海軍大将コルシンカの航海日誌

ロシアの作曲家リムスキー=コルサコフについてあれこれ

《ロシアの復活祭》覚書その6~補足など

2020年03月11日 | 《ロシアの復活祭》
《ロシアの復活祭》覚書は、今回でいったん終わりにしますが、いろいろ調べているうちに「?」と思ったことをいくつか挙げておきます。
覚書その3でも書きましたが、この作品に関して巷で言われたり、書かれていたりするものが不正確なことが案外あるようなので、その指摘です。

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<聖歌2>は「嘆く天使」とか「天使は嘆く」などと訳されていますが、どんな歌詞なんだろう(何を嘆いているのか?)と調べてみると、キリストの復活を聖母マリアに「天使が告げる」という内容のようです。
復活祭の喜ばしい時になぜ嘆くことがあるのかと思っていたのですが、これはどうやら誤訳のようです。
キリストの復活を告げるのであれば、まさに復活祭にふさわしい聖歌ということになりますね。

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オイレンブルク・スコアの日本語訳ですが、【練習番号D】からの「恐れ多い光明を表現」の部分を「曲がアレグロに移行すると」としていますが、これは明らかにアレグロに入る直前の音楽を指していますから、「曲がアレグロに移行する前には」などとすべきと思います。

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同じくオイレンブルク・スコアの日本語訳ですが、「意気揚々とした大天使たちのトランペットのような...」の部分もしっかり読むと少々おかしい気がします(というか、曲と対比すると何を言っているのかよくわからない)。
自伝でこのくだりは一文がやたらと長く、構文がつかみにくくて今一つしっくりしませんが、おおよそ次のような意味になりそうです。

トランペットのような荘厳な大天使の声は、ある時には輔祭たちの流暢な誦経に、またある時には司祭の象徴的で美しい節回しの福音書の誦経に変化しながら、喜びに満ちた、まるで踊っているような鐘を模した音色に取って替えられた。


時系列的な観点ではやや難ありかもしれませんが、私は「輔祭たち(複数形)の流暢な誦経」が弦や木管で奏でられる<聖歌3>、「司祭(単数形)の象徴的で美しい節回しの福音書の誦経」がトロンボーン・ソロに対応しているとみました。
「喜びに満ちた、踊っているような鐘を模した音色」はわかりやすくて、【練習番号K】や【練習番号U】の部分ですね。

ちなみにですが、この作品でトロンボーンのソロを第2奏者が吹くこと(《シェヘラザード》にもあり)の理由についてはいろいろと憶測があるようで、「リムスキー=コルサコフがオーケストラのトロンボーン第2奏者と仲良しだったから」とか、「第2奏者がリムスキー=コルサコフの妻と不倫をしており、懲らしめるためにわざと難しい旋律を書いた」(!?!)とか諸説あるようです...。

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今回の《ロシアの復活祭》に関する探究はアレグロ(・アジタート)の部分を中心に行いましたが、いろいろ調べていく過程で新しく知ったり、理解することができたりして楽しいものでした。
なんといってもそのきっかけとなったのが、覚書その1ではじめにご紹介したティンパニ奏者の女性ですね。
もともと好きだった《ロシアの復活祭》がこんなにも凶暴に(笑)太鼓が鳴っているのに気付かされましたし、それによってよくわからなかったアレグロの曲想も自分なりに理解もできました。

彼女は見ていても、鳴らす音に反して(?)エレガントでチャーミングな感じもして、アップで映らないのは残念ですが、反面曲の最初から最後まで動きを見ることができて、繰り返しになりますが、私の眼はずっと彼女にくぎ付け状態なのです。
名前などもわかりませんが、ささやかながら彼女に感謝の気持ちをささげようと思います。

(了)


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