地球の裏からまじめな話~頑張れ日本

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ライブドア問題への考察~日経に突っ込むぞ

2006-01-20 07:50:39 | ライブドア問題
さてここ数日のたくさんのアクセス有難うございます。余り気の利いた意見とか、裏の方からのニュースソースってのはありませんが、まあメンタン切って勝負していくしか無いのですが、頑張ります。

さて拙さるさる日記に少し触れたように、本日はずっと出張して顧客訪問をしていたので情報端末やらネットからのニュースに触れることが出来なかったため、移動中に久々に日経をじっくりと読んだのだが、まあ言葉巧みですごいとあらためて感心してしまった。
まあ昔から日経の記事は云々を言われているし、今さら驚くには値しないのであるが、正直識者ぶった記者諸氏をはじめ、自称識者の方々のご意見のなんと素晴らしいこと。

JCOMショックの時にここで書いたように、市場の求めることとは常に「裁定チャンス」なのである。つまり値段に歪みがあればそれを是正する、それが市場の掟のようなものである。それから派生したのが例えば個別株のロング・ショートと呼ばれるヘッジファンドが好む手法であったりする。何も個別株のみならずセクター間ロングショート、いわゆるマクロなロングショートなんてのもある。
投資家ってのは青目黒目(これはもしかしたら証券用語か、青目=外人投資家、黒目=日本の投資家を言う)を問わず、常にその機会を狙っている。
結局単純に株を買う、と言う行為だって、それを買う人はそれが割安だと思っているから買うわけで、これだって広義の裁定(アービトラージ、以下アビトラ)であろう。
そういう観点から見た場合、例え山ほどの個人投資家が市場に参戦しようが、デイトレーダーたちが日々何百回も取引を繰り返そうが、それはアビトラの効果がより緻密になる効果があって、そして同時にアビトラチャンスが減ってきてる、って事であると個人的には考えている。

例えば現在では日経平均の入れ替え~なんて言うとこぞって個人投資家も参戦してくるようになった。自分なりの予測を立てて、日経平均から外れそうなモノを売って、新たに入りそうなモノを買う、と言う事だが、これなんてかつては機関投資家やらの専売特許であった訳だ。各証券会社の調査部門が色々調べて候補をリストにして、セールスはそれを機関投資家に持ってって、そして彼らが動く・・
特に日経平均をターゲットに運用している先なんてのは、新規採用銘柄をいずれにしてもポートに組み入れなければならない訳だから、どうしたって彼らは買う。それなら先回りして自分でリスクを取って・・と誰もが思うわけで、それがかつては機関投資家&証券会社で何となく完結して、そしてその後個人がそれに乗ってきて・・って感じだったのが、今じゃ機関投資家(特に国内系はいずれにせよ意思決定に時間が掛かるので、遅い)が後から乗っかってるって始末が現状だ。
こういった動きはぶっちゃけ機関投資家相手の証券マン、そして投資家自身には非常に邪魔である。がしかし市場にとってはむしろ健全なのであるね。

私も時としてこのデイトレ達やネット投資家が邪魔だ、って思うことがあるけれど、でも私だってリタイアしたらきっとネット投資家になるし、つまり投資に対しては常に万人に平等なチャンスが与えられるのは当たり前であるから、大きな声で文句は言わない(笑)。
(ただ、JCOMショックの後に新規公開してくる銘柄に、1円だの2円だのって指値を置いてくるネット投資家が急増したそうで、これはちょっと苦笑もんだけど)

さて非常に前置きが長くなったが、これは本日日経1面の署名記事、証券部の小平記者の記事に対する反論の前置きである。
記事自体が長いので、私がカッチ~ン!と来た部分を抜粋する。

『株式の大幅分割は個人を市場に呼び込み、市場の活性化には一定の効果はあった。だが、インターネットで頻繁に売買を繰り返す小口投資家を大量に生んだことは、健全な市場につながったとは言えない。』

私の前置きに賛同してくださる方ならお分かりいただけようが、頻繁に売買を繰り返す小口投資家だって、立派に市場では機能しているのである。それが健全な市場につながったとは言えないと言う、その根拠は何か?
付け加えれば、例えばVWAPギャランティー注文。これを執行するにはそれなりのシステムがあって、当該注文銘柄の約定値段をVWAPに近づけるためにそのシステムは頻繁に売買を繰り返すんですよ。インターネット経由じゃなく、小口じゃないけど、でもプログラム経由の電子取引なんだから、同じことでしょう。そちらを責めるならこちらも責めなさい。
こちらを責めることが出来ないのなら、そちらを責めるのは止めなさい、証券部。

記事は以下のように続く・・

『ゲーム感覚の売買で急騰した株価を企業買収に利用する』

私はこういう書き方がすごく嫌いだ。
一体何を根拠に「ゲーム感覚」と言い、そして何を根拠にそのゲーム感覚が株価を急騰させた、と言うのだろうか。
私は、ネット投資家、デイトレ、ライブドア関連銘柄=ゲーム感覚、てその発想が嫌いだ。散々マスコミがそういう言い方をして来たために、いまやそういう図式が完全に国民の間に刷り込まれてしまったと思っている。
ここを読まれているネット投資家の方々の中でどなたか世間に言ったことあります??「私は株式運用をゲーム感覚でやってます!」って。
我々証券マンの神聖なる仕事場をUFOキャッチャーと同義で語らないで欲しいね、全く。
それでなくたってマスコミは常に株式市場で何かあるたびに大騒ぎするんだから、それだったら少しはまともな記者を育てなさいよ、証券部。

(駄目だ、書きながら怒りが湧いてきて眠気が吹っ飛んでしまった・・・)

長くなったけどあと一つ。
「私はこう見る」の欄での漫画家の弘兼憲史氏の意見だ。

『実体が無くても有名と言う理由でIT株などが買われる現象はマネーゲームで”狂乱経済”ともいえる。株をギャンブル的に買って安易にもうけようという風潮が若者を中心に広がっていたので懸念していた。
(中略)気軽な気持ちで株に手を出した個人投資家が「損をしたくない」と焦って売ったために起きた現象(これは東証の売買停止措置を指していると思われる、筆者注)といえる。頭と体を使ってモノを作り出すという労働の原点を見つめなおすよいきっかけになるのではないか』

弘兼さん、お年はいくつか知りませんが、バブルを覚えていらっしゃいますよね。
私が甘ちゃん大学生を終えて初めて社会に入った1986年、その頃にはバブルの足音が聞こえてましたよね。
あの時の”狂乱経済”の主役は貴殿の世代近辺じゃありませんか?株のみならず土地やら絵画やら果てはマンハッタンのビルまで”ギャンブル的に買って安易にもうけよう”としていませんでしたか?
そしてあのバブルの崩壊が、頭と体を使ってモノを作り出すという労働の原点を見つめなおすきっかけになって、そしてそうやってきた結果、日本は氏の懸念するような若者の風潮を生み出す世界になってきた、とは思われませんか?
そして現在、いざ頭を体を使ってモノを作り出したい!って思ったって、大手の工場はみんな海外に行っちゃったじゃないですか。
貴殿のおっしゃる労働の原点はもはやこの国には無いんじゃないか、っていう位、こぞってでかい企業の優秀な老練な指導者達の決断によって外に出て行っちゃったじゃないですか。
どうか、これからも素晴らしい漫画をお書きになって、世間の清涼剤となられることを切に願うと同時に、これからはむやみやたらとこの手の発言は慎まれた方が、と思いますが。確かライブVSフジの時も貴殿のご意見をお見かけした記憶があったものですから、すみません、老婆心ながら。


本日は以上。