地球の裏からまじめな話~頑張れ日本

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東証手口非公表はやっぱり問題だろうって

2006-01-31 06:15:14 | ライブドア問題
拙日記にて先ほど触れてきたが、この東証の手口非公表が結構色々な問題の諸悪の根源である、と私は常々思っている。
今日の朝日の記事、拙日記でも触れたがあのライブドアが現在のライブドアオートを買収する際に、公表はその発表日の引け後だったにも関わらずその日の出来高は前日までの10倍以上に膨れ上がっており、東証が自ら証券取引等監視委員会に調査を依頼した、と言う記事である。
これなんぞは東証が手口を公表していればもっと話が身近にそしてストレートに我々の知るところとなった気がする。
もちろん拙日記で触れたように、仮に私がライブドアオートの株式を色々と操作出来る立場にあったなら、決して系列証券会社を使ってそのようなデリケートな日に売り買いなんぞしなかったとは思うし、きっとそれが事実であればその担当者は例えばライブドア証券を使って派手にオート株の売り買いなぞはしていないだろう。
しかしながらもしかしたらそんなことはもっと簡単に万人の知るところとなっていたかも知れないであろう事は容易に想像が付く。

ちなみに「東証 手口非公開」でググッてみると、当BLOGがいくつかヒットするわけであるが(笑)、もう一度その簡単な歴史を調べてみたら以下のようなことが分かったのでここに記しておこう。

手口情報を巡る主な動き  
1990年    株価の急落局面で先物悪玉論が台頭
1991年03月 東証、立会場事務合理化システムが稼働(全銘柄の手口情報を配信開始)
1992年02月 大証、株価指数先物の日通し手口を開示
1999年04月 東証、立会場を閉鎖
2002年12月 東証取引参加者のワーキングパーティーで手口問題を議論
2003年02月 東証、市場運営委員会で手口非開示の方針を決定
2003年06月 東証、手口情報の配信を終了

ちなみに手口非公表に当たっては様々な意見があったのだが、その時の様子が以下のNIKKEI BPから伝わってくる。(ちょっと長いよ)

『株式売買手口の情報を巡り割れる証券業界 2002年7月10日

東京証券取引所の株式売買手口の情報公開を巡って証券界が割れている。インターネット専業のDLJディレクトSFG証券(東京都千代田区)が完全公開を求めているのに対し、投資信託会社は完全非公開を主張。現状維持を求める証券会社もあり、議論は混迷している。

売買手口とは、どの証券会社がどの銘柄にいつ、どれだけの売買注文を出したかを示す情報。証券会社は東証の売買端末を操作すると、取引時間中にこれらの情報を見ることができる。売買手口は東証の取引参加者である証券会社の取り決めで、証券会社しか利用できないことになっている。

だが、この取り決めは形骸化している。売買を取り次ぐ証券会社の担当者が、大口顧客である機関投資家の求めに応じて手口を伝えるのは当たり前のことになっている。そればかりか、市場の情報提供会社は証券会社から入手した売買手口を有料で提供している。

DLJは売買手口が公開されなければ、「機関投資家と個人投資家の情報格差はなくならない」(國重惇史社長)として、完全公開を求めて譲らない。 機関投資家のような特定顧客を持たないDLJにとって、情報格差の存在は個人投資家の裾野を広げるうえで不利に働く。そこでDLJは6月から、情報提供会社フィスコ(東京都文京区)に依頼して、ネットを通じて取引時間中と取引終了後にまとめた一部銘柄の手口を有料で提供し始めた。

しかし証券界には、売買手口が個人投資家に「悪用」されて株価形成の撹乱要因となるという反対論が根強い。

野村アセットマネジメント(東京都中央区)など投資信託会社9社は6月、東証に対して、証券会社への手口公開も取りやめ、完全非公開を求める意見書を出した。売買手口が公開されると市場の撹乱要因が増え、売買コストの上昇につながる恐れがあると主張する。

例えば、機関投資家から売買高の少ない銘柄を大量に買いたいという注文を受けた証券会社は、株価変動を抑えるために長い時間をかけて注文を市場でさばかなければならない。ところが手口を見て特定の証券会社が特定の銘柄に継続的な買いを入れていることが分かると、個人投資家が高い値段で売り買いを繰り返して株価を吊り上げることも可能になる。そうなると、機関投資家は高い価格で株式を買わなければならず、売買コストに跳ね返るというわけだ。市場関係者によると、こうした行為が頻発しているという。

東証は業界内の議論だけでは、結論が出ないとして、今夏に機関投資家を対象にヒアリングを実施する計画だ。「情報格差をなくすためには、売買手口を完全公開にするか、完全非公開にするかのどちらかにしたい」(株式部)という。

しかし、現実には売買手口は証券会社を通じて広まっている。今さらそれを完全非公開にできるとは考えにくい。実際、完全非公開を求める投信会社に対して、大手証券会社の間からも疑問の声が上がっている。

出来高の少ない銘柄を市場で売ろうとした場合、買い手がいなければ売るのは難しい。売買手口が完全非公開になれば、いちいち買い手を見つけ出さなければならず、結果的に市場に特定の銘柄を売るという手の内をさらけ出すことになる。そうなれば、かえって売買コストが上がることもあり得る。

手口が分かれば、売りたい銘柄を買っている証券会社に直接売買を持ちかけることによって市場外で取引を成立させることが可能になる。その結果、「売買コストを抑えることができる」(準大手証券会社)。

売買手口を完全非公開とすることはもはや現実的でない。であれば、必要な議論はどういうルールで情報を公開するかということになるはずだ。市場関係者の間では「東証は情報を公表する代わりに情報料の収入を見込んでいるのではないか」という見方もある。東証がどの程度の情報料で公開することがいいのかという議論も必要だ。この問題は3年以上も議論されてきた。結論を急ぐべきだ。』
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このような議論を経て結局2003年6月に東証は手口の非公開化に踏み切ったわけであるが、果たしてこの議論なり証券界(特に機関投資家やら投信)のなんて自分勝手な言い草よ!
自分の業界ながら改めてあきれ返ってしまったわい。
特に太字で書いた部分ね。
ここまで個人投資家がしっかりと市場に入ってきた時代にこんな議論がつい数年前にあったなんてことを振り返ると、冷や汗もんだね、証券界と東証の判断は。
このエゴは一体何なんだろう、って思う。

まあとにかくこのような議論を経て東証が踏み切ったわけであるが、それにしても例えば私がずっと書いてきているMSCBの発行に絡んだ、なんとも言えないグレーな株価の動きやら、或いは普通のファイナンスに絡んでの、値決め前の不可解な株価の動きやらがまだまだ散見される市場であることは事実で、これなんかは上述したように決して手口の公開だけで分かるような問題では無いかもしれないけれど、手口が公開されれば何らかの市場参加者の監視の目が光るわけで、きちんとしたバッファーになるのではないか。
今の世の中、ネットでの情報がとにかく早いわけであるが、これは取りも直さず参加者がほぼ無限大であることに起因するわけで、何かおかしな動きがあればこんなのはすぐにネットで話題になるだろうから、とにかく手っ取り早い。
プラス、この記事でDLJの社長さんがおっしゃっているように、投資機会と言うのはそれが一日何千万と言う手数料を業者に落とす投資家であろうが、ネット経由のミニ株投資家であろうが、平等でなければ本物ではないだろう。

例えば出来高の薄い銘柄に関しては、外人や大手機関投資家などは「出来高シバリ」的なオーダーを置いてくることが多い。
日頃10万株しか出来ない株式へのオーダーがトータルで100万株あれば、その投資家は「出来高の1/3まで」と言う様な置き方を言うが、それを受けている以上は、証券界も機関投資家のコストアップに繋がるなんて寝ぼけたことを言える時代では無いだろう。

特に昨年2月から始まった一連のライブドアに絡む動きでは、もしも手口が公表されていればかなりの部分がガラス張りになって、それなりに非合法的なやり方は未然に防げたかもしれない、或いは反対にそれらをさらにすり抜けるためにもっともっと複雑怪奇になっていた可能性もあるだろうが。

しかしながらこの手口の公表ってのは隠すような情報でも何でも無いと思うし、それが公表されていた頃は逆に我々自身それを積極的に使っていた覚えは実は無い。
たまに何かが取り沙汰されたらそれをチェックしてみる、とか、或いは一部それを気にしている投資家が居たのは事実ではあるが、その情報を元に大金が稼げるような情報では無いと個人的には思っている。まあ知的好奇心やら、やたらと勝手な妄想や憶測を膨らませるのには絶好のアイテムではあるがね。

言って見れば、プロ野球の結果が報道されて「○○ VS XX は、3対2で○○の勝ち」って時に、両チームのピッチャーやら誰が勝利打点を打ったかなんてのが全く報道されないのと同じで、結果は事実だけれどその中味が知らされない、その両チームなんて全く関係ない人にはあっても無くてもどうでも良いけれど、その両チームのどちらかを応援している人には欠かせない情報、って感じだろうか。

そんなもん、別に非公開にして、さらなる疑心暗鬼な憶測を呼んでそれで株価が動いちゃうとしたら、そんなバカバカしいことは無くて、全く持って本末転倒であることをご理解頂けようか?
これからも声を大にして言って行こう、手口を速やかに公開せよ、ってね。