徒然刀剣日記

刀剣修復工房の作品・修復実績と刀剣文化活動のご紹介

江戸肥後拵

2015-02-03 23:27:32 | 拵工作
肥後様式の外装が完成しました!



当該拵えは、江戸肥後拵えと称する幕末期に流行した様式です。



肥後拵と江戸肥後拵の違いについては、違いが判りにくいと思います。
本家肥後拵が実用一辺倒な作りこみで、居合の理念などが反映されていることから、必要最低限の柄の長さ・鞘の長さ・各部形状であるのに対し、江戸肥後拵は強靭さの中にも粋な遊び心があり、新々刀などの長大な刀身に合わせた存在感のある外装様式になっています。



肥後拵を本歌と捉えるならば、江戸肥後拵は肥後風の拵えということになりますが、上記のように江戸のデザインセンスが反映されていることにより、一つの拵え様式として今日も定着しています。



この度の工作では、武道にお使いになることから、様々な工夫を凝らしました。



拵え下地作成時の様子は、こちら!
「江戸肥後の拵え下地」(2014/12/04)

柄前の形状には、最善の注意を払いました。元々付属されていた外装と比べて、使用感の向上と使用時のバランス調整に力を注ぎ、断面図が卵型になるように製作しました。以下参照。




鮫着せ時の様子は、こちら!
「鮫着せ」(2014/12/25)

黒鮫加工時の様子は、こちら!
「黒鮫加工」(2014/12/25)

柄巻き時の様子は、こちら!
「柄巻き」(2015/01/23)

柄前完成時の様子は、こちら!
「柄前完成!」(2015/01/25)

鞘の形状は、こちらも使用時の身体への負担を軽減させるため、ご依頼者様のお体に合わせた無理の無い形状にて製作しました。以下参照。

この度の拵工作にて特に注力した箇所は、武道用途としての強靭さと観賞用としての美しさを併せ持った、使って良し飾って良しの外装に仕上げたことです。

ちなみに、刀身は南北朝時代の典型的な形状で、慶長期に磨り上げられた後も、長らく大切に扱われてきたことがうかがえる古名刀でした。おそらく、大名家などに伝わってきた由緒正しいお刀であろうことが推察されます。

  

鞘塗り時の様子は、こちら!
「鞘塗り」(2015/02/04)



この度の工作内容は以下の通りです。

○柄前の部
・柄下地の新規作成
・刀装具の入手(縁頭:銀無垢現代製を一部加工、切羽:銀無垢にて新規作成、目貫・鍔:ご依頼者様による持ち込み)
・鮫皮の加工(大名家伝来外装より流用、漆加工)
・柄巻き(正絹柄糸にて諸摘み巻き)

刀装具加工の様子は、こちら!
「銀無垢刀装具のイブシ」(2015/01/14)

○鞘の部
・鞘下地の新規作成
・塗り(人工漆?支那漆?にて、黒蝋色研ぎ出し加工)



前回製作の天正拵とこの度の江戸肥後拵では、本来の「刀剣外装の美」つまり実用の美しさに重点を置いて製作しました。



代表的な写し拵えの違いについては、こちら!
「柄成りについて」(2015/01/27)

最後にお祓いを済ませて、納品です。