21 01:28:42 | 拵工作
当工房でお作りした柄前の修理です。
以前の完成時の投稿はこちら(柄前新規作成(居合向け大刀編))



思う存分ご愛用頂き、修復で戻ってきた時のうれしさと言ったら言葉では表現できません!
アフターケアの都度、ご依頼者様の要望は増えていくのが当然ですが、私自身もご要望にお応えする度に、更新させて頂くような心持ちになります。



今回はただ修復を施すのではなく、私と持ち主にしか分からないような微妙な、それでいて重要な調整を施します。これは、使用用途が若干変更になったことに起因する些細な修正なのですが、この違いを補整できるかできないかがプロとアマチュアの境目だと思います。詳細はこちら(用途を想定した柄前の調整)

ちなみに、同時進行で白鞘の調整も実施しました。
詳細はこちら→白鞘の修復(その1)白鞘の修復(その2)



非常に短期間で、ここまで柄糸が劣化するほどの使用頻度というのは、武道家の鑑です。



過酷な条件下での使用により、鮫皮にも異変が現れていました。一度バラバラに分解して、理想のセッティングに再構成します。
修復時の鮫皮に関する投稿はこちら(鮫皮の厚み)



諸捻りから諸摘みへ。
修復中の投稿はこちら(用途変更に伴う柄前の調整)



納品時のご依頼者様の笑顔が忘れられません。
今年もあとわずか、妥協せずに最後の最後まで頑張ります!
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

刀剣外装の修復と再現

2015-11-27 04:52:38 | 拵工作
破損した刀剣の修復です。



まずは外装の修復を施しました!

今回の拵えは、幕末期から明治にかけて流行した突兵拵です。
突兵拵は、慶応二年に幕府によって開設された陸軍所で盛んに用いられました。陸軍所は、前身の講武所を吸収して開設されたものの講武所の因習を引き継ぐことなく西洋式(フランス軍式)の教練を採用しました。
兵隊は、格式ある武家の出身者が大半で、教養と武術に優れた最後の幕臣で構成されていました。彼等は洋服を着用し、刀をバンドに吊り下げ皮サックに落とし差しにするよう指導されたこともあり、講武所時代に流行した新々刀をそのまま用いると教練にも支障を来たすため、やむなく愛刀を磨り上げて二尺程度に加工しました。その時に考案された外装が突兵拵なのです。洋服での着こなしが楽なようにコジリの先端を尖らせ、くり型の変わりに丸環をつけるなどが鞘の特徴です。西洋式の教練では、日本刀を用いる機会が極めて少ないことから、講武所時代には大変強固に作られた柄前は姿を潜め、柄前は非常に簡単な作りこみになっていることも突兵拵の特徴の一つです。

そんな突兵拵の中でも、群を抜いて高級将校が用いたであろう格式の高い拵えが今回のご依頼です。



しかも、状態は完璧に近いカタチで、当時の空気を宿しています。
残念な事に柄前は破損が著しく、修復は断念せざるを得ません。そのため、当時の空気感を失わせずに、柄前を全く新しく作成します。



これは簡単な様で、最も難しいご依頼の一つです。

まずは状態の確認です。



ほうの木の柄下地に印籠刻みを施し、縁頭には銀を着せて、全体を呂漆で仕上げています。形状の美しさに暫し見惚れました。



柄は亀裂が入り、もはや機能を失っています。
残念な事に、柄側の切羽が合わせ物のため、全体のバランスが崩れています。
ここまで緻密に完成された外装になると、切羽一枚でもトータルバランスに影響を及ぼします。

今回は、依頼者様ご提供の柄頭と目貫のみ採用させて頂き、柄縁は当方にて新規で作成しました。合わせ物の切羽もやむなく使い回します。
ご提供頂いた柄頭が一回り大きい事と合わせ物の切羽が若干大きめな事で、全体のバランスに与える影響が甚だしく、柄成の調整と柄縁の微調整で何とか美的センスと強度を保ちたいと思います。

ここからは、幕末の職方との知恵比べです。
突兵拵の最大の弱点は、柄前の脆弱性にあります、トータルバランスを崩さないように刀剣を生かす柄前を作りこんでいかなければなりません。
設計上の完成イメージは、突兵拵の欠点を補いつつも幕末の空気感を失わず、気品と武家の最後の輝きを宿した外装に仕立て直すことです。

そして出来上がったのが、以下の突兵拵です。



柄の長さをより実戦的に仕上げるため、若干長めに作り替えました。



柄糸を鮮やかな茶系統に染色し、青貝散しの鞘との相性を微調整しました。



柄縁は、他の刀装具との調和を図るため鑢目仕上げとし、色揚げでは光沢感を調整しました。



日本刀が最後に行き着いた一つの終着点である突兵拵を、新たな視野を吹き込むことによって再現してみました。



Before & After の柄前、指し表側。



Before & After の柄前、指し裏側。



作業開始時の記事。
柄下地(サブブログ「伝統工芸職人って」より)



作業中に鞘について思ったこと・・・。
青貝散し(サブブログ「伝統工芸職人って」より)



テラーメイドの刀装具の記事。
銅(サブブログ「伝統工芸職人って」より)
柄下地ありきの柄縁(サブブログ「伝統工芸職人って」より)



鮫着せ工作時の記事。
鮫着せ(サブブログ「伝統工芸職人って」より)
柄下地の厚み(サブブログ「伝統工芸職人って」より)



最大の特徴は、柄成です。
柄成というのは刃方峰方の形状だけをいうのではありません!
下地の重ねの平肉置きにも最大の注意を払い、使用時の力のかかり方、刀身の殺傷力を最大化するバランスの取り方などなど、「実用の美」を具現化する装置としての機能を持たせることがポイントです。
左側の柄前が今回のお刀です。右側の短くて太い柄前が、他の現代作家さんがお作りになった一般的な柄前です。

次は、刀身の修復に取り掛かります。
南北朝期の名刀ですので、刀身の研磨にも大変な慎重さが要求されます!
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

刀剣外装のテイラーメイド

2015-11-05 20:41:33 | 拵工作
柄前の調整です。



この度のご依頼は、「長年使っている愛刀なれど、身体に合わず、何とかしたい。」というものです。

日本刀というと、刀身ばかりに意識が向いてしまいますが、実際の使用感を決定づけるのは外装です。特に、刀身と使用者を結ぶ唯一の装置“柄前”で使用感が決まる!といっても過言ではありません。



というわけで、今回はオーナー様のお身体に合わせて、柄前のみ作り替えます。



ご要望は細部にまで亘り、現状の柄前を基準に柄の長さ、目貫の位置、柄成り、柄の幅・重ねに至るまでミリ単位でのご指定です。(詳細なご指示は、よほど自信のある方意外にはお勧めしません。ご要望通りにお作りしますが、使用感までは責任が持てません!)



刀装具も変更されることから、安全性を考えれば下地から起こさなければなりませんが、諸事情により柄下地は再利用します。一度分解し、補強を施して再度組み直しました。



黒尽くめの拵えの場合、どうしても表情が沈みますので、鮫皮の漆には若干赤みを持たせて鉄鍔との色味を調節します。これにより、グッと引き締まる効果を期待します。

これから年末にかけて、仕事が忙しくなります。
体調管理を徹底して、一振り一振り心を込めて仕上げたいと思います。
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

武道用刀剣外装の修復

2015-09-28 02:07:16 | 拵工作
新しい創作拵えが完成しました!題して、江戸肥後風突兵鞘創作拵えです。



大変難しいご依頼?工作?でしたが、コンセプトを持った思い通りの外装に仕上げることができたと思います。



当初、柄巻きのご相談でご持参頂いたお刀でしたが、見るからにくたびれた印象の外装で、案の定、状態は危険信号。切羽はハバキ側一枚のみ。柄巻きは、一目で素人工作とわかる武骨なもので、縁頭も器用な方がご自分でお作りになったような味のある作域。柄糸を外すと、鮫皮の加工には努力が見られるもののお世辞にも機能を有しているとは言い難い状態で、柄下地にいたっては古い下地を再利用して延長加工?途中から別の木材でつないで作られているといった状態でした。今までよくお怪我をされなかったなあ~と変な感心をしてしまった程です。



とは言え、刀身は現代刀匠最高峰の刀工の作品で、上の出来は素晴らしいの一言!鞘は、幕末~明治頃の突兵拵を流用し、鍔も当時の物が使われています。部分的にパーツだけを見ると良いものも用いているだけに、チグハグ感が益々ジャンク的な残念さをかもし出しています。



さあ困りました。柄前は、命に関わる危険性を感じますので下地から作り直さなければなりませんが、現状で使える部品は鞘と鍔のみです。
ご依頼者様の真摯なお人柄から、この方が一生持つに相応しい品格と安全性を加味して、最善のお刀にリフォームして差し上げなければなりません。



ご依頼者様は、拵え工作の依頼に不慣れなご様子でしたので、ある程度当方にて設計から完成まで、主導的に対応させていただく事といたしました。
そうと決まれば、ご予算の中で出来ること出来ないことをじっくり練る必要があります。



ご依頼者様のご要望を取り入れながら、設計を詰めていきます。この設計のために連日徹夜してしまいました(笑)。
そして、決定したコンセプトは、「自分が欲しいと思う拵え」です!
創作拵えの製作では、写し拵えや時代拵えの修復とは全く違った、難しさがあります。もはや、伝統工芸家としての立ち位置よりも、コーディネーターの様なセンスが要求されるため、生半可な気持ちでは逆に不恰好な外装に仕上がってしまいます。



そして、出来上がったのが今回の創作拵えです!
縁頭は、この度のプロジェクトのために入手した肥後金具です。鮫皮は、腹合わせの総巻きで拭き漆仕上げとし、目貫は流用、柄巻きは正絹で諸摘み巻きを施しました。切羽を2枚作成し、あそびのある鍔に責金加工、鞘の破損部を修復して完成です。
もちろん、居合や試し切りにも耐える強靭さと、ご依頼者様の身体に合わせた調整には余念がありません。

後は、納品を待つばかり!お疲れ様でした!
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

武蔵拵

2015-09-18 23:09:43 | 拵工作
伝説の剣豪が考案したとされる刀剣外装が完成しました。



この度のご依頼は、戦時中(昭和十年代)に作刀されたお刀の略式軍刀外装を保存し、新たに拵えを製作するというものです。



ご依頼内容を吟味した結果、武蔵拵様式の外装をお作りすることになりましたが、オーナー様のご要望により、目貫は逆に配置することといたします。



武蔵拵とは、剣豪として名高い宮本武蔵の差料とされる外装様式です。
武蔵は剣術修行の傍ら、武器にも細心の注意を払っており、刀身の長さや体配、バランス、重さ、外装の形状や使用感、刀装具のデザインや実用性を入念に調整していたことが知られています。特に、刀装具などは自作に努め、今日最高位の肥後金具として愛好家の間で取引されているほどです。



そんな、計算尽くされた拵様式の復古となると、ちょっとやそっとの気持ちでは作れませんので、研究に研究を重ねて何とかそれらしい物が完成しました!
ご予算が限られる中での調整ではありますが、刀装具は縁頭・鯉口・栗型に至るまで現存する本歌と同じ素材、ほぼ同じ形状の物にこだわりました。

今回のお刀は、鑑賞の魅力たっぷりの美術刀剣ですが、戦時中の刀剣類の中には、量産兵器として殺傷能力のみに特化したものもあり、銃砲刀剣類等所持取締法(以下、銃刀法)の定めにより存在すら許されていないものが多く含まれています。

ここで銃刀法についてちょっと触れたいと思いますのでお付合い下さい。

美術刀剣類を合法的に所持するために、教育委員会への登録制度があることは皆さんもご存知かと存じます。では、いざ登録という場合、合否の鑑定基準が設けられているのですが、その「鑑定の基準」によると不合格になるものは以下の様なものとされています。

(イ) 全体的に甚だしい錆、傷、疲れ等のあるもの、又は製作が著しく劣っているもの。
(ロ) 昭和刀、満鉄刀、造兵刀等の名称で呼ばれる素延べ刀、半鍛錬刀、特殊鋼刀等であって、日本刀に類似する刀剣類で製作工程が日本刀としての工程を経ていないもの。
(ハ) 外国製の刀剣類。

ここで気になるのが、(イ)の甚だしい錆、傷、疲れです。出土刀や上古刀などの時代を経た刀剣は不合格の可能性があります。
次に(ロ)の満鉄刀ですが、満鉄刀にはランク?のようなものがあり、古式鍛錬が施されて鑑賞にも堪えうる刀身を含んでおり、一概に不合格とするには惜しい気がします。
更に(ハ)の外国製ですが、現代刀匠が海外で作刀した刀剣類を輸入する場合はどうなるのでしょうか?

上記の様な判断が難しい場合には、個別に警察が所持の許可・不許可を判断してくれます。ただし、所持の許可が認められた場合でも、これは登録とは異なるそうですので、十分にご注意が必要です。

話がそれましたが、後はお祓いを済ませて納品です!
コメント
この記事をはてなブックマークに追加