妖怪大魔王・コバ法王日記

オートバイを分解して磨き、正確に組み立て、独自コースを走り込み、ストップウォッチと頭脳で感性を磨き、日々の想いを語ります

バーエンド ウエイト、反省と考察

2018-10-24 02:30:02 | 整備&セッティングの基本・妖怪講座

『 バーエンド ウエイトへの “反省” 』
バーエンド(ハンドル)ウエイト、左右のハンドルの端部に装着されている “ 重り ” の事だ。


それが、ハンドル周りの振動を抑えて疲れを軽くする為の部品(装置)だとは知っていた。 が、僕が乗ってきたオートバイの多くで、「 重いと燃費に も 悪いから 」と迷わず外して軽量化していた。

けれど今回、色々と試してみたら、疲れ防止だけではなく、乗り心地や安定性、タイヤのグリップ感向上にも役立っている事がわかったから “反省” をしている。


『 いつもの軽量化処理は 』
バーエンド ウエイト は、中型以上のオートバイの殆どで装着されているから、多くの人はグリップ外側の部品だけと思っているかも知れないが、実はそうではない場合が多い。


グリップ外側についている部品以外に、ハンドルの内部にもウエイト(重り)が制振(振動制御)用のゴムを介して装着されているのだ。

だから、ハンドル内部のウエイトを取り外すか、ハンドルそのものを更に軽い社外製品に交換して、バーエンドには万が一の転倒に備えて軽い樹脂製部品に交換してきたし、トライアンフ君にもその伝統的(?)処理をしていたのだ。




『 他人の評価は、いつも ・・・ 』
そんな風に細かな変更を施したオートバイは、いつも僕のお気に入りだったけれど、他の人に乗ってもらった時の言葉の多くは異口同音、何故か「怖い」だった。

天邪鬼な僕は「怖い」と言われる原因は、ステムベアリングからケーブルの取り回しなど、ステアリング周り各部のフリクション(摩擦)を減らす工夫を重ね、軽く思った通りにキビキビと走る様に調整をしているためで、“ 慣れ ” で解決する筈だとずっと考えていた。

しかし、車両のキビキビ感は不安定感とウラハラの関係だ。僕にとっても “ 慣れ ” だけでは解決できない場面も少なくなく、不安定なステアリング周りの動きはずっと我慢していたのだ。


『 バーエンド ウエイト作成記 』
いつまでもステアリング周りの不安定感を我慢していても先は長くない。不安定感を解決する為に、構想一日・作成一時間、バーエンド ウエイトを作成して試してみた。


自作して使っていたバーエンド(プロテクター)は、内部に制振用(振動や衝撃吸収)のゴムは入っているが、とても簡単な構造だから “ ウエイト(重り)” つけも楽だった。


適度な外径と重みのある ワッシャー(プレート)をウエイト用に購入して、そのワッシャー が外周方向へ遊ばない様に 位置決め用のカラーを作成して、それを組み立てただけだ。
ワッシャーでウエイトの代用をしたのは、とりあえず最適なウエイト(重り)を探ってから、最適なウエイトが見つかった後でウエイトを真鍮材から削り出す構想だからだ。


『 ウエイトの効果は? 』
最初はワッシャー を 5枚、ウエイト 60gの仕様で一般道の直進路を走ってみた。



最初に感じた効果は「乗り心地が良くなり、直進安定が性高まった」だった。
確かに、左右 60gずつ、合計 120g の重さが感じられるハンドリングにはなったが、それ以上に タイヤのトレッド面が路面にしっかりと当たっているグリップ感が伝わってくるのだ。

この効果(変化)が出た原因を考えて、フロントサスペンション周りの 余分な振動( X軸周りの )が減った為だろうという仮説を思いついた。
走行中のオートバイは様々な場所で様々な方向の振動をしているけど、その振動の中でフロントサスペンションの動きを妨げる振動を 新設バーエント ウエイトが減らしたのだろうと考えたのだ。


オートバイを正面から見て、左右のハンドル端部(バーエンド)がハンドル中央部を軸に回転するように上下する振動成分があり、その振動成分はフロントフォークのスムーズな伸縮を妨げる様に働く。 が、バーエンド ウエイトによって 様々な方向の振動が抑えられたので、その結果でフロントフォークの動作摩擦(フリクション)が減り、サスペンションの作動性が高まり、タイヤの接地性も良くなって、乗り心地やグリップ感の向上に繋がっているのだろう。

そして、一番期待していたターン(旋回)に与える影響はもっと大きかった。


『 バンクさせた時の挙動は? 』
専用のテスト可能なエリアで、最初は 60g仕様のまま、直進状態からバンクさせてターンインさせた直後のステアリング周りの安定性を確認するテストを行なった。
その結果は、一般道・直進路で感じた時と同じく、「 重さは感じられるが、安定感は高くなった 」だった。

この効果が出たのも余分な振動成分が減ったためという仮説が考えられる。
ただし、今回の振動成分は、ステアリング(ハンドル)の回転軸を中心にハンドル端部が回転方向に振動する、ステアリング軸周りの振動成分だ。


このステアリング軸周りの 回転振動成分は、直立・直進走行している場合にはあまり気づかないけど、バンクさせる時にはオートバイに左右非対称な力を加えるので、左右の力のバランスが崩れた時には顔を出しやすいのだろう。


もちろん、バンクさせて暫くすれば、タイヤのトレッド面が路面との間で起こした振動は収まり、フロントフォークの上下振動も収まるので、そのステアリング軸周りの振動は収まる。

しかし、低速時やバンク角が大きい時には振動が発生しやすい。それなのに、今まではバーエンド にウエイト(重り)をつけていなかったので、ステアリング軸周りの振動成分が抑えきれず、フロントタイヤの方向安定性を減らし、タイヤのグリップ感を減らしてしまって、“ 怖さ ”を与えていたのだろう。

一度走った後、ウエイトを全て外して、昨日までの状態(ウエイト 0g)と較べてみれば明らかだ。 その不定感の違いは大きく、もうウエイト 0gの元には戻れない。
では、ウエイトは 何g にしようか?


『 48gか? 60gか? 』
次に、ワッシャー枚数を3枚にして、ウエイト 36gを試した。
確かに、ウエイト 0g の場合よりも安定感は増しているけど、不安定感をは一掃できずに残っている。もう少しウエイト増やす必要がありそうだ。

次は、ワッシャーを 4枚、ウエイト 48g で試してみると、ステアリング軸周りの回転振動もずっと少なく、バンク開始時の重さも不快に感じられない。
かと言って、60g の時の安定感は忘れ難いが、あのバンク開始時の重さ感は ・・・。

どちらにしても、ステアリングとフロントサスペンション周りと上手にバランスする最適なウエイトは見つかるだろうし、見つかれば ウエイトを削り出して綺麗に整えたい。
参考までに、市販車両に装着されているバーエンド ウエイトはもっと重く、軽い場合でも 片側100g以上で、重い場合には 200g以上の場合もある様だが、それもメーカー側が設定した 操縦安定性にするためだ。(でも、キビキビ感が好きな僕の好みではない)


『 その他・考察 』
■ 振動系の制振機能 ■

〇 バーエント ウエイトは、フロント周り、特にステアリング周りで発生している様々な振動が操縦性や安定性に悪い影響を与えない様に、制振用ゴムを介して取り付ける事によって、別の一つの振動体として全体の振動バランスを中和する働きをしている。

〇 慣性質量を持つ物体として安定成分に寄与しているとも考えられるが、例えハンドル両端に装着されていると云っても、高速で回転するエンジンやホイール(タイヤ)や、もっと重い部品の存在を考えれば、バーエンド ウエイトは慣性質量としての働きより制振用ウエイトとして考える方が良い。

〇 よく「エンジン振動がハンドルに伝わり、それによる手の疲れを抑えるのがバーエンンド ウエイト」とも言われているが車両によっては正しくないだろう。エンジン振動がはっきりと出やすい単気筒や2気筒にはエンジン振動対策と言えるが、エンジン振動がずっと少ない 4 気筒エンジン車や 2気筒や3気筒でも振動低減用のバランサーを内蔵しているエンジン搭載車の場合ならならば安定性や操縦性向上のための装備と言えるだろう。

■ 最適なウエイト探しの提案 ■
〇 一般に バーエンド ウエイトは重い程に 安定性が高くなり、軽いほどに操縦性が良くなるが、最適なウエイトはライダーの使い方や体格、感性によって決まるべきとも言える。だから、車両の現在の操縦安定性に多少でも我慢しているのなら、最適なバーエンド ウエイト(重り)探しを提案したい。社外製品で多くの車種に装着が可能な製品が販売されているから、最適なバランスで気持ちよく走りたい人は選択肢の一つに入れると良いだろう。

〇 特に、高速道路では不満は無いけど、狭い市街地道路では車両の重さを強く感じている人の場合には、より軽いバーエンド ウエイトへの変更も良い一手と言える。

■ 注意事項 ■
〇 車両の操縦性や安定性をバランス良く保つ為には、バーエント ウエイトの変更が第一ではない。一番はタイヤの空気圧をライダー自身にとって最適と感じられる値に保つ事。次は賞味期限を過ぎたタイヤは交換する事。そしてサスペンションの定期整備、特にフロントフォークオイルの定期交換は必要。
その次に、ハンドルが常に軽くスムーズに切れる様に、ステムベアリングの点検整備を行ない、ケーブルなどの取り回しによるステアリングの引っ掛かりを抑える事が大切で、バーエント ウエイトはその次の課題だ。

タイヤのエア圧を車両メーカーの指定値に合わせる事は最適の選択ではなく、賞味期限の確認方法などについてはいつか説明したいものだ。

〇 ステアリング(ハンドル)周りに用品を追加装着している人は要注意!
グリップヒーターや スマホスタンド、ドライブレコーダーなどを装着した場合には、それが 100g程度の用品だとしても、必ず操縦・安定性には悪い影響が出る事は認識すべきで、特に左右非対称に用品を装着すればもっと影響は大きくなるのは間違いない。
車両自体の安全性能を高く保つ事を考えるならば、そういう追加装着は最小限に留めるべきだろう。

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最適トルク設定は常識。 しかし ・・

2018-05-28 22:45:21 | 整備&セッティングの基本・妖怪講座
車両の基本的設計の問題のため、不出来な箇所が次々と頭を出すトライアンフ君。
最も深刻なフロント周りの安定性の低さ、ギャップ走破時のマナーの酷さの解消に一定の目処が立った今、俄然、目立つようになったのがリア周りのリジット感、作動性に悪さだ。


『 リア周りの動き改善のために ・・ 』

リアサスペンションの動きが感じ難く、路面とのグリップ感、トラクションを充分に使い難いので行なってきた対策は、リアのスリングレートを最適レートへと下げ、サスペンションユニットをよりフリクションの低いモデルへ換装し、そしてサスペンションリンク周りのボルトの締め付けトルクを 約22% 下げて一定の効果を出した。

さらに、ユニットとリンク周りのボルト全てをフローティング化して効果はあったものの、まだ物足りず、リアのスプリングをフローティング化するために部品製作を進めているけれど、もっと簡単な “ 一手 ” を思い出したのだ。


『 思い出した “一手” 』

「 そういえば・・ 」と、思い出した “ 一手 ” は “ 最適トルク設定 ” だ。
フロント周りではサスペンション周りからステアリングステム周りまで散々行なってきたけど、リア周りの大きな部品ではやっていなかったのだ。
リアスイングアームとリアホイールの締め付けトルク調整だ。

スイングアームをフレームに固定するピポットシャフトの締め付けトルクと、リアホイールをスイングアームに固定するアクスルシャフトの締め付けトルクを変更したのだ。
メーカーが指定するピポットシャフトとアクスルシャフトの締め付けトルクは共に 110 Nmで、今までは律儀に守り続けてきたけど、今回は一気に 88 Nm へと下げてみた結果は?



『 笑ってしまう程の効果が・・ 』

スタンド状態からフリクション減少は感じられ、スタンドから下ろして押し歩けばその効果は確信に変わり、走り出せば笑ってしまう程に大きな効果だったのだ。

リアサスペンションの作動性が向上した他に、直進安定性の向上、ターンイン時の操縦性の向上、そしてターン中の安定性とパワーON時のリアコントロール性の向上など、良い事ばかりだった。

試乗の印象では、最適なトルク値は 95 Nm 位の可能性もあるが、現状では前後の剛性バランスが崩れている印象だ。今まで、リア周りに合わせてきたフロント周り剛性バランスを、トルク設定を下げて作動性が向上してレスポンスの良くなったリア周りに合わせて、フロント周りの作動性や作動領域を見直す必要が見えてきた。

少なくとも、フロント周りの締め付けトルクの設定を下げ、その剛性をリア周りに合わせて若干低く調整する必要はある筈だ。


( 話は変わって ・・・・・ )

イベントで、車両オーナー本人の同意とインプレッションをもとに、アンダーブラケットのフォーク固定ボルトの最適トルク調整をした。
当然、本人も違いと効果をはっきり感じて納得していた。

しかし、先日会った時には、正確な知識の把握や理解不足を棚に上げたまま、
「 結果、16 Nm にしてあるトルク値は、ボルトの緩みを誘発するリスクが大きいのでは?」
「 16 Nm にした時の効果は、フォーク内部の設定変更で得られたのではないのか? 」 と質問の嵐が来た。

疑問を持ち、質問があるのは良い事だが、少し勘弁して欲しい気持ちにもなった。
締め付けトルクの調整は、剛性バランスを最適にする為のもので、フロントフォーク内部の設定変更で得られるものではなく、様々な部品の組み付け作業の最後に必ず必要な作業だと説明しても納得してもらえない。

ボルトの緩み防止は、ネジ山の汚れやキズを本来の綺麗な状態にして、座面を平滑でクリーンに整えて、適切なトルクで締め付ける事が基本で、適正トルク以上のオーバートルクでボルトを締め付ける事は、ネジ山の変形や座面の破損を招き、却って緩みを誘発する事は前回の時にも説明済みだ。

まして、ボルトを扱う度にネジ山や座面の汚れや傷を確認して綺麗にしなければ、例えメーカー指定の締め付けトルクで締め付けても、ボルトに必要な軸力を与えられず、それも緩みの原因になる事の理解にまでは辿り着けなかった。

もちろん、説明能力の不足が原因の一つだと認めるが、ボルトは軸力、つまりはネジ部の伸びによって部品を固定している事実や、ネジ山のコンディションを整えず指定トルク値で締め付ければネジ山の変形や緩みに繋がる常識、そして、ボルトの締め付けトルクを調整して車体の剛性バランスを取る必要性や大切さの理解が、何故、広まっていないのだろう?

経験上、最適トルク値はメーカー指定値より低いものなのに。


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ダイス、 これさえあれば !!♪

2018-01-31 22:01:45 | 整備&セッティングの基本・妖怪講座
全くもって 世の中は便利になったものである。
何しろ、数少なくなった店を見て歩かず、
モニター見ながら ・・・ ポチッ ! で 届くのある。

今回届いたのは ダイス
それも、工具店ならば取り寄せ必至のサイズ
M10 × P 1.0 という特殊ダイスだ。


少し詳しく説明すると ダイスとはボルトのねじ山を作る専用工具で
M10 というのは 直径が 10 mmのボルトを作る工具だという事で、
P1.0 とは、ねじ山のピッチ( 山と山の間の距離 )が 1.0 mm のボルト作製用という事。

一般に使われている M10(直径10mm)のボルトのピッチは 1.5 mm(P=1.5)で
細目 と呼ばれてピッチが小さいボルトは P=1.25 (1.25 mm)。
そして、今回の P=1.0 (ピッチ 1.0 mm)というボルトは滅多に使われていないから、それ用のダイスは工具店の店頭ではまず見かけないのだ。

誤解しないで欲しい !
ボルトフェチ だから収集している訳ではない。
(スプリングフェチなのは認めるが ・・・ )
オートバイの部品の中で ある個所には このボルトサイズが使われているからだ。

さあ、これで フロントフォークのカートリッジ用のアダプター
旋盤で苦労せず ( 旋盤でねじ切りは苦手だ ) 作れるかな ?♪

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対策用スプリング 到着!

2018-01-17 20:52:29 | 整備&セッティングの基本・妖怪講座
先週の日曜日、イベント開催の日、
久しぶりにトラ君の出勤だった。

フロント周りに施した改良は奏を効し
11月の時より格段に気持ち良い走りだった。

しかし、こうなると気になるのがリア周り
以前から気持ち良く動作しない領域があり、
トラクションを利用した(ゴリゴリ)走りができない。

こうなると、そのままほっとけない性格。
更にレートの低いスプリング 2本を発注。
他車のリンク周りのボルトを発注。
週末は、きっとまた、ガレージ籠りか。


それにしても、トラ君のリア設定はお粗末だ。
姉妹車 デイトナ号は市街地では使えないスプリングレートで、
それよりも 15% 以上レートを下げたのに動かない。

標準設定は 675 LBS/inch で、今回購入したのは
525 と 500 (LBS/inch)の 2本だ。

ん? スプリングだけでなくて、
リンクプレート にも問題あるかも知れない?
サスペンションユニット自体にも ?


ますます ガレージ籠り 確実か ??
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トラ再走計画・フロントスプリングの選定

2017-07-03 20:05:21 | 整備&セッティングの基本・妖怪講座
オートバイの整備やセッティング作業の中で、エンジン本体を除けば、最も “正解” を導き出し難いのが サスペンションのセッティングで、その中でも フロントサスペンション の 仕様変更(セッティング)ほど 最適セッティング(正解)が出難いモノはない。

本来は、個人ごとに最適を求めて自由に行なうべき作業だけど、記事とかで紹介されている方法の中には明らかに間違った変更作業が紹介されていて、最適セっティングから遠ざかるだけでなく安全性が保てない作業が紹介されているので、今回の投稿でセッティング作業の方向性の参考になればと思っている次第です。


1. なぜ スプリングを変更するのか ( フロントスプリングの重要性 )

ほとんどのオートバイにはサスペンションが装着されている。
最初は乗り心地を良くするために生まれたサスペンションだけど、今やタイヤのグリップ(接地性)を高め、ハンドリング(操縦性)と安定性を高めるためにサスペンションは欠かせない装置だ。
そしてサスペンションの主役が「スプリング(ばね)」だから、好みのハンドリングを求めるならばスプリングの変更が一番の基本なのだ。

特に、フロントサスペンションのスプリング(以降:フロントスプリング)は リアサスペンションのスプリングとは異なり、フロントタイヤが左右に切れるステアリング(操舵機構)と一緒になっているから、フロントスプリングの動き方はハンドリング(操縦性)に大きく影響するのだ。
しかもライダーはハンドルを握る手の平を通じてフロントタイヤの接地感や安定感を常に感じているから、どんな時でも安心できる乗り味にする為にも、フロントスプリングの仕様・特性の設定・変更には細心の注意が必要なのだ。
だから、メーカーが発売するオートバイの場合、同じ型式であっても年度が変わればスプリングの仕様が変更されているのが珍しくないほどで、オートバイメーカーも神経を使っている部品の一つだ。

実は、僕自身もスプリングの変更はしょっちゅう行なっているけど、メーカーでさえ常に変更している程だから、最適なハンドリングを得るのは簡単な事ではない事は知っている。
今回は、トラ再走計画に合わせて、改めてスプリングの仕様を検討している最中だから、興味のある人は付き合ってほしい。


2. スプリングの選択 ( スプリングの種類と特性 )

四輪車とは違って、オートバイのサスペンションに使われているスプリングは、ほとんどが“コイル状”に巻かれたコイルスプリングだ。
そして、フロントサスペンションに採用されているスプリングには、そのスプリングの特性を示すスプリングレート(バネ定数)が一定の“シングルレート”のスプリングと、スプリングが縮む途中で別のスプリングレートへと変化する“ツインレート”のスプリングがある。
公道用の市販車は“シングルレート”と“ツインレート”のどちらの採用例もあり 、車両特性やメーカーの考えによってどちらかを選ぶのだ。

見分け方は簡単で、“シングルレート”の場合はコイル状の巻き方(巻く間隔=ピッチ)が一定で、“ツインレート”の場合には途中で巻き方(巻く間隔=ピッチ)が異なっているのだ。
“ツインレート”の場合には、縮み始めは全体が縮むけど、やがて巻く間隔(ピッチ)縮みが狭い部分で“巻き”が隣同士で重なり合い(線間圧着)、残った部分のスプリングだけが縮むのでスプリングレートが変化するのだ。
では、どちらを選ぶかと言えば、トラの純正仕様は“シングルレート”だけど、“ツインレート”を選ぶ。
なぜかと言えば、「 良くできたツインレートはシングルレートに勝る 」(妖怪談)からだ。
因みに、レーサーなどの場合には、セッティング変更の容易さから、殆ど“シングルレート”なのだ。


3. 目標のスプリングは ( VTRからトラへ )

今回のスプリング選択は、今までよりも簡単で正確に出来る方法だと信じている。

今までは、それまでに装着していたスプリングのレートやレート変換点(レートが切り替わる位置)を参考にしながら、もっと良い操縦性が欲しくて、次から次へとスプリングの変更をしてきた。
でも今回は、VTR250 で気に入ったスプリングの特性を参考に、トラ号に合う筈のスプリングの特性を探り出す方法だ。

その為に、VTR250 と トラ号 それぞれの前後輪別の荷重を表にした。

次に、ライダーの装備重量(体重+イロイロ)が前後均等(半分ずつ)に荷重として加わるとすれば、下の表のようになる。

VTR250 と トラ号のホイールベース(前後タイヤ中心間距離=軸距)は殆ど同じだから、重心高の多少の違いはあるとしても、前輪に掛かる荷重の違いの分だけスプリングレートを考慮してやれば、きっと良いスプリングに巡り会えるはずだ。
前輪荷重の違いを較べると 約 11.1% の違いがあるので、求めるスプリングの初期レート(Ko)は [ 0.58 × 1.11 = 0.64 程度 ] 、スプリングレートが変換した後の二次レート(K1)は [1.01 × 1.11 = 1.12 程度 ] として、ツインレートスプリングの重要な特性である“変換点”は 同じ様な性格を求めて同等の数値とすれば良いだろう。

つまり、求める初期レート: A は 0.64 Kgf/mm で 二次レート:B は 1.12 Kgf/mm、変換点 C は 58 mm 前後を目標に探せば良いが、条件に合うスプリングはあるだろうか?


4. スプリングの選択 ( 一覧表からの選択 )

“スプリングフェチ”な僕は、時間とお金が余っている(?)時に多くのメーカーのスプリングを買い漁り、製造会社へ特注したスプリングも数多くあるから、ストックしているスプリングの中から選ぶ事にする。

この表は、ストックしているスプリングの一例だけど、スプリングレートや変換点は計算で算出しているから厳密には正確ではない。
厳密なデータは、スプリングテスターを用意して、一本ずつ正確に計測してやらないといけないが、テスターは高価だし製造されたスプリングは1本毎に“バラツキ”が大きいのが常識だから、そこまで細かい事は追及せずにおこう。


目標として設定したスプリングを表の中から選べば、「 ホンダ製、CBR1000F(SC-31)純正スプリング 」も良い雰囲気だ。二次レート(K1)は少し低目だけど、その分は変換点が早目に来る事で相殺されるから良いかも~ と思ったけど、全長が 447mm、トラ君のフォーク内には収まらないので断念。
同じく、[ ホンダ製 2000年型 ホーネット600 純正スプリング ] も良い雰囲気だ。全長は 312 ㎜ 、カラーを加工すれば装着可能な長さだけど、もう少し刺激的なヤツがないだろうか?
ああ、悩ましい!


5. 過去のスプリング、一番のお気に入りは

ここで、過去に出会ったスプリングの中で、一番のお気に入りを紹介しよう。
それは、WP(以前は ホワイトパワーの名称)製、ブロス(L型)用の フロントスプリングだ。
その頃は、今ほどに深く考えもせず(=悩みもせず)、好きなメーカー製だったので買ったけど、後にも先にも、このスプリングほどにライダーの意のままに、時にはかゆい所に手が届くほどに、どても性格の良い頼もしいヤツだった。
だから、そのスプリングと一緒だったら、どんなセクションも軽々とこなしてくれると安心しきっていたほどだ。

今になって考えてみれば、そのスプリングは メーカーの設計者とテストライダーの情熱の賜物だったのだと実感している。
情熱のある若者達によってオランダで創業されたこの会社(WP社)は、1990年頃、きっと スプリングに情熱を傾けていたエンジニア達が居たと信じている。
というのは、スプリングで通常使用されている 線材は 4.5 ~ 5.0 mm前後が常識なのに、5.5 mmという常識外れに太い線材でまとめ上げられていたので、固有振動数が低く、同じスプリングレートでも“雑味”が少なく澄んでいて、大人しくも逞しい働きをしてくれていたと信じている。

ただこの WP社、今は KTMの傘下企業になってしまい、KTMはインド企業の傘下になっていて、この「一番のお気に入り」以降、同社からは 唸らせるような製品は出ていないようで残念だ。


6. プリロード荷重(イニシャル荷重)について

ちょっと横道に入って、スプリングをサスペンションに組み付ける際、最初に縮めて加えておく力(セット荷重 とも プリロード荷重とも言う )の事を書こう。

オートバイの場合には、四輪の場合とは違って、サスペンションにスプリングを組み込む際には 一定の力(荷重)を加えた状態(つまり縮めて組み付ける)のが一般的だ。
そして、フロントスプリングのプリロード荷重は、オートバイが同じであれば、交換するスプリングの特性が異なっても、ほぼ一定の値が最適値になる事を僕は経験的に知っている。


これは、リアスプリングのプリロード荷重(イニシャル)はライダー重量などに合わせて調整する事が重要なのと較べて、フロントスプリングのプリロード荷重は対照的な扱いになっている事からも分かる事。
殆どのオートバイのリアサスペンションにはプリロード荷重の調整機構がついているのに、フロントはそれが殆ど装着されていない事からも、ある特定の荷重設定から大きく変更する必要は少ないのだ。

VTR250の場合には、現状のスプリング(51401-NKD)を組み込む際には 15.3 mm縮めているので、初期レート 0.58 Kgf/mm × 15.3 mm で、プリロード荷重は 約 8.8 Kgf であり、同じ車両でスプリング変更する際にもは常にこの荷重値を守って部品設定をしているほどだ。
同じ様に、トラ君の場合を考えれば、前輪荷重が 約 1.11 倍になるので、トラ君のプリロード荷重 = 8.8 Kgf × 1.11 = 9.8 Kgf を 参考にする事になる。


7. 「最適トレール量」という考え方 (フロントサスペンションの目的)

今回は VTR250 で最適なスプリングに出会えたので、それを参考にして、トラ君の体重(前輪荷重)に合わせて 良いマッチングのスプリングを検討するお話だ。
でも、こんなに多くのスプリングを蒐集して、細かな計算に時間を掛けてまでスプリングに神経を使う事に疑問を抱く人が大半だろう。

その疑問に答えるとすれば、「最適トレール量」追及の為だとしか言えないので、そこを少し説明をしよう。

オートバイのフロントタイヤには常に様々な力が加わっていて、それが 結果的にハンドリング(操縦性)やスタビリティ(安定性)となって表れるが、そのタイヤに掛かる力を左右する最も大きな要素が 「トレール量」だ。
この「トレール量」は フロントタイヤの“ 方向安定性 ”をコントロールしている要素で、その「トレール量」はオートバイの状況に合わせて大きくなったり小さくなったりして“方向安定性”を変化させ、オートバイの動きを自動的に制御している大切な要素だ。
つまり、フロントフォークが伸びた時には「トレール量」が増えてフロントタイヤの直進安定性を高めて、直進しやすい状態にして、アクセルを離してブレーキを掛ければ、フロントフォークが縮んで「トレール量」は減ってフロントタイヤの直進安定性を下げ、旋回しやすい状態にするという具合なのだ。

かと言って、直進だけが得意で曲がり難くいオートバイは危ないし、少しバンクさせただけで意図以上に旋回しようとするオートバイもライダーは安心して安全に走れない。
だから、どんな走行状態でも、ライダーの意図に合わせて、ライダーには不安感をほとんど感じさせず、ライダーの意図に合わせて、その時々で最適な直進安定性(トレール量)をフロントタイヤに与えるフロントサスペンションが一番良いサスペションだ。
そして、走行状態に合わせてフロントフォークを最適の長さへと伸び縮みさせ、「最適トレール量」を自動的に導き出してくれる部品こそフロントスプリングだから、最適なスプリングに出会う事には大きな価値があるし、その選択に時間や神経を使っても決して無駄とは言えないのだ。

この「最適トレール量」の考え方はとても大変に大切だから、テストには出ないけど、覚えておくのがお勧め。


8. 間違いだらけの スプリング交換 (細心の注意が必要な交換作業)

ただし、フロントスプリングの変更には幾つか注意すべき事がある。
雑誌記事や個人のブログ記事を見れば間違いだらけなのは珍しい事ではないし、スプリングメーカーの指示書さえ大切な事は書かれていないので、ここに幾つか書き留めておこう。

【 プリロード荷重 の 設定 】
プリロード荷重とは スプリングを組み込む時に縮めておく力の大きさで、この値の大小でフロントサスペンションの動き方や操舵感も変わってしまうものだ。
だから、先にも書いたけど、交換前と交換後のスプリングの特性の違いやマッチングを正しく確認したいなら、プリロード荷重は同じ値にしておく必要がある。この事に気づいている人は少ない。

食べ物で例え話をすれば、食材をいつもより高級にして味わいの違いを較べたければ、いつもと同じ調理方法で較べる必要があるのと同じ。
プリロード荷重を変えてしまう事は、高級食材にして香辛料も一杯使ってしまう様なもので、変更の良し悪しの比較はとうてい出来ないからだ。

中には、交換前後のスプリングの長さの違いに合わせて、内部の部品(カラー)やアジャスターを調整して、セット時に縮める量を一緒にしている例もあるけど、それも正しいとは言えない。
なぜなら、スプリング毎にスプリングレートは違っているから、同じ縮め量にしてしまうとプリロード荷重は交換前後で一緒にならないからだ。

正しくは、交換前後のスプリングのレートと縮め量から、同じプリロード荷重になる様に縮め量を求めて調整する必要がある。

【 1G' 車高 】
ここで言う 「1G' 車高」とは、乗車時のフロントサスペンションの長さ(縮み量)であり、フロント部の“高さ”を表す概念で、その車高とリアの車高とのバランスが変わるとオートバイの挙動は変化する事を覚えておいて欲しい。
だから、スプリング交換の前後で フロントの「 1G' 車高 」の値を同じに揃えなければ、前後の車高バランスの変化で操縦性の変化が表れるので、スプリング交換後に操縦性の“違い”を感じても スプリングの特性変更の影響とは言えないのだ。

【 フォークオイル と 残ストローク 】

フロントスプリングの交換に合わせてフォークオイルを交換する事は多いけど、そのフォークオイルの量をマニュアル通りにメスシリンダーで計測して交換したり、マニュアルが指定の油面高さに調整している誤った作業例が多いようだ。
フォークオイルの量はフロントフォーク内の空気の量を決める為にあるものだから、空気の量が違ってしまうとそれだけで操縦性に影響を及ぼすので、空気の量を変えない様にオイル量の調整が必要になるのだ。
つまり、交換前後のフロントスプリングの体積差の分だけオイルの量も変更する必要がある。体積は計測し難いので、スプリング毎に重量を測り、重量の差とバネ鋼の比重(一般に 7程度)から体積差を算出してオイル量を調整する必要があるし、フォーク内部のカラー等を変更する場合にはその体積差を考慮したオイル量調整が必要になる。
その上、フォークオイル交換後のエア抜き作業を厳密に行なったとしても、細部にからまったフォーク内部のエアを完全に抜くのは難しいから、油面調整だけでは十分に対処はできない。

そこで、そんなフォークオイル交換作業でお勧めの方法が 「残ストローク」で調整する方法だ。

「残ストローク」とは、フロントフォークが最大限に縮んだ時のフォーク長さの事で、その最大ストローク(フルボトム)の時に、フロントタイヤの安定性を失わない為に必要な「トレール量」を最適に確保するのに必要な値だ。
「残ストローク」の計測は、インナーチューブにマーカーをセットした後に急ブレーキなどでフルボトムさせた時のマーカー位置で測れるものだ。(正立式フォークと倒立式では多少異なるが・・)
この「残ストローク」の値はオートバイ安定性、特にブレーキングや路面ギャップなどで大きくフロントフォークが縮んだ際の安定性の確保するのに重要な要素(最低限界トレール量)の管理に欠かせないので、プリング交換の前後で「残ストローク」の値が同じになるように、実際に計測しながらフォークオイルの抜き差しをして調整する作業も欠かせないものだ。
そうやって、ここまでの作業を行なった後で、ようやくスプリング変更の本当の価値やマッチングが確認できるのだ。

妖怪 + VTR 250 の場合には、「1G' 車高」は 約 100 mm、「 残ストローク量(フルバンプ時)」は 約 43 mm という経験値があるので、スプリングの変更をする時には常に「プリロード荷重」を含めて、それらの値が同じになるように必ず調整してからスプリングの評価をしてきた。
「1G' 車高」からフルバンプの「残ストローク」までの間のサスペンション長さの変化の仕方は、装着したスプリング毎に違った特性を示すから、「トレール量」の変化の仕方も違うし、当然 スプリングによって操縦性や安定性が違うので、この「1G’ 車高」と「残ストローク」までの間の挙動でスプリングを評価している。
そうやって、VTR250で出会えたスプリングが 「 51401-NKD 」という事だ。

では、また改めて。


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