前回に続いて、新規作成の御刀外装です。
愛刀に打刀拵を新しくお作りする場合には、大きく分けて二種類の方向性があります。
衣服のお仕立てと同じように、フォーマルかカジュアルかという2通りの選択肢があるわけです。
帯刀を許された武士が、藩の御用向きで勤めに従事する時や冠婚葬祭の席など、正装で出席しなければならない公の場では裃指(番指とも)に代表される儀仗拵が用いられました。
逆に、日常生活や私的な用向きでの外出には、個人的な嗜好性が反映した常指が用いられました。
一つの刀身に、上記2種類の外装が作られていたケースが多かったようで、余裕のある武士は何種類もの外装や刀身を所有していました。
当工房へのご依頼で多い選択肢は、どちらかというと常差です。特にご相談頂く内容では、写し拵や江戸期の常指というよりは、室町・戦国期のようなより実戦的な外装をご所望になる愛刀家が増えています。
ところで、最近よく「武家文化」という言葉を耳にしますが、武士階級が明確に線引きされた江戸時代ですら、武士は日本の総人口の1割にも満たないごく一部の特権階級とされていて、その文化様式となると一般人は接する機会が著しく限られたものでした。
そんな閉鎖的な文化圏をカタチとして垣間見ることができる最たるものが、武士の商売道具である刀剣であり美意識や価値観が結実した刀剣外装でした。
ですから、刀剣外装には大変深い意味で文化的特色を内包していると考えられています。
近年の武家文化発信事業?では、武家社会の生活様式や文化圏を独自に着色して、あたかもトレンドリーダー的な強いムーブメントであったかの如く紹介しているケースを目にします。
実際は、町人文化が圧倒的大多数を占めている社会の中でマイノリティーな存在であって、今だよくわからない部分が多いというのが事実です。
だからといって、独自解釈の武家文化が幅を利かせることは、文化の悪用に他なりませんので警鐘を鳴らしたいと思います。
例えば、居合道の高段者による演武で、周囲から「先生、先生」ともてはやされている剣士が、朱鞘の愛刀を自慢げに携えている場面などを目撃すると、顔から火が出そうになります。
特に、京都の武徳殿など玉座を頂いている格式のある会場では、当人ばかりか黙認する側も文化の破壊に加担している責任をご認識頂きたく存じます。
さてさて、今回の修復では前回の御刀同様、刀身の研磨、ハバキの微調整、刀装具の入手(鍔の責金、切羽作成含む)、拵一式の新規作成と、一連の作業を長時間頂いて完成させました。
長らくお預かりしてしまいましたが、やっと完成です!
この度の外装は、前出の江戸期の常指様式(カジュアル)の拵になります。
刀身は、切っ先が延びごころに反りが浅く、身幅広く重ねが薄い典型的な慶長新刀体配です。
この形状の御刀にしか実現できない工作として、ギリギリまで鞘の肉重ねを薄く削いで指し心地に配慮しました。また、柄前の設置角度を調整して鞘を掃った状態で使用時のバランスを調節しました。
さらに、以前お作りした脇差と「対になる大小拵になる様に!」とのご依頼でしたので、記録と記憶と実物を頼りに作り込んでいきました。
今後の方策として、脇差の柄巻を今回の同一の柄糸で巻き直させて頂けば、粋な大小拵の完成と相成ります!
あとは武道のお稽古に、存分にお使い頂いて実用の美を体感して頂きたいと思います。
愛刀に打刀拵を新しくお作りする場合には、大きく分けて二種類の方向性があります。
衣服のお仕立てと同じように、フォーマルかカジュアルかという2通りの選択肢があるわけです。
帯刀を許された武士が、藩の御用向きで勤めに従事する時や冠婚葬祭の席など、正装で出席しなければならない公の場では裃指(番指とも)に代表される儀仗拵が用いられました。
逆に、日常生活や私的な用向きでの外出には、個人的な嗜好性が反映した常指が用いられました。
一つの刀身に、上記2種類の外装が作られていたケースが多かったようで、余裕のある武士は何種類もの外装や刀身を所有していました。
当工房へのご依頼で多い選択肢は、どちらかというと常差です。特にご相談頂く内容では、写し拵や江戸期の常指というよりは、室町・戦国期のようなより実戦的な外装をご所望になる愛刀家が増えています。
ところで、最近よく「武家文化」という言葉を耳にしますが、武士階級が明確に線引きされた江戸時代ですら、武士は日本の総人口の1割にも満たないごく一部の特権階級とされていて、その文化様式となると一般人は接する機会が著しく限られたものでした。
そんな閉鎖的な文化圏をカタチとして垣間見ることができる最たるものが、武士の商売道具である刀剣であり美意識や価値観が結実した刀剣外装でした。
ですから、刀剣外装には大変深い意味で文化的特色を内包していると考えられています。
近年の武家文化発信事業?では、武家社会の生活様式や文化圏を独自に着色して、あたかもトレンドリーダー的な強いムーブメントであったかの如く紹介しているケースを目にします。
実際は、町人文化が圧倒的大多数を占めている社会の中でマイノリティーな存在であって、今だよくわからない部分が多いというのが事実です。
だからといって、独自解釈の武家文化が幅を利かせることは、文化の悪用に他なりませんので警鐘を鳴らしたいと思います。
例えば、居合道の高段者による演武で、周囲から「先生、先生」ともてはやされている剣士が、朱鞘の愛刀を自慢げに携えている場面などを目撃すると、顔から火が出そうになります。
特に、京都の武徳殿など玉座を頂いている格式のある会場では、当人ばかりか黙認する側も文化の破壊に加担している責任をご認識頂きたく存じます。
さてさて、今回の修復では前回の御刀同様、刀身の研磨、ハバキの微調整、刀装具の入手(鍔の責金、切羽作成含む)、拵一式の新規作成と、一連の作業を長時間頂いて完成させました。
長らくお預かりしてしまいましたが、やっと完成です!
この度の外装は、前出の江戸期の常指様式(カジュアル)の拵になります。
刀身は、切っ先が延びごころに反りが浅く、身幅広く重ねが薄い典型的な慶長新刀体配です。
この形状の御刀にしか実現できない工作として、ギリギリまで鞘の肉重ねを薄く削いで指し心地に配慮しました。また、柄前の設置角度を調整して鞘を掃った状態で使用時のバランスを調節しました。
さらに、以前お作りした脇差と「対になる大小拵になる様に!」とのご依頼でしたので、記録と記憶と実物を頼りに作り込んでいきました。
今後の方策として、脇差の柄巻を今回の同一の柄糸で巻き直させて頂けば、粋な大小拵の完成と相成ります!
あとは武道のお稽古に、存分にお使い頂いて実用の美を体感して頂きたいと思います。