海軍大将コルシンカの航海日誌

ロシアの作曲家リムスキー=コルサコフについてあれこれ

《アンタール》の「版」に関するメモ

2008年02月05日 | 《アンタール》
《アンタール》とは、リムスキー=コルサコフが1868年に作曲した交響曲第2番に付けられた標題であり、6世紀に実在した詩人アンタールを主人公とした物語をアラビア風の旋律を多用して描いたものである。オリエンタリズム溢れるその作風は、後の《シェヘラザード》の先駆をなすものとして知られている───この《アンタール》を巡って最近頭を悩ませている問題が少々。まあ、すっきりしなくて「気持ち悪い」というレベルのもので、どうでも良いといえばそれまでの話なんですけど。

それは演奏に用いられる「版」の問題です。
(ムソルグスキーの《ボリス》じゃあるまいし、どうでもいいじゃない、という声...)
この作品には4つの版があるのですが、CDの様々な演奏を聴いていると、どうもそれらの版がかなり混乱して用いられ、語られているのではないか───という疑問。しかもそれが正されることもなく、あるいはそれが疑問にすら思われていないようであること───。

もっともCDのブックレットでいちいちどの「版」の演奏です、なんて断っていないものがほとんどなのですが、はっきりと「この演奏では○○の版を用いている」と書いてあっても、実はそれが全く違っている(らしい)こともあって、実際のところ、何が正しくて何が間違っているのか、というのがさっぱりわからなくなってしまっているのです。

この問題について、少し本格的に調べて見よう───と思ったのはいいのですが、やはり少々手に余るかなというのが正直なところ。それでも、とりあえずはたどり着いたところまではメモとして整理しておこうというものです。



【1】4種類の「版」について

4種類の「版」について、ここで書いておいたとおりです。ポイントとしては、最終版が作曲者の望んだ「完成形」ではないということですね。
http://homepage3.nifty.com/rimsky/notes/notes_04_antar1.html

まずこのメモでのそれぞれの「版」の呼び方を決めておきます。
いろいろな文献やブックレットによって、初演の年でもって○○年版とするなど、呼び方が異なっていて紛らわしいので、ここでは順に「初稿」「第2稿」「第3稿」「第4稿」とし、必要に応じて作曲年を加えて「初稿(1868年)」などと呼ぶことにします。

ここで「版」ではなく「稿」としたのは、作曲が完了した時点を基準とするためで、「印刷物」が連想される「版」とすると、特にこの《アンタール》の場合は「稿」と「版」の順が入れ替わるものがあるから、というコダワリからです。ということで一般名詞的には「版」も使いますが、特定のヴァージョンを指す場合は「版」ではなく「稿」とします。


(つづく)

最新の画像もっと見る

コメントを投稿