徒然刀剣日記

刀剣修復工房の作品・修復実績と刀剣文化活動のご紹介

拵修復

2012-01-26 16:44:16 | 拵工作
お預かりしている拵えの柄巻きが完了しました!
ご依頼内容は、江戸時代の拵えの修復です。



当初の状態は、柄巻きが外され、鮫皮はボロボロと剥離していました。
この手の時代拵えによく見られる特徴は、鮫皮が継ぎ接ぎで、親鮫は埋め込んであります。つまり、一枚の鮫皮を用いていません。
当然、歳月を経て親粒は剥がれ落ち、つなぎ目が開いています。

今回は、鮫皮を一枚の物に取替え、新しく柄巻きを施しました。また、ツナギを鞘師さんにお願いしました。

最初に鮫皮をはがしてみると、柄下地は虫食いにより50%ほどが損傷しています。
「柄下地の修復」(2011年12月24日)
「キクイムシ」(2011年12月23日)

ここまで損傷が酷いと、柄下地から作り直した方が早いのですが、今回は修復にこだわりました。





柄糸の色は、研ぎ出しの鞘や刀装具に合わせて選ばせていただきました。
イメージどおりと思いますがいかがでしょう?



この写真は、柄巻き前の状態です。柄巻きBefore→Afterでイメージがガラッと変わります。
ちなみに、上の拵えは前回投稿の「柄前制作(その4、完成)」(2012年1月24日)です。



この拵えの特徴は、刀装具の素晴らしさにあります。
ぜひとも、観賞用として末永く大切にしていただきたく存じます。
最後に、菱の微調整をして終了です。

柄前制作(その4、完成)

2012-01-24 13:16:56 | 拵工作
ついに柄巻きが終わりました!今年一振り目の柄巻きになります。

途中経過は以下のリンクより:
「柄前制作(その3、角頭の仕上げ)」(2012年01月19日)
「柄前制作(その2、柄下地&角頭)」(2011年11月28日)
「柄前制作(その1)」(2011年11月27日)


柄成は拵え全体とのバランスを取りながら立鼓形に整形しました。鮫皮は一枚巻き、柄巻きは諸摘み巻きです。
掛け巻きは、拵えのバランスを保つためにあえて平巻きです。




写真にはございませんが、小柄が付属しています。
小柄のぐら付きもしっかり固定し、拵えにピッタリと添うように調整しました。


↑Before ご依頼時の状態


↑After 柄巻き直後の状態(下の拵えは別のお刀です、現在工作中)


下げ緒を装着した状態です。最後に、柄糸の微調整をおこなって終了です。

鮫着せ

2012-01-20 03:10:53 | 拵工作
鮫着せとは、完成した柄下地に鮫革を張り付ける作業です。

徐々に加工を進めてきた鮫皮を、ついに柄下地に着せることができました。
写真の柄前は、脇差用二振り分です。



当工房では、特に一枚巻きにこだわっています。
短冊と呼ばれる、柄の見えるところにだけ二枚の鮫革を張り付ける技法もありますが、ここ数年実施していません。

短冊がダメと言うわけではないのですが、長年居合や試斬にお使いいただくお客様のことを考えると、一枚巻きにこだわらずにはいられません。
しかも、できるだけ裏をすかずに使用することで、柄前の更なる強化を図ります。

この工作は、熟練を要する作業です。

柄前製作(その3、角頭の仕上げ)

2012-01-19 01:21:05 | 拵工作
前回「柄前制作(その2、柄下地&角頭)」(2011年11月28日)で途中経過を紹介中の柄前工作ですが、角頭が仕上がりました。(前々回「柄前制作(その1)」はこちら!)



角頭とは、刀装具の柄頭を水牛の角などで作ったもので、献上拵など最高級の拵え様式にも見られるポピュラーな部品です。
その様式は、時代や地域によって若干の違いがあります。

また、角頭の工作は、拵え一つ一つに合わせた加工が必要です。
ただ湾曲した楕円ではなく、若干卵型になる場合など、微妙に上下非対称型をしています。ちなみに、楕円の中心は真ん中ではありません。

今回の角頭は、江戸期の拵えの再現になりますので、当然時代考証を徹底する必要があります。
そのため、今回は同時期の角頭を考古学者の先生からお借りしてきました。



左の二つが本歌です。漆の剥げた部分から、和牛の角であることが分かります。
私が用いている角は、和牛の角ではありません。
江戸時代は高級品だったのですが、逆転現象がおきて、今では和牛の角の方がほとんど手に入りません。

刀身は、サビ身ですが、典型的な新刀特伝です。
昨今、時代考証がメチャクチャの新作拵えを目にしますが、当工房では、極力本来の工作を心がけています。

また、バランスや使用感、帯刀感といった実用の美を加味することもとても重要な作業です。