恋、ときどき晴れ

主に『吉祥寺恋色デイズ』の茶倉譲二の妄想小説

話数が多くなった小説は順次、インデックスにまとめてます。

小説を検索しやすくするためインデックスを作りました

インデックス 茶倉譲二ルート…茶倉譲二の小説の検索用インデックス。

インデックス ハルルートの譲二…ハルくんルートの茶倉譲二の小説の検索のためのインデックス。

手書きイラスト インデックス…自分で描いた乙女ゲームキャラのイラスト記事


他にも順次インデックスを作ってます。インデックスで探してみてね。



サイトマップ






人気ブログランキングへ

いつまでも~その2

2016-11-02 06:26:10 | 譲二の~勝手に3年後編(吉祥寺恋色デイズ)

譲二の勝手に3年後編も今回で完結です。


☆☆☆☆☆

前にも書いたけど、吉恋本家の譲二ルートの3年後編には色々と不満がある。

久しぶりに吉祥寺に帰ってきた譲二さんとのラブラブな話のはずなのに、新キャラの紹介に使われてたり、色々とモヤモヤするものがあって、私の思う『勝手に3年後編』を書いちゃいました。

『譲二の勝手に3年後編』の始めの部分は本家の『譲二3年後編』とほぼ同じです。

そして、時々本家のエピソードに重なるものも入れながら、少しずつ離れていき、玉の緒ワールドの譲二さんの話になってます。

航くんは出てきませんが、本家の『譲二3年後編』では出てこなかった、懐かしいあの人とかあの人とか出てきます。


だから、ネタバレも少々あるものの、譲二ルートの3年後編とはまた別のお話と思って下さい。





☆☆☆☆☆


いつまでも~その2


〈百花〉
厨房で片付けをしている譲二さんに声をかけた。


百花「譲二さん、ちょっとお話が…」

譲二「何?百花ちゃん。どうしたの?」

百花「来週、お父さんたちが日本に帰って来るってメールがあったんです」

譲二「そうなんだ。よかったね。ご両親に会うのは久しぶりだろ?」

百花「はい」

譲二「それで、どのくらいこっちで過ごせるの?」

百花「一週間くらいはいられるみたいです。もちろんお父さんは仕事もあるけど…」

譲二「百花ちゃんのご両親とは俺も久しく会っていないからなぁ。クロフネに招待して、俺の手料理もご馳走したいなぁ」

百花「そんなふうに言ってもらえるなんて…うれしいです」

譲二「だって、佐々木さんも良子さんも俺の恩人だからね」


譲二さんは茶目っ気たっぷりに言った。

しかし、私の様子を見て表情を曇らせた。


譲二「どうしたの?何か気がかりなことでもあるの?」

百花「私たちが恋人になって3年にもなるから、私たちのこと、お父さんにちゃんと挨拶しなさいって、お母さんに言われました」

譲二「そっか…そうだよね」

譲二「良子さんには百花ちゃんとのことを色々相談してたけど、佐々木さんには百花ちゃんと恋人になったことの報告すらしてなかったからね。良子さんの言う通り、きちんと挨拶したほうがいいだろうね」


譲二さんは私の頭を優しく撫でながら言った。

お父さんに挨拶してくれるという譲二さんの言葉は頼もしくて、とても嬉しい。


百花「ありがとうございます」

譲二「え?そんなの当たり前だろ?むしろ俺としては、佐々木さんたちにもきちんと認めてもらいたいんだ」

百花「認めて?」

譲二「百花ちゃんが高校生の頃は、正直言ってこんなおじさんが『恋人です』だなんていうのは恥ずかしくってね」

譲二「だから、正式にお願いするのを逃げてたところがある。佐々木さんに許してもらえるだろうか?なんて悩んだこともあったしね」

百花「そんな…譲二さんはおじさんなんかじゃないのに」


私の言葉に譲二さんは苦笑した。


譲二「ありがとう。いつもそんなふうに言ってくれて」


また譲二さんの手が優しく私の髪を撫でる。


譲二「百花ちゃんも二十歳を過ぎて、夢に向かって頑張ってる。そんな百花ちゃんをずっと支えてあげたいし、これから先もずっと一緒にいたい。だから佐々木さんには俺のことを百花ちゃんの恋人として認めてもらいたい。今はそう思っているんだ」

百花「私もお父さんに譲二さんのことを認めてもらいたいです」

譲二「うん。認めてもらえるよう、一生懸命お願いするよ」

 

その3へつづく


いつまでも~その1

2016-11-01 06:14:41 | 譲二の~勝手に3年後編(吉祥寺恋色デイズ)

譲二の勝手に3年後編も今回で完結です。


☆☆☆☆☆

前にも書いたけど、吉恋本家の譲二ルートの3年後編には色々と不満がある。

久しぶりに吉祥寺に帰ってきた譲二さんとのラブラブな話のはずなのに、新キャラの紹介に使われてたり、色々とモヤモヤするものがあって、私の思う『勝手に3年後編』を書いちゃいました。

『譲二の勝手に3年後編』の始めの部分は本家の『譲二3年後編』とほぼ同じです。

そして、時々本家のエピソードに重なるものも入れながら、少しずつ離れていき、玉の緒ワールドの譲二さんの話になってます。

航くんは出てきませんが、本家の『譲二3年後編』では出てこなかった、懐かしいあの人とかあの人とか出てきます。


だから、ネタバレも少々あるものの、譲二ルートの3年後編とはまた別のお話と思って下さい。





☆☆☆☆☆


いつまでも~その1


〈百花〉
今は放課後、ランチルームで芽衣や涼とお喋りをしている。

来週の予定を立てるのに、手帳を眺めていて気がついた。

譲二さんがクロフネに帰ってきて、あと少しで三ヶ月になる。


(色々あったけど、2人で暮らせるようになって本当に幸せだな)

(これって、実家のお仕事をしながら、クロフネの営業も頑張ってくれている譲二さんのお陰だよね)


ふっと笑みをこぼしたのを涼に見咎められた。


涼「ナニナニ~? 百花ったらニヤニヤして…」

百花「ニヤニヤなんかしてないよ」

芽衣「してるよ~。何かいいことでもあった?」

百花「譲二さんがクロフネに戻ってきてもう三ヶ月だなぁって思っただけ」

芽衣「そっかー。一緒に暮らすようになってもう三ヶ月になるんだ」

涼「そう言えば、『もうすぐ譲二さんと暮らせる〜』って、百花ったらルンルンだったよね」

百花「え~、そんなにルンルンだった!?」

涼「だったよね?」

芽衣「ね~」


芽衣と涼はからかうように私の顔を覗き込む。



♪~

百花「あ、メール。ちょっとごめんね」


(お母さんからだ!)


『百花、元気にしてる?


譲二くんとは上手く行ってる?

実はお父さんの仕事の都合で、来週から一週間くらい日本に帰れるようになったの。

それでね、お父さんにはまだはっきり言ってないんだけど、譲二くんがあなたの恋人になって3年にもなるし、日本に帰った時に譲二くんとも、ちゃんと挨拶をした方がいいと思うの。

譲二くんは、時々もらうメールでも、あなたとのことを真剣に考えてくれてるみたいだし。

譲二くんなら心配は何もないんだけど、挨拶だけはちゃんとしておいた方がいいと思うのよね。

正確な日程が分かり次第、連絡します。

                            良子』


(お父さんとお母さんが日本に帰ってくる!)


嬉しいけど、譲二さんと挨拶するって…。

そういえば、譲二さんと恋人になってから、ちゃんとお父さんたちに挨拶をしたことはなかったっけ。

お父さんは譲二さんのことを信頼してるみたいだから、まさか反対したりはしないと思うけど…。


芽衣「百花、何のメールだったの? いい知らせでもあった?」

涼「読みながら目がキラキラしてたよ、もしかして譲二さんから?」

百花「ううん。お母さんからのメールだった。来週一週間くらい日本に帰って来るって」

芽衣「ほんと?! 百花! 良かったね」

涼「うわっ! 良かったじゃん、久しぶりなんでしょ?」

百花「うん」


芽衣も涼も自分のことのように喜んでくれた。

 

その2へつづく


悪意~その8

2016-10-07 07:46:32 | 譲二の~勝手に3年後編(吉祥寺恋色デイズ)

前にも書いたけど、吉恋本家の譲二ルートの3年後編には色々と不満がある。

久しぶりに吉祥寺に帰ってきた譲二さんとのラブラブな話のはずなのに、新キャラの紹介に使われてたり、色々とモヤモヤするものがあって、私の思う『勝手に3年後編』を書いちゃいました。

『譲二の勝手に3年後編』の始めの部分は本家の『譲二3年後編』とほぼ同じです。

そして、時々本家のエピソードに重なるものも入れながら、少しずつ離れていき、玉の緒ワールドの譲二さんの話になってます。

航くんは出てきませんが、本家の『譲二3年後編』では出てこなかった、懐かしいあの人とかあの人とか出てきます。


だから、ネタバレも少々あるものの、譲二ルートの3年後編とはまた別のお話と思って下さい。





☆☆☆☆☆


悪意~その8


〈譲二〉
玲さんはタバコを美味そうに吸って煙をくゆらすとまた話し始めた。


玲「アンタのことは憎たらしかったわ。アタシの持って無いものを全て持ってるくせに、アタシの父さんまで独り占めにして」

譲二「……」

玲「でもね、アタシはその『くそッ』て思う気持ちをバネにしてのし上がってやるって心に決めたわ。」

玲「アタシは美貌に磨きをかけて、先輩から接客術も盗み取って、嫌な客にもいつもニコニコして…。当時勤めてた店でNo. 1になって、引き抜かれて、そこでもトップをとって稼いだわ。

玲「そのうちに父さんが亡くなったって、風の噂で聞いたけど、一晩泣き明かして吹っ切った。アタシはアタシの人生を楽しんで、充実した日日を過ごしてたから」

譲二「なら、なんでまたクロフネを譲って欲しいなんて言い出したんだ?」


玲さんは自嘲気味に微笑んだ。


玲「店に手グセの悪い子がいてね。アタシは目をかけて可愛がってたのにね…。」

玲「そのせいで同類に見られたみたい。アタシとトップを争ってたライバルにその子とアタシはグルだって言いふらされたのよ。おまけにママの大事にしてた宝石類が何故だかアタシのロッカーからでてきてね」

譲二「それはひどいな…」

玲「上手くはめられたもんよねぇ。何とか警察沙汰だけは回避できたけど、その店は辞めることになったわ。」

玲「そんな時に父さんの店のことを思い出して、何となく来てみれば、昔と同じ佇まいで黒船があるじゃない?店の名前は若干変わってだけど」

譲二「そのまま、漢字の黒船を使うのはおこがましい気がしてね。漢字から一段落として、カタカナにしたんだ」

玲「しかも、この店をアンタが継いでるって知って、若い頃の憎しみが込み上げて来たわ。」

玲「本当なら、この店でマスターしてるのはアンタじゃなくて、アタシの筈だって。」

玲「だからね、間違いを正すためにこの店をアンタから奪おうって決めたの。アンタの大切なもの全部、奪ってやろうって」


(間違いを正すだって…?)

(俺から大切なものを奪うって?)


怒りがムクムクと湧いてきた。


譲二「それで百花ちゃんに手を出したのか⁈」

玲「そうよ!」


百花ちゃんはその声にビクリと身体を震わせた。

玲さんが俺たちを冷ややかに眺めている。

俺は百花ちゃんを抱きしめる手に力を込めると玲さんを睨みつけた。


譲二「俺に恨みを持つのも、俺をクロフネから追い出そうとするのも別に構わない。だけど、百花ちゃんに手を出すのだけは許さない!」


玲さんはフッと笑った。


玲「最初はただアンタに復讐するためにその子に近いたんだけどね。いつの間にか本気で好きになってたみたい。だから本気でアンタから百花を奪おうとしてた」

譲二「百花と呼ぶな!」

玲「ごめんね、百花。怖がらせるつもりはなかったのよ」


そう言って百花ちゃんの髪に手をのばす。


譲二「俺の百花に気安く触るな!」

譲二「玲さん、もう出て行ってくれ!俺の理性が残っているうちに」

玲「もう、夜の店はできないのね?」

譲二「もちろん。契約は解消だ」

玲「新しい店が決まったら連絡するわ。それまで私の物は置いといてちょうだい」

譲二「分かった。住所が決まれば全部送りつけてやる!」

玲「そう。ありがとう」


玲さんは百花ちゃんを一瞥すると踵を返して、出て行った。


扉がバタンと閉まる。


譲二「百花ちゃん、ごめんね。俺のせいで酷い目にあって…。怖かったろ?」


百花ちゃんは潤んだ目で俺を見上げた。


百花「譲二さんのせいじゃないよ。譲二さんは何も悪くない」

譲二「ごめんね、ちゃんと守れなくて」

百花「ううん。助けに来てくれて嬉しかった」



健気な彼女が愛しくて、そっと唇にキスを落とした。



『悪意』おわり

 

☆☆☆☆☆

玲次さんが悪役になってしまい、玲次さん好きな方には申し訳ないです。m(_ _)m


ヒロインのピンチの時に駆けつけて救ってくれる譲二さんを描きたかったんです。
ハルくんルートのハルくんみたいな。


有栖川玲というのは源氏名で本名は浦賀玲次ですね。

でも、譲二さんルートでは最後まで有栖川玲と名乗っています。

本家の吉恋でも、玲次さんは「クロフネを譲って欲しい」と現れますが、先代マスターの息子だからという理由だけではその理不尽な要求に至るのに弱い気がしたんです。
それで、玲次さんの心の闇?みたいなのを私なりに探ってみました。
玲次さんルートの話は無料の一話分しか読んでないので、本家の玲さんとは少し違うと思ってください。

先代マスターは譲二さんにとって人生の師であるというようなことを以前書いたと思います。
先代マスターにとっては、譲二さんは会うことのできない息子の身代わりのような存在で、とても可愛がっていたと思う。
また譲二さんからみても、影の薄い父親よりも慕う大人だった。
そんな疑似親子の姿を実の息子である玲次さんが見たら嫉妬を覚えたのではないかと。


そして、シェアカフェするようになって吉恋の他のメンバーとは打ち解けても譲二さんには心を許すことができなかった玲次さん、というのを描いてみました。

大切な譲二さんルートに乱入してきた玲次さんにはわだかまりがありますが、今回の話で描いた影のある玲次さんはちょっと気に入っています。

妖艶で底の知れない魅力のある人として描いてみたつもりですが、いかがでしょうか?


悪意~その7

2016-10-06 06:19:36 | 譲二の~勝手に3年後編(吉祥寺恋色デイズ)

前にも書いたけど、吉恋本家の譲二ルートの3年後編には色々と不満がある。

久しぶりに吉祥寺に帰ってきた譲二さんとのラブラブな話のはずなのに、新キャラの紹介に使われてたり、色々とモヤモヤするものがあって、私の思う『勝手に3年後編』を書いちゃいました。

『譲二の勝手に3年後編』の始めの部分は本家の『譲二3年後編』とほぼ同じです。

そして、時々本家のエピソードに重なるものも入れながら、少しずつ離れていき、玉の緒ワールドの譲二さんの話になってます。

航くんは出てきませんが、本家の『譲二3年後編』では出てこなかった、懐かしいあの人とかあの人とか出てきます。


だから、ネタバレも少々あるものの、譲二ルートの3年後編とはまた別のお話と思って下さい。





☆☆☆☆☆


悪意~その7


〈譲二〉
玲さんは窓に目をやり、窓を流れる雨を眺めながらつぶやいた。


玲「そのうちに手が空いたアンタ達は歴史の話題で盛り上がって…。」

玲「昔、アタシが小さかった頃によく聞かされた歴史のエピソードを父さんがアンタに楽しそうに話して、アンタはそれに的確に受け答えしてた。もう2人の世界って感じだったわ」

譲二「そうか…」



玲さんが話す俺とマスターの姿はあの頃の日常そのままだった。

だから、玲さんがクロフネを訪ねた日がいつだったのか、俺には窺い知ることはできなかった。


玲「その時、アタシ気づいたの。アンタは父さんの自慢の息子なんだって。」

玲「父さんがアタシになって欲しかった理想の息子がアンタなんだって…。男か女か分からないような息子なんていらない、アンタがいればいいんだって」

譲二「そんなことはないよ…。確かに、浦賀さんは小さい頃に別れた玲さんを俺に重ねてたのかもしれない。だけど、本当の息子に会えたら、それが一番嬉しいんじゃないのか。」

玲「そんなことあるわけない。その日結局父さんはアタシに気づかなかった」


玲さんの目から溢れた一筋の涙が白い頬を伝った。


玲「それからも時々覗きに来たのよ。流石にもう店の中には入れなかったけど…。」

玲「アンタはホント、入り浸ってたわね?店の前に水撒きしたり、看板を出し入れしたり…窓から覗けば父さんと楽しそうにおしゃべりするアンタが見えた」

譲二「ああ、あの頃は暇さえあれば、黒船に通ってたからね」

玲「でも、アンタはバイトですらなかったそうね…」

譲二「どうしてそれを?」

玲「色々調べたの。だから、アンタがあの茶堂院グループの御曹司だってことも知ってるのよ…」

玲「ちょっとタバコを吸ってもいい?」


そのふてぶてしい態度にまた苛立ちが募ったが、その気持ちをぐっと抑えて言った。


譲二「どうぞ」

 

その8へつづく


悪意~その6

2016-10-05 07:47:33 | 譲二の~勝手に3年後編(吉祥寺恋色デイズ)

前にも書いたけど、吉恋本家の譲二ルートの3年後編には色々と不満がある。

久しぶりに吉祥寺に帰ってきた譲二さんとのラブラブな話のはずなのに、新キャラの紹介に使われてたり、色々とモヤモヤするものがあって、私の思う『勝手に3年後編』を書いちゃいました。

『譲二の勝手に3年後編』の始めの部分は本家の『譲二3年後編』とほぼ同じです。

そして、時々本家のエピソードに重なるものも入れながら、少しずつ離れていき、玉の緒ワールドの譲二さんの話になってます。

航くんは出てきませんが、本家の『譲二3年後編』では出てこなかった、懐かしいあの人とかあの人とか出てきます。


だから、ネタバレも少々あるものの、譲二ルートの3年後編とはまた別のお話と思って下さい。





☆☆☆☆☆


悪意~その6


〈譲二〉
譲二「玲さん!なんでこんなことをするんだ!俺に恨みでもあるのか!」


自分でも驚くほどの大声で怒鳴った。

玲さんを百花ちゃんから引き離した時に、弾みで千切れたカフスボタンが床に転がっている。


百花ちゃんは俺の胸に顔を埋めて、震えていた。


しかし、玲さんは何事もなかったかのように平然としている。

艶やかな前髪が目にかかり、相変わらず美しい。

玲さんはその前髪を掻き上げた。


玲「恨み?…そうね…確かにアンタのことは恨んでるわ」


そう言うと、俺を鋭い目つきで見据えた。


譲二「どうして?お前の父親の店を俺が継いだからか?」

玲「それもあるけど…それだけじゃない」

玲「アンタはアタシの欲しい物を全部持ってる。その上アタシの大事な物も奪っていった…」

譲二「いったい何を言ってるんだ!」


玲さんは寂しげな笑みを浮かべた。


玲「前にこの店を父がやってたのを最近知ったって言ったわよね?」

譲二「ああ」

玲「あれ、嘘なの」

譲二「え?」

玲「本当は以前から知ってた。それに…店に来たこともあるのよ」

譲二「いつ?」


声が掠れてしまう。


玲「ずっと昔…。そう、あれは20歳になったばかりの頃だった。」

玲「何年も会ってない父さんがここで『黒船』って喫茶店をやってるってことを教えてくれた人がいてね。アタシ、懐かしくて、父さんに一目会いたくて来てみたのよ」

玲「久しぶりに会う父さんはちょっと老けてたけど、記憶にあるまんまの優しい父さんだったわ。」

玲「…だけどね、アタシが自分の息子だってことには全然気づかなかったわ。もちろん、アタシは声を出さなかったから、男だとは思わなかったんだろうけどね」


玲さんはしばらく黙った。


玲「アタシが席に着いたら、アンタが水を運んで来たわ」

譲二「⁈」

玲「最初はただのバイトかと思ってたけど…。アンタ、『譲二くん、譲二くん』て、父さんに随分可愛がられてたわよね?」

譲二「…ああ」

玲「アンタもコーヒー淹れたり、オーダー運んだり、楽しそうに働いてた。父さんはそんなアンタを目を細めて嬉しそうに見てたわ」

譲二「……」


いつの間にか、雨が降り出していたようだ。

雨粒が窓を叩き始めた。

 

その7へつづく